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7月1日 火曜日

『…お、…あれ、おい!久しぶり!』


「…?」


ふと、自分に向けてであるであろう”声”が耳に飛び込んできて、立ち止まり、後ろを振り向いた。


『久しぶりだな!何年ぶりだ?全然身長伸びてねえなあ!』


「…!、お前、」


お前、で言葉を失う。


『おうよ。何だ、元気ねえじゃねえか!どうだよ、高校生活は』


「…イマイチかな」


イマイチかな、と言うと、奴は少し口をすぼめた。


『上手く行ってないん?』


少し、遠慮がちに。5秒ほど前までは活き活きと質問をして来ていたのに、察したような面持ちで言う。


『…ったく、お前、高校入って数ヶ月経ってから連絡がつかなくなるもんだから…』


全く、といった顔で言われた。


「…あぁ、それ、うちの電話番号変わったんだよ。急な引っ越ししてな。お前に連絡する前に引っ越しちまったもんだから」


『ふむ、でも俺ん家の電話番号は変わってねぇぞ。住所も』


奴は口をへの字にし、少し不満そうな顔をした。(`・へ・´)←まさにこんな顔だ。


「…色々あってな、連絡を取れる環境になかったんだ」


言うと、奴は目を丸くしたが、んーと唸ると笑顔になった。


『そうか、なら今日会えてラッキーだな。この辺に引っ越したのか?』


「おう。この近辺だよ。ほんとな、会えてなかったら伝える事が出来なかった」


テンションを落としたかと思うと、急に笑顔になりやがる。


『だな。そうか…この辺か。あ、お前携帯買った?取り敢えず家電教えといてくれよ。』


「…んと、わり。家電覚えてない」


『え』


「住所も、覚えてない」


『更にえ』


「携帯も買ってない」


『まじかよ( ゜д゜)』


気まずかった。ので、俺は間が空かないうちに続けた。


パンッ


「ほんとわり!」


全身全霊で謝罪の意を伝える。まるで奴が仏かのように、気持ち上めに崇めた。


( ゜д゜)←こんな顔をしている仏など、地球上のどこを探しても、いやいるかもしれないが、いないだろうと思う。


『ふっ、やべえごめん笑った』


「ガビーン」


『なんだそれ』


「なんだとはなんだ。今の俺の心情を表すのに最も適した言葉だ」


『ガビーンか、今のお前はガビーンなのか』


「やめろ少し恥ずかしいんだから連呼するな」


少し頬が紅潮する感覚がした。俺の放ったガビーンを連呼する奴の顔は物凄く得意げに、かつ滅茶苦茶輝いている。


•••。


『…まぁいいや!この辺に住んでんだろ?ならまた会えるな』


「ほ?」


言葉になりきってない、吐いた息に少し声が乗ったような俺の言葉を聞くと、また得意げに奴は言った。


『俺な、、遂にバイト許可下りたんだわ』


「…はあ」


『はあとは何だ‼︎はあとは‼︎』


「お前背中に花を咲かせたかと思えば枯らしたりと忙しいな」


『うるせ!俺のアイデンティティーよ!バイト許可が下りたの!んで、今はバイトの面接帰りー!』


成る程。つまりバイト帰りの道と俺の生活圏内が見事に重なっているというわけか。


『次は来週の木曜に来るからよ。そん時また会えるかもだろ?だからお前帰ったら住所と家電メモっとけ』


「…ああ、」


『…』


__不味い、


『…これからよ?』


びくりと、肩が跳ねた。


次に奴が言おうとしてる事が、事の、想像がついた。


『これからよ、お前さんのお宅に突撃訪問するのも考えたがよ、流石におふくろさんに迷惑だろ?学校帰りでお前も疲れてそうだし』


「…あ」


『あ?』


「あ、いや、…お気遣いありがたいよ。お前のそういうところ変わってねぇな」


ボリボリと俯きがちに頭を掻きながらそう言うと、奴はえっへん。鼻をピノキオの如く伸ばし、偉そうに言った。


『幼稚園からの付き合いだ。っていうか、気遣いは単なる常識だろ』


「…あぁ。そうだったな」


__焦った。危ない。


__絶対に感づかれてはならない。


『…じゃあよ、また来週。また会おうぜ。絶対な』


俺の顔を覗き込むように見た後、少しさっきよりも真剣な声で。奴はしっかりと、確実にそう言った。


「おう、またな」


俺も、そう応えた。


名前も思い出せない、友人に。

単発で書くつもりが、書いているうちに続編にしたくなるまで想像力が膨らみました。

私自身の文章力が無いのもなのですが、意図的に構成を少し意識しました。

独特的な、吸い込まれるような、そんな魅力を伝えたかったあらいです

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