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一回戦は全て終わった。
オプティクム所持者の戦闘の舞台、銀嶺島をリィは訪れていた。
今回の大会―――オーベルムを開催したリィの真意とは?
白い魔女、リィはオーベルムの戦闘場、銀嶺島を訪れていた。
まだ日は登ったばかりである。
島には誰一人としていない。
銀嶺島の中心には、古代ローマのコロッセオのような建物が屹立している。
リィは携帯電話越しに会話を行っていた。
「兄様の言った通り、『タワー』が目覚め始めています」
(オプティクムの見せる未来に間違いはない。リィには苦労を掛けるけれど、もう少しオーベルムの進行を頼むよ)
「はい。兄様」
(人の未来のためにやらなくてはならないことだ。天上の定め……僕は、この世界に変革をもたらす。その第一歩なんだ。……では、切るぞ。よろしく頼む)
リィは携帯電話を閉じ、『タワー』を見据える。
地下深くに眠るタワーは、魔力によって呼び起される……オプティクム所持者を集め、戦闘をさせることによって空間にまき散らされた魔力を『タワー』に食わせる。
オーベルムを始める以前は、『タワー』は上部のごくわずかな部分しか顔を出しておらず、知らない人間が見ても、地下に建物が埋まっているとは気づかなかっただろう。
一回戦全四試合が終わった現在は三フロア分も地上に顔を出している。
『タワー』が真に目覚めた時、革新が起こる。
リィには想像がつかないけれど、兄様の『未来視』に間違いはない。
いったい、何が起こるのだろう……。
兄様が夢想する世界は、きっと今より楽しい世界だと思う。だからリィは、もう少し頑張ろうと思った。