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妾はフレデリカ

僕の仕事の話は一度保留になり今日は解散となった。

すでに他国などないのだから、国賓のための部屋を用意してくれた。

亮はよろこんだけど、僕と楓は丁重に断り、下働きの者の為の部屋を用意してもらった。

少しだけわがままを言って、個室にしてもらい部屋を隣同士にしてもらった。

王女の個室の近くの傍メイド用の個室に僕たちは案内された。

メイドさんと一緒に晩御飯を食べて、その日はすぐに寝てしまった。

ちなみに食事のときの会話でメイドさんはハクレンさんという名前らしい。


次の日、僕は夜明けとともに目が覚めた。

そして、昨日支給された服に着替えると隣から大きな音が聞こえた。

急いで楓の部屋に入ると暴れている楓と、おろおろしているハクレンさんがいた。

僕がハクレンさんに事の顛末を聞くと、楓の寝癖がひどかったので直してあげようと櫛を取り出したのだという。

僕は一つの失敗をしてしまった。

楓は僕以外の人に頭を触られるのを嫌がる。いや、怖がる。

実の両親の暴力の影響だ。

頭を触られると当時の記憶を思い出すのだろう。

僕は、暴れ疲れたのか部屋の隅で震えながら体育座りしている楓に近づき抱きしめる。

楓はとてもやわらかい、最高の抱き心地だ。

僕に抱きしめられたことによって落ち着いたのか楓の震えが収まった。

「ごめん、薫またやっちゃった。」

「大丈夫僕はいつまでも楓の味方だよ」

「知ってるよ」

楓と見詰め合った。人形のように整った顔、寝癖でボサボサになった髪もかわいらしいこのまま楓と

「こほん」

僕はハクレンさんがいるのをすっかり忘れていた。

「いちゃいちゃするのでしたら私は姫の所に行かせてもらいますね」

「その必要はないぞ」

三人が扉を見ると、寝巻き姿のフレデリカが堂々と立っていた。

「朝からいいものを見せてもらった。よきかなよきかな」

フレデリカは高らかに笑った。

ハクレンさんはフレデリカに近づき「お着替えをお手伝いします。」といいフレデリカと出て行こうとした。

僕は楓を座らせてハクレンさんから受け取った櫛を持って楓の髪を梳きだした。

扉に手をかけ部屋から出て行こうとしていたフレデリカは、にやりと笑ったのが見えた。

「楓の顔がすごく色ぽっくていいのぉ、なぁ薫、妾にもしてはもらえぬか?」

僕は慌てた、楓と母と自分以外を梳かした事が無い

「大丈夫じゃ、たとえ下手だとしても怒りはせんよ」

「じゃ、じゃあ楓のがおわったらでよろしかったら」

「ああ、部屋で待ってるぞ」

二人は部屋から出て行った。

楓の髪を整え、楓が着替えるために僕は部屋を出た。

昨日教えられたフレデリカの部屋の前に立った。

一度深呼吸して扉を四回ノックした。

ハクレンさんの声で「どうぞ」と言われ中に入る。

中にはすでに着替えたフレデリカとハクレンさんがいた。

フレデリカは椅子に座り僕を待ち構えている。

僕はフレデリカの後ろに立ち、髪を持ち櫛を入れ、櫛に力を入れた。

「痛」

「ごめんなさい」

「よい、だが、もう少しやさしくお願いする。」

「はい」

僕は楓にするよりもやさしく櫛を動かす。

日本人の髪は他の民族より堅いと聞いたことがあるがたしかにフレデリカの髪は柔らかかった。

僕の髪は楓から、切っちゃ駄目と言われているから男なのに結構長い

だが、フレデリカの髪はほんの少しだけ僕より長い、そしてやわらかい

また僕とフレデリカの違いを一つ気づいた。

フレデリカは時折「ふわぁ」とか「ふにゃん」という声を上げていた。

「あっ、枝毛」

「なんじゃと」

「フレデリカ様ではその部分切らせていただいてよろしいですか?」

ハクレンさんは枝毛の発言からすぐに鋏を取り出した。

「うーん髪はこれ以上短くしたくないのぉ」

僕はその枝毛をじっと見ながらどうにかしたいなぁと思っていた。

そうすると、フレデリカの髪を触れていた右手が光りだした。

その光が、フレデリカの髪に染み込むように、なじむと光は消え枝毛は綺麗に整っていた。

ハクレンさんが僕を見て驚いていた。フレデリカは僕のほうを見ていなかったのでなにが起きたのかわかっていなかった。

ただ魔法で何かされたのは気づいたらしい。

「今の感じじゃと、治癒魔法かの?」

「ええ、薫さまは治癒魔法を使われました。」

「すごいのじゃ、治癒魔法は難しくて使える人が少ないのじゃ、やはり妾の影武者になるのじゃ、お前のような者を傍に置きたい」

フレデリカは椅子から立ち上がり僕に向かって飛び上がり、抱きついた。

「あの…その…でも、ぼく男」

「そんなことお構いなしじゃ」

「でも、でも…」

「じれったいのぉ、ハクレンや、薫を影武者にするいい案はないか?」

ハクレンさんはあごに手をあて考え込む。そして何かを思いついたかのようだ

「姫、そのままの格好でお待ちください、楓様を呼んできます。」

「ほう」

「な、楓は関係ない」

「はい、ですから呼んでほしくなかったら、ってやつです。」

「脅迫ですか!」

「ええ、ですが姫は関係ありません私の独断です。姫は抱きつきたいから抱きついてるだけです。」

僕はこのハクレンさんを過小評価していたのかもしれないまさかこんなエグい交渉してくるなんて

「では行ってきます。」

「待ってください」

「はい?」

ハクレンさんは扉のノブに手をかけていた。

「やります。やらせてください」

そう言うとフレデリカは僕に頬ずりをしてきた。

僕と同じ顔が、僕に顔を擦り合わした。

僕よりももちもちしたやわらかい肌、僕の胸に押しつぶされているやわらかい山、フレデリカと僕は実際は全然違うのかもしれない

そんなことを考えながら僕はいろいろ覚悟を決めたのだった。











「これから薫は妾のことをフレデリカと呼ぶように、妾も薫のことをフレデリカと呼ぶ、わかった?」

「うん、わかったよ、僕は、違った妾の名はフレデリカ」

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