僕から妾へ
「あの…僕たちはどうすればいいんですか?」
僕はイワン王に尋ねた。
「ふむ、実を言うと藁にもすがる思いで行なったから帰る方法がわからんのだよ」
「それじゃあ私たち」
「どうしてくれるんですか!」
僕はイワン王に大声を上げた。
「本当に申し訳ない、だが、これからは予算を増やして帰還の方法を研究させる。」
「どのくらいで、できるのですか?」
「すまぬ、こればかりはわからん、何せこの召喚ですら10年もかかったのだからな」
僕は絶望した。帰れない。帰れるかもしれないがいつになるかわからない。
そのことが頭の中を支配して、ぐるぐる回っていた。
そでが、くいっと引っ張られた。
「私は楓が隣にいてくれたら、どこでも平気だよ」
上目遣いで楓からそう言われると、僕は怒りが沈んでゆくのを感じた。
「大声をあげてすみませんでした。」
「いや、よいそなたの怒りはもっともだ
だからと言ってはなんだが、二人ともこの城で預かろう衣食住は保障する。」
この発言は、うれしかった。だけど僕は母よりタダより高いものは無いと教わってきた。
「うれしいのですが、その…僕にも何か仕事を下さい。無駄飯食らいにはなりたくないので」
「ふむ、いいだろう、ならばなにか得意なことはあるか?」
僕は悩んだ。いざ得意なことと聞かれても勉強は普通だし(この世界では異常なのだが気づいていない)運動も少し得意なぐらい。
楓を綺麗にすることなら誰にも負けないけどそれは違うし…
「妾にいい案があるぞ」
亮と話していたフレデリカがこちらを見て笑顔を見せる。
そして、僕の手を引いて、扉を開け入り口に立っているメイドさんに耳打ちをした。
メイドさんは「わかりました」と言って少しその場を後にして数分後白いシーツを二つ持って戻ってきた。
フレデリカは僕にシーツをかぶせると自分もシーツに包まった。
二人とも顔だけ出している状態だ。
メイドさんが扉を開け僕とフレデリカが中に入る。
メイドさんがイワン王に話しかけた。
「恐れ多くも申し上げます。王はどちらがフレデリカ様かおわかりになられますか?」
「驚いた、まったくわからん」
フレデリカがシーツを脱ぎ去り薫に抱きついた。ふにょんとしたやわらかいものがあたる。
「薫を私の影武者にしましょう。礼儀作法は教えればいいし足りない胸は厚手の服を着て詰め物をすればいいし」
「ふむ、いい考えだなどうだ薫?姫の影武者というのは」
「で、できませんよ」
「なぜだ?」
「だって僕、男なんですから」
「ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ」
三人以外の叫び声が部屋に響き渡った。