僕の今いる世界
メイドさんが扉の前で止まりノックをする。
中から渋い男性の声で「入れ」という言葉が聞こえた。
メイドさんが扉を開け亮、楓、僕という順番で部屋に入る。
部屋の真ん中で、中年の男性が椅子に座り、その横には、フレデリカと少年がいた。
僕が部屋に入ると、中年の男性と少年が、驚きながら僕の顔を見ている。
僕たち三人が中年の男性に促されて着席すると、フレデリカと少年も中年の男性の横に座る。
まずは自己紹介から始まった。中年の男性はこの国の王であるイワン二世と名乗った。予想は出来ていたが、やはり驚いた。
そして横に座る少年は第一王子であり、王位継承権第一位のアレンであった。
フレデリカは、さっき話をしたということで省略された。
僕たち三人は順番に名前を名乗った。
イワンは頷くと、この世界の状況を話した。
この世界には人類と魔族と呼ばれる種族がいる。
二つの種族は、互いに国を作り長い歴史の中で、時に争い、時に共存し、時に無関心を貫いた。
長い年月をかけて、人類は東に魔族は西に住むようになった。
しかし25年前魔族の国に覇王が現れる。わずか10年の歳月で魔族の国々を併呑し魔族の国を統一してしまった。
そして覇王が次に思ったのは人類の国への侵略であった。
13年前、魔族と人類の国の境界にある平原において大決戦が行なわれた。
兵数はわずかに人類のほうが多かったのだが、10年間戦い続けていた覇王の兵たちは人類の兵たちを蹂躙した。
人類側は守勢に追い込まれた。
覇王は魔族至上主義を唱えていたため、降伏した人類を皆殺しにした。
そうなれば人類も死にもの狂いで戦ったが、覇王の兵も将も強かった。
5年で3大国の1つと中小国の6つが滅びた。さらに5年でもう1つの大国と中小国8つが滅びた。去年ついに人類の国がこの国だけになった。
すがる思いで、有効とされる策を試した。そして眉唾な話としてあった勇者召喚をも試したのだ。
そして僕たちが召喚されたというわけである。
勇者召喚は、古代といわれる時代の昔話に残るのみであった。
誰も信じていなかった。
研究者も中央学会を追い出された者たちばかりだった。
しかし成功した。成功の影には、頭はいいのだが、その奇抜な行動でまわりから嫌われていた研究者がいたのだが、それは別のお話
イワン王が、話終わるのとほぼ同時に部屋がノックされる。
イワン王が、「入れ」と言うと扉が開けられ一人の女神官が入ってきた。
「紹介しようこちらは神託の巫女と呼ばれる…えっと名は…」
「王よ、レイと申します。」
「そうじゃった。レイというものじゃ」
「よろしくお願いします。」
レイさんに挨拶されると、僕たち三人はよろしくと挨拶を返した。
「実は、記録によると勇者は一人ということなのだ、つまりこの中の一人が勇者なんだが…」
「それを判別するために私が呼ばれました。」
「そういうことだ」
二人の話が終わるとレイさんが杖に向かって祈りだした。
すると、杖の先から赤い光と、黄色い光と、青い光が飛び出て僕たちの元へ向かってきた。
亮には赤い光、楓には黄色い光、僕には青い光が降り注ぎ体内に消えた。
「赤い光は勇猛さを表します。ですから勇者様はそちらの男性かと」
レイさんは亮を指差して語った。
「あの、黄色い光は?」
「黄色は知恵を表します。」
楓の質問にレイさんは優しく答えた。
「そして青い光は人徳を表します。」
僕が聞く前にレイさんは教えてくれた。
フレデリカは立ち上がり亮の前に膝を折った。
「勇者様、勝手なお願いだとはわかっています。ですがこの世界の人類をお助けください。」
「もちろん、よろこんで」
亮は、二つ返事で了承した。
亮は正義感が強いし困っている人を見捨てられない。
だれど僕は知っている。あの亮の顔は体育の授業のとき準備体操で僕とストレッチしているときの顔だ
僕の顔が好みのドストライクだと、告白してきたときに語っていた。
僕の少し無茶な頼みすら二つ返事で聞いてくれる亮が、僕と同じ顔をした女の子の頼みを断るはずがないじゃないか
亮の友達であることをやめようかなと思いながら自分はこれからする質問を考えていた。
帰れるのか、帰れないのか
帰れるのならば、今すぐ帰れるのか、それとも時間がかかるのか
帰れないのならば僕と楓の身の振り方を聞かなくてはいけないし
考えることが山積みであった。