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妾の決心

フレデリカがこの砦を訪問したのは少し前に覇王の軍の侵攻があったからである。

覇王の軍は侵攻が終わると最低一ヶ月は再侵攻してこない





























はずだった。

「なぜここまで接近を許したのじゃ、斥候はどうしたのじゃ?」

「もうしわけありません」

「謝罪などあとでいい、早く迎撃準備を始めるのじゃ」

妾が演説をした次の日覇王の軍の侵攻部隊が姿を現した。

妾とフレデリカと楓は城壁の上に立ち覇王の軍を見つめる。

目の前には数えるのが嫌になるほどの軍勢

「15000といったところか」

この砦を預かる将軍が大まかな数を言った。

「ユリアン頼む」

ユリアンとよばれた男が城壁の上に立ち黙想を始めた。

数秒の為の後にユリアンは目を見開いた。空が暗くなりあたりがゴロゴロと鳴り始めた。

一瞬の光の後に敵陣の真ん中に雷が落ちた。

一本二本三本と雷が落ちてゆく。雷は敵陣を蹂躙しているかのように見えた。

だが雷が収まっても敵陣に大した被害があるように見えなかった。

妾は将軍を見た。

「さすがだユリアン将軍」

「はい」

妾は混乱した。敵はいまだ健在なのにこの人達は勝ち誇った顔をしている。

「ご安心をフレデリカ様このユリアンめの魔法で敵方の魔法使いは防御魔法で魔力を使い果たしました。」

フラフラになりながらユリアンは答えた。

この砦の最初の戦いはユリアンの魔法によって覇王の軍は壊滅した。

二度目の戦いは防御魔法使いの数が足りず覇王の軍はボロボロになり討って出た人類の軍に惨敗した。

三度目の戦いは防御魔法使いの数を揃えたがユリアンの魔法で全員が昏倒し隙だらけになった攻城魔法を使える者を屠った。

四度目以降の戦いは攻城魔法使いを大量に失った覇王軍はユリアンの魔法に耐えて攻城兵器を駆使してこの砦を攻める策になった。

と将軍はこれまでの戦いを教えてくれた。

魔法使いは魔力を使うと自然回復を待たなくてはいけない

多少魔力が残っていると回復は数日だが全て使い切ってしまうと回復には一ヶ月近くかかる。

つまり覇王軍は数日以内にこの砦を攻めきらないとユリアンの魔法をもう一度喰らってしまう。

だから毎回戦闘は三日で終わる。四日目にはユリアンの魔法を警戒して覇王軍が撤退するのだ。

だが、この三日は地獄の三日なのだ。

覇王の軍も決死隊を組んで怒涛のごとく攻めてくる。

落城寸前に陥ったのは一度や二度ではない。

「フレデリカ様は本国にお帰りください。」

将軍は妾とフレデリカに言った。

「帰らぬ」

「なんですと」

「本国には父上も弟もいる。妾が死んでも大丈夫じゃ」

「そうじゃ、妾達が逃げてしまったらここの兵士は落胆するじゃろだから残るのじゃ」



実は、この少し前に打ち合わせをしていたのである。

「フレデリカ、いや、薫よ…おぬしは本国に帰ってもいいんじゃよ」

覇王の軍が攻めて来たと聞いてフレデリカは妾に言ってきた。だけど妾はそれを拒否した。

「フレデリカが残るなら妾も残るよ、それが影武者の仕事でしょ」

おとといのフレデリカの演説で妾はすでにフレデリカを尊敬していた。

「それにもう、覚悟は出来てる。」

「薫が残るなら私も残る。薫のいる場所が私のいる場所」

フレデリカは妾と楓を抱きしめた。

「ありがとうありがとう」

涙を流しながら妾を抱きしめた。




さすがに前線には出ない。

砦の作戦本部があるところに妾達は移った。

そして外の戦場を見た。

飛び交う矢、投石器による投石、梯子車による城壁の攻防

これが現実なのかと思うとつらくなる。

城壁で一際目立つ姿が見える。

亮だ!

大薙刀で敵を吹き飛ばし斬り飛ばし死体の山を作っていた。

戦いの前に亮と少しだけ話した。

訓練ではない戦い、ちがう殺し合いは怖くないのかと

亮はさわやかな笑顔で「恐いさ、だが、戦わなきゃ薫も楓もフレデリカちゃんも死ぬ、それだけは絶対に嫌だ」

思わず惚れそうになった。

フレデリカは真っ赤になっていた。

命がけで守ると言われなれているだろうに、もしかして、いや、ないない

妾はフレデリカになりきって亮の手を掴んだ。

「死なないでね、信じてるから」

「ああ、行って来る。」

真っ赤になりながら勇ましい笑顔で歩いていった。


亮の奮戦が回りに伝達し士気が高揚してゆくそれが更なる士気高揚に繋がる。

城壁の戦いは圧倒している。

覇王の軍も魔法や矢を防ぐ手立てがないため投石器が思った以上に近づけない。

一日目の戦い大勝利と言っていいだろう。

夜、妾とフレデリカはそれぞれ別れて兵士に労いの言葉をかけて回った。

兵士達の士気は未だに高い。妾の言葉を真摯に聞きさらに士気を上げた。


次の日


妾は目を疑った。

敵兵の数が増えているのだ。

その数に兵士達の士気が下がっていく。

フレデリカは飛び出し城壁にのぼり兵士達に大声を上げて鼓舞した。

下がりかけた士気が一瞬で元に戻る。

妾もそれに習って声を上げる。

敵の侵攻が始まっても妾もフレデリカも鼓舞することをやめなかった。

一発の投石器の石がフレデリカの近くに落ちた。

その衝撃に吹き飛ばされるフレデリカを妾は受け止める。

抱きしめたフレデリカの息は薄い

体を離すと妾の服は血だらけになっていた。

周りに同様が走る。

士気が下がり始めるのが肌でわかる。

妾の頭の中が真っ白になった。

だけどこのままじゃだめだ。

早くなんとかしないと


周りの不安な目が妾を見る。

息も絶え絶えなフレデリカが腕の中で僕にだけ聞こえる声で言った。

「あとは頼む」

その一言は妾の中で何度も反響した。

妾は立ち上がった。

「影武者が負傷しただけじゃ、妾はなんとも無いぞみな持ち場に戻れさぁ」

その一言を完全に信じられる者は少なかった。

心配で楓が妾に近づいてきた。

「心配するな楓よ、薫はまだ生きておる。早く治してやれ」

楓と横にいた兵士にフレデリカを渡した。

妾は昨日の演説のように声に魔力を込める。フレデリカのように、フレデリカのかわりに、妾が!

股間が少し軽くなった感覚があった。

「守るのです。この砦を、この国を」

この一言に兵士達の目が変わった。

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