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妾の初仕事

僕は朝起きて楓のブラッシングを済ますと、すぐに衣裳部屋に行った。

衣裳部屋にはハクレンさんと恰幅のいいおばさんメイドがいた。

ハクレンさんに渡された動きやすく王族が着る最低限の品質もある服を着た。

肉体変化をして完全にフレデリカになった。

そして、ハクレンさんに連れられて門に行くと貴賓用の馬車一台と食料などを積んだ馬車三台あり、周りには鎧を着た騎士達がいた。

妾とハクレンさんを見るとこの国式の敬礼をしてくれた。

妾はハクレンさんに習ったとおり王族の返礼をした。

騎士達の中に亮の姿があった。妾の顔を見ると妾が僕の方だと気づいたらしい。口には出さないが目でそう言っている。

騎士の一人が馬車の扉を開けると中にはフレデリカと楓がいた。

楓は分厚い本を四冊積んでフレデリカの斜め向かいに座っていた。

妾は馬車に乗り込みフレデリカの向かいに座りハクレンさんはフレデリカの横に座った。

外にいる騎士の誰かの「出発」の一声で馬車が動き出した。

馬車は多少揺れるものの乗り心地は悪くない。楓は本を読むことに集中している。

大分進んだ後、妾はフレデリカにこれからの行動予定を聞いた。

これから七日かけて最前線の砦に行って、兵士達の慰問を行なうらしい。

七日間の宿泊は貴族の館の一室を借りる手はずになっている。

窓を開けて外を見ると、のどかな田園風景が広がっていた。

亮が騎士の一人に乗馬の教練を受けながら必死に馬車に突いてきている。

妾はこの馬車が襲われることがないのかフレデリカとハクレンさんに聞いた。

「ははは、ここら辺は盗賊はおらんし、暗殺者も10回に1回くらいしか出会わんよ」

笑いながら言うことではない。10回に1回は暗殺者に襲われるのだ。

「もう慣れたのじゃ、妾の影武者なのじゃから、そなたも早く慣れるのじゃな」

嫌な慣れだった。

「どうしてフレデリカがそんな危険なこと」

「仕方ないのじゃ、父は本国で政治をしなくていけない、アレンは世継ぎじゃ死ぬことは許されない、そうなれば兵士の慰問や町への視察は妾の仕事になるのじゃ」

「フレデリカ様」

「なんじゃ」

二人同時に返事をした。

「呼んだだけです。大丈夫なようですね。」

危なかった。ハクレンさんはたまにフレデリカの名前を呼ぶ。

名前を呼ぶだけである。

最初妾は返事をせずフレデリカだけが返事をした。

この時妾はハクレンさんにこっぴどく怒られた。

大声を上げて怒られた。周りに驚かれると思ったが、なにもないように馬車は進む。

後でこの馬車は防音、対魔、対物理衝撃、コーティングがされていることを教えられた。

古代の物で現代では作れない一品物みたいだ

「フレデリカ様」

「なんじゃ」「なんでしょうか」

二回目はちゃんと返事をした。しかし今度は返事が違った。そのことを軽く注意された。

三回目からはちゃんと返事をした。

ハクレンさんは満足そうな顔で頷いた。

この後も何度かハクレンさんは妾達を呼ぶ。これは妾がフレデリカになる為の訓練なのだ

中からの声は防音でも外からの声は聞こえてくる。

周りから「フレデリカさまぁ」という声が聞こえてくる。

妾とフレデリカはその声に窓を開けて微笑みながら手を振る。

その人気に感心しながら一所懸命妾も微笑みながら手を振る。

農民と思える人たちはフレデリカが二人いることに驚いていた。だが、魔族によるフレデリカの暗殺未遂事件が何度も未然に防がれている事実が彼らにどちらかが影武者なのだろうと、納得していた。

妾は外にいる人たちを見ながら不思議に思った。

窓を閉めて防音を発動させるとそのことを聞いてみた。

「肌の青い人や、頭に動物の耳がついた人がいたけどもしかしてあれが」

「ああ、魔族の亡命者じゃな、覇王の政策に付いていけなくなったものがこの国に流れてくる。

13年前の敗戦でこの国は圧倒的な労働力不足じゃ、魔族じゃからといって拒否できるほどこの国に余裕は無い。あの農民の中には家族を魔族に殺された者もいる。

じゃが、それを憎んで排除しても待っているの妾達の滅びだけじゃ、それをわかっていて受け入れているのじゃろうな

魔族の流民のおかげで、高度な採掘、製鉄、鋳造技術が入ってきたからなんとか戦えるというのもある。亡命者の中に暗殺者やスパイがいるのがちと問題じゃがな」

この国の人達の強さを再確認して妾は馬車に揺られていった。

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