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蒼海の魔法使い~海洋系リアル派異世界冒険記~  作者: あらいくもてる
第一章 12歳編 右手に杖を、左手に羅針盤を
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南の国のエルフ

かなりファンタジー的に新解釈を持ち込んでみました。

お叱りとか、逆にもっとやれとかあれば、ご意見お待ちしています。

 寄港した港町セベシアは熱帯だ。

 休暇をもらい町に出てみると、やはり高温多湿のせいか、薄着の人が多い。

 女性に限って言うと、特にその手の商売をしている人以外であっても、褐色の肌を見せびらかすように薄着をしていて、開放的で目のやり場に困る。

 そして、当然割合的には現地の人が多い。

 そう、熱帯雨林ダークエルフだ。

 種族の特徴らしく、薄めの金髪から白銀色の髪をした、褐色巨乳美人ダークエルフでおっぱ……いや、いっぱいのここは、まさに楽園のようだった。


 え?なんかおかしいって?

 いやいやいや、そんなことは無いですよ。

 エルフは森の民です。

 熱帯雨林にだって当然居ます。

 熱帯だから食料事情とかいいわけです。

 だから巨乳なんです。

 で、当然エルフだから一般的には美人なんです。

 地球での、ダークエルフ=陰気、怖い、日陰でこそこそしている、っていうイメージは何かの間違いだったのです。だいたいが、暗いところに住んでいて肌が黒くなりますか?普通は逆でしょう?


 というわけで、健康的日焼け(ダーク)エルフのお姉さんたちに見とれていると、


「……ケイン」


 いささか冷ややかな声がかかる。

 ひえっ、と振り向くとこちらも冷ややかなまなざしでパットがこちらを見ていた。

 周りの空気まで冷ややかなのはきっとパットが陰魔法でローブの中を冷やしている冷気が漏れているだけだ。そうだ、きっとそうに違いない。


「そうだそうだ、魔法使いギルドだったよね、こっちかな」

「逆。こっち」


 と、これはアンティロスの一件以来の習いとなったのだろうか、俺の手を強引に引っ張って連行していく。


「……私にも、あと2年は成長期が残されている」


 何その「変身を2回残している」的な台詞。

 ひょっとしてやきもちを焼いてくれているのだろうか?

 あるいは女性としての単純な勝ち負けの問題だろうか?

 ともあれ、俺は彼女に引っ張られたまま目的地へ移動する。


 魔法使いギルド。

 いわゆる専門職としての情報交換所のようなものらしく、新しい研究の成果や政治情勢、魔物の出現状況のうち特筆すべきものなどを、会報の形でメンバーに配布しているそうだ。

 準会員としては、入会金銀貨1枚、年会費銀貨3枚とのことだったので、苦しいながらも俺もメンバーとして入会した。

 ここ3か月分の会報を手にしたパットは、そちらに夢中になっている。正会員である師匠には、より詳細な会報を受け取る権利があるのだが、別の用事があるそうでパットが代理で受け取っている。彼女が見ているのはそっちのほうだ。


「お待たせ」

「……ん、じゃあ宿をとりに行きましょう」


 セベシアでの宿はリッケン、アンティロスとはまた別の問題があって、どこでも自由にというわけではない。

 というのも、すぐ北がストランディラに面しているミスチケイアでは、食事をしている隣の席がストランディラの私掠船乗組員だったということがありうるのだ。

 もちろん、揉め事にならないように、セベシアの行政が、この宿はストランディラ、この宿はトランドといった区分けを発表しており、それにしたがって宿を取らなくてはいけない。また、街中の揉め事は厳罰となっている。

 出航に関しても同様だ。

 少なくともミスチケイアに属するとされる海では争いを禁止されており、出航のタイミングは1日ごとにストランディラ、トランドと交代で出ることになっている。

 実際には商船などでは船籍だけノヴァーザル国やセンピウス王国など近場の中立の国にしていることがあって抜け道になっているのだが、ともかく私掠船免状を持っている船などは厳格に規則が適用される。


 そんなわけで、トランドの紋章である鍔が錨の形になった斜めの剣が描かれた看板を掲げた、師匠の定宿でもあるリンドー亭で、宿を取ることになった。

 リンドー亭は、リッケンで泊まったような高級な宿ではない。この世界で普通に見られる旅の宿で、一階が酒も出す食堂となっており、酔っ払ったらそのまま二階の自室へ引っ込むことができるタイプだ。

 師匠は仮にも貴族なんだから、と思ったものの、先述のような理由で、どちらかというとストランディラに比べて劣勢なトランド人の泊まれる宿は多くない。


 夕方と言うこともあり、全部で17あるテーブルでは、すでに酒の入った面々が飲み食いしていた。中には見知った顔も多い。

 普段は船上でも行動をあまり一緒にしない士官・准士官や一般の水夫、はたまた船長まで一緒になって飲んで食べていた。


 とりあえず個室が取れたので荷物を置いてきて加わることにした。


「おういっ、ケイン、こっち来いよ」


 と、声をかけてくれたのはジャックさんだった。

 俺は、リックやカルロスのいるテーブルに行くつもりだったが、せっかく声をかけてもらったので、そちらのテーブルにお邪魔した。

 テーブルはジャックさん、船医の先生、そして船長がいた。


「おう、気にするな。今日は船での階級とかそんなのは関係ねえ。ですよね、船長」

「ああ、うちの船の航海で、ここだけは無礼講ということにしている。それほど宿の選択肢があるわけではないしな」

「そういうことですか。喜んでご一緒します」


 それから、たまに話が回ってくるだけで基本的には俺は聞き役に回っていた。

 皆の話す内容、それといくつかは俺からもさしさわりのない質問をして色々わかったことがあった。

 なんでも、船長と船医の先生、それとジャックさんは近い時期にアリビオ号に乗り込んだらしく、同期の感覚で付き合いがあるそうだ。それも15年も前からの古馴染みだそうだ。

 もともと大陸西部から陸路を移動してきたジャックさんが、ちょうどこのセベシアでトランド行きの船を捜していたところ、ある人に紹介されて、当時はセベシアの次にアンティロスに向かっていたアリビオ号を紹介されたのだそうだ。

 その航海で、弟のロバートさんはまさに酒樽のように、酔っ払わされてころがされていたとのことだった。ドワーフというのは、大体がそういうものらしく、船酔いもせず、海を怖がりもしないジャックさんは、たとえ体型の問題でマストに登っての作業ができなくてもいろいろ役立つと思った船長が船に誘ったのだった。

 当時のアリビオ号は、ガルシア船長の父、フランシスコさんが船長をしており、息子である今の船長は、当時は航海士見習いだったそうだ。


「とはいえ、俺は船長の息子だったからな。いずれ航海士になって最終的に船を任されることになるのはわかっていたから、頼りになる仲間が欲しかったということもある」

「なあにをいっとるか」


 船長は、船上と違って饒舌で、ジャックさんがそんな船長の言葉に照れているのを見るのもまた、新鮮だった。

 そんなときだった。


「あーいたいたぁ。おーい、ボンとドワーフの少年」


 店に入ってきた若いダークエルフの女性がこちらに手を振っている。女性は、白銀色の髪を長くしていて、薄着だったが皮ベルトで腰に剣を吊っていた。

 ボン?ドワーフの少年?


「相変わらずだな、マテリエ」「ボンというのはいい加減やめろ。フェルナンドという立派な名前がある」


 ジャックさんと船長はそう返す。ボン=ボンボン、つまりお坊ちゃんということらしい。


「いやー、あたしもたまたま来たらどっかで見たような船があるからさあ。思わず顔見にきちゃったよー。そういやこっちの子は新人?」

「あ、ケイン・サハラです。よろしくお願いします」

「おお、賢そうな子じゃんか。あたしは熱帯ダークエルフのマテリエ・レンシエだ。よろしくな」


 と、そのまま1つ空いていた座席に座り、勝手知った様子で麦酒を注文している。


「しっかし、みんな老けたねえ。今フェルが船長で、少年ももうおっさんかあ」

「ドワーフが老けて見えるのはひげのせいで、俺はまだ42だぞ」


 ドワーフの寿命は人間の2倍だから、人間でいうと21歳ということになる。十分若者といえる。


「ごめんごめん。そうだね、見た目はそんなに変わっちゃあいないね。まあ、あたしもほとんど変わっちゃあいないけどね」

「何を言ってるか、それを言うならお前はすでに100歳越えのばあさんじゃないか」

「ばあさん……ひどい、フェル、何とか言い返してやって」


 実際にはエルフは寿命が人間の5倍だから、100歳で人間の20歳。うん、別に見た目に反してはいない。

 それにしても、酒がほとんど入っていないというのに、マテリエさんはテンションが高い。


「ああ、うん。ジャック、ばあさんは無いだろう」

「そうよー。こんなに若いのに。ねえフェル?今晩当たり、どう?」


 え?そういう関係?


「けっ、船長もそんな女に付け込まれてんじゃねえよ」

「なによ、フェルはあんたみたいな酒樽タヌキと違ってかわいいんだから。ねえフェル、覚えてる?あなたの初めて、あたしだったのよね」

「へっ、淫乱ギツネが何を言ってるやら」


 なんと、船長の筆おろしの相手は目の前のダークエルフだったそうだ。うん、そういう目で見ると、美人で肉感的、褐色の肌をしたマテリエはまさに魅力的なダークエロ……いや、エルフだ。

 それより、ちょっと気になった内容があったので、酔っ払い同士の口げんかがエスカレートしそうな流れを阻止するためもあって、聞いてみた。


「あの、キツネとかタヌキとかって……」

「ああ……そうか、人族だと知らない子もいるわね。あたしたちエルフは神狐の眷属で、ドワーフは神狸の眷属なのよ。大きなくくりで言えば獣人族の一種といえるわね」


 なんと、そうだったのか。

 ちなみに聞いてみたら、神狐も神狸も、神のような存在なので実際に肉体を持っているわけではなく、言ってみれば精霊のようなものらしい。ちなみに、神狐の特徴を聞いてみたら「しっぽが多い」との答えが返ってきた。


「神狸はどうなんですか?」

「腹回りがでかいときいている」


 と、ジャックさん。よかった、キ○○マがでかい、とかって答えじゃなくて。

 異世界キツネ・タヌキ戦争はさておき、もうひとつ気になることを聞いてみた。


「ああ、あたし?いまは冒険者やってるのよ」

今回の豆知識:


異世界でもキツネ・タヌキ戦争はあるようです。

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