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俺と狐の鬼退治――1

「B級グルメで豊川稲荷ってあるじゃろ?」


「ああ、あのわさびとかが入ってるいなり寿司な。つっても、東海地方にすんでるやつしかしらねーだろうけど。それがどうかしたのか?」


「うむ、先日偶然見つけたんで喰ってみたんじゃが、全然駄目じゃったわ」


「へー、そりゃまたなんでだよ。あれ結構美味いって聞いたぜ? もしかしてコストパフォーマンス的な話か?」


「いや……わさびが辛くて泣いてしもうたんじゃ」


「……」


「……」


「…………こういうとき、どんな顔したらいいかわかんねえんだけど」


「バイトの娘が、お詫びに飴玉くれた……」


「……どんな言葉かけたらいいかも分からねえよ」













「おはようございます」


「……おはよう」


「どうしたのですか? 朝から顔色が優れませんが」


「そりゃまあ、起きたら隣にお前がいるとかどんな心霊現象だよ。朝から妖怪らしいことしてんじゃねーよ。抱きしめ方が完璧すぎて身動きひとつとれねーよ」


「心霊現象とは失礼ですね。ラブハプニングといってください」


「黙れ馬鹿。海にでもダイビングしてこい馬鹿。漁師にハプニング提供して来い馬鹿」


「あなたの胸にならいつでもダイビングいたしますが」


「そのまま溺れちまえ」


「私はすでにあなたに溺れていますが」


「なに勝手に人で溺れてるんだお前は。救助してやるからとっとと陸に上がれ」


「それはつまり、私とマウストゥーマウスをするということですか?」


「なんでだよ!?」


「溺れている人を救助するのなら、方法はそれしかないのでは?」


「いや、もうちょっとあるから! つーかそれ助けた後の行動だろ!」


「じゃあどうしろと?」


「どうもしなくていいっての……」


「分かりました。それでは、このまま白道様を抱きしめさせていただきます」


「勝手にしてくれ……」
















「おお、ご当地なまはげキーホルダーじゃ。御主、ちょっと財布を貸せい。カードでもいいぞ」


「はっはっは、面白いことを言うお嬢さんだ。金貸す代わりに面貸せや。フルボッコにするから」


「狐さん、あまりわがままを言ってはいけませんよ。それより、このハートのペアネックレスを買ってもらって、それを私と白道様にプレゼントするのはどうでしょうか。私と白道様がカップルに見えることうけあいです」


「驚くほど儂にメリットがない!?」


「……つーか、それただ単にお前がネックレス欲しがってるだけじゃねーか。あと勝手に俺を巻き込むんじゃねーよ。ハートのネックレスとかつけたくねーよ」


休日の真昼間、俺たちは秋田にいた。県庁所在地付近の賑やかな商店街の雑踏を掻き分け、大きなみやげ物屋を物色する。物珍しそうに店内を見回している外国人や、はしゃいでいる子供、楽しそうに商品を選んでいるカップルなど、店内は観光客で溢れかえっていた。


レジを見れば長い列が出来ており、次々と商品が袋に詰められていく。獣のように唸っている冷房はもはや意味を成さず、人の熱気で息苦しさすら感じる。


「うぅ~、人が多くて動きづらいのう」


俺の背中に隠れるようにしている狐が言う。


「お前はちっさいからまだいいけどよ。こっちは、さっきから足踏まれまくって散々だ」


肩はぶつかるし、汗臭い男性に接触したりもする。こんな不快な思いをしてまで、みやげ物を選ぶことはないのに、と思う。なんて、それは俺も同じではあるけれど。

例えばもしも、ここにいる全ての人間が、この時間帯は混みそうだから行かないことにしよう、などと思ったら――客が一人も居なくなったりするのだろうか。実用性の無いキャラ物のシャツを眺めながら、そんなことを考えた。――また、肩がぶつかる。


「妙ですね。私は、白道様が言うほど人にぶつかったりしないのですが。ましてや足を踏まれるなんて」


巫女服そっくりのワンピースに身を包んだ玲が、俺の手を握りながらそんなことを言った。


「女にはぶつからないように気をつけるものなんだよ、男ってのはな。それに、痴漢の冤罪で人生終わる時代だしな」


ぶっきらぼうに言い放ち、無理やり人ごみを掻き分ける。人気の商品棚の付近は、特に人が多い。


片目を閉じて、息を吐く。玲はまだ不思議そうに小首を傾げていた。


「それにしては、白道様は女性にも男性にもぶつかっていますが」


「気のせいだ」


小さな子供が走ってくるのを避け、母親の元に走り去っていくのを見送る。


「ぶつかりたくないのなら、無理して前を歩くことはないのでは?」


「男はな、自分で道を切り開いていく生き物なんだよ。覚悟ってのは、暗闇の荒野に進むべき道を切り開くことだ、ってジョルノさんが言ってたろ」


鼻で笑って、適当に返す。レジがいやに遠く感じた。というか、レジに行った所でまた並ばなければならないのだが。

そんな俺そっちのけで、玲は喋り続けた。そして見つめた。全てを見透かしたような透き通った瞳で。


「――では、女性の為に道を守るのも、男という生き物の性分ですか?」


俺にしかわからない程度に微笑んで――にやついて、玲は握る手に力を込めた。


「……気付いてたのかよ、この性悪女め」


「違いますよ、小悪魔ワン娘です」


「……そうかい」


気恥ずかしくて、顔を合わせることも出来ずに、俺は親指で額を押さえる。どうにも、俺は隠し事が苦手のようだった。

握られた手を振り払い、ずんずんと進んでいく。


「くくく、なんじゃ御主、儂らを守っておったのか? このツンデレめ」


腹の立つ笑顔を浮かべて、狐が俺の袖を引っ張る。


「うるせー、誰がテメーなんかを守るか。お前守るくらいなら、魔人ブウから地球を守った方がましじゃボケ」


「ふん、元気玉を集められるほどの人望も無いくせに何を言うか」


「お前俺の潜在能力舐めんなよ? 悟飯さんの比じゃねーぞ? 老界王神様に踊ってもらうだけでブロリーをフルボッコに出来るからね?」


「……どこに界王様とやらがいるんじゃ?」


「そりゃお前……界王神界だろ」


「違います、白道様。まずはゼットソードを砕くところから始めなければ」


「あ、そうか。封印を解かないと界王神様が復活しないからな。けど、あの刀って確か死ぬほど重かったよな。俺で壊せるのか?」


「論点がずれておるどころか、前提条件が間違っておることに何故気付かないんじゃこの二人は……」



というか、なぜ旅行の最初から土産を買いに来ているのだろうか。















「さて、いつまでも旅行気分じゃ話が進まねえ。そろそろ作戦会議といこうじゃねえか」


経費削減の為に泊まっている、少し安っぽいホテルのロビーの机に、秋田県の地図を開く。といっても、子供の頃に買った地図帳をコピーしただけのものだ。地図に金をだすのも馬鹿らしい。俺の勝手な意見ではあるが、地図ほど買うことを躊躇われる出版物も無いだろう。


一昔前ならばともかく、いまや携帯電話でも地図が見られる時代だ。それも無料で。その上経路検索までできてしまうのだから、現代社会では紙の地図の存在意義など、殆んどないように思われる。


「日本地図やら世界地図は必要だと思うがのう」


「ありゃもはや娯楽用か子供の地理勉強用だ」


まあ、そんな俺の偏見はいいとして。


「狐、今日一日使ってめぼしいところは全部回ったんだ。まさか、見当もついていないなんてことは、ないよな?」


とん、と人差し指で机を叩き、椅子に正座している狐に声を掛ける。狐はふん、と鼻を鳴らして、自信満々な笑みを浮かべた。


「無論じゃ。――というより、元からある程度予想はついておったから、それが確信に変わったというだけのことじゃがな」


「予想? それは、場所が分かっていたと言うことですか?」


歩き回って疲れたのか、眠そうな無表情で玲は米神に指を当てる。


「いや、そうではない。儂は見ての通り力をなくしておるからの。場所など近づいても遠ざかっても分かることは余り変わらん。例えるなら、ソ○トバンクの電波強度みたいなもんじゃ」


「おい、アイフォン使いの俺が傷つくようなことを言うな」


Wi-Fiさえあれば完璧なんだ。まだ本気だしてないだけなんだ。つーかそこまで酷くはねえよ。


「だまっとれうつけもん。……とにかく、儂が分かっていたのは、儂の尻尾を所持しておる輩のことじゃ」


――所持。

俺は、狐の言葉にはっとする。今まで俺は、前提として尻尾は各地に無作為に散らばり、無造作に落ちているものだと思っていた。だが、狐が尻尾を取り返そうとしている以上、放置などしておくはずがない。どこかに隠されているか、はたまた先日の鬼以上の実力を持った妖怪が所持しているか、そのどちらかだろう。


――だがしかし、同時に疑問も残る。いや、そもそも情報が余りにも少なすぎる。尻尾を奪った目的は、一体何だ? 九尾の狐を殺すため? 力を奪い取るため? ――どうにもしっくりこない。どうしても納得がいかない。――痰のように、心に小さな蟠りを感じる。 


「儂の尻尾を持っているのは、秋田県の伝説の妖怪――『なまはげ』じゃ」


――狐の言葉が、俺の思考を遮った。集中力の糸とも呼べるものが切られ、閉じられていた耳に音が流れ込む。突然大空に投げ出されたように、視界が開けていった。


「なまはげ、ですか? ……お言葉ですが、なまはげは妖怪と言うより、神に近い存在のはずでは?」


玲が申し訳無さそうに口を挟む。

だが、その通りだ。なまはげは姿形こそ異形の鬼だが、災いを祓ってくれる聖なる存在のはずだ。それこそ、信仰の対象にもなるほどに。


「うむ、だからこそ確信が持てなかったのじゃが、先に行った土産物屋で全ての答えは出た」

「土産物屋でですか?」


玲の問いに頷き、狐は肩にかけていた小さな子供用バッグからキーホルダーを取り出した。なんの変哲も無い、普通のキーホルダーだ。強いて言うなら、なまはげを象った人形が付いている辺りが、流石は秋田土産といったところか。


「神の力は無限じゃ。故に神を模倣したモノには、それが例えどんなくだらないものであろうと魂が宿る。――なまはげは、神と呼ぶにはちと力不足じゃが、秋田は奴の発祥の地じゃ。力が増大するこの地ならば、キーホルダー如きにも奴の力が薄く見える」


言われて、じっとキーホルダーを見つめてみる。オーラを視認することも感じることも出来ないが、キーホルダーの周り――半径数ミリほどだが、自然の力が乱れているのが分かる。掌握しようとしても、軽く弾かれてしまう。悪霊を祓いのける、寺の結界の特性によく似ている。


「この霞のような力――妖力に、儂の気配が混ざっておる。もっとも、本体たる儂にしか分からないほど微量ではあるがな」


忌々しげに作り物のなまはげを睨みつけ、狐は舌打ちをする。


「なるほど、それでしたら疑いようはありません。……ですが、やはり疑問が残りますね」


「ああ、どうしてなまはげが尻尾を持っているのか、だな。……いや、もっと言えば、何故狐の尻尾は奪われたのか、誰が尻尾を盗ったのか、そして破壊もせずに残しているのは何故か――ってところだな」


狐を殺したいのなら、尻尾を奪った後、直ぐに殺せばいい。尻尾を取り返される前に、尻尾を壊せばいい。どうにも――理に適わない。また、善の妖怪たるなまはげが、尻尾を所持している理由が分からない。この機に、九尾を退治しようと思っているのだろうか。いや、そんな正義の味方のようなことをするとは思えない。


――この事件は単純な話のようで、存外謎が多い。


俺は吹き抜けになっている天井を見上げ、嘘のような真円を描いた満月を見つめる。晴れているが星は見えず、月だけが夜空に取り残されたように煌々と光っていた。ガラスに邪魔されることなく射す月光に、俺は意味もなく目を細めた。


「……なんだ?」


――不意に、月に黒い点が見えた。点は徐々に大きくなっていき、インクのシミのようなシルエットを変化させていく。点は影となり、はっきりとした形を作り出した。飛行機の影でも、鳥の影でもない――人型の輪郭。

次の瞬間、拍手のような音が響き、月が粉々に割れ、欠片が降り注いだ。けれどそれは俺の勘違いで、月は割れてなどなく、月の欠片だと思っていたのは、ガラスの破片だった。破片は月光を反射しあって煌めき、幻想的な光景を作り出した。俺にはなぜかその光景がゆっくりと映り、時間が引き延ばされているような感覚があった。


「な、なんじゃあれは!?」


狐の声が耳に届いた途端、呆けていた意識が舞い戻り、時間が一気に進みはじめるのを感じる。迫るガラス、落ちてくる影、木霊する悲鳴。考えるより先に、身体が動いていた。


あたりに存在している風の源とも呼べるものを認識し、確認し、支配し、掌に集める。


「――っ掌握する!」


手を空にかざし、握りこむ。すると目に見えない空気の塊が、さながら大砲のように天井へと発射される。ロビーの空気が軋んだ音を立て、風はガラスと影を思い切り吹き飛ばす。勢い余った突風が天井の壁を抉り、破片がぽろぽろと落下する。


やりすぎかとも思ったが、場合が場合だ。加減なんて考えられる状況ではなかった。


「一体……なんだありゃ」


急激に高鳴る鼓動を抑えながら、俺は頭に浮かんだ疑問をそのまま口にした。ガラスが割れたのは自然現象ではなかった。空から降ってきた影が、ジャッキーチェンよろしくガラスを割ったのだ。そして影は、どこからかまだ俺たちを狙っているのだろう。


未だ天井を眺めている俺に、玲が近づく。


「一瞬しか見えませんでしたが、あの角と格好はまさしく」

「ああ――なまはげ、だな」


玲の言葉に続いて、ぽつりと呟く。宿泊客がフロントに押しかけ、従業員がなにやら騒いでいるのが聞こえるが、全く頭に入らない。そんな俺に気を利かせてくれたのか、玲が「大丈夫ですか」と声を掛けてきた。「ああ」とだけ答えて、一先ずソファに座る。


「おい、狐」

「なんじゃい」


狐にふざけた調子はなく、険しい表情になっている。つられて俺も眉に皺を寄せて、重苦しく口を開く。ここからはシリアスにいこう。


「……なんか泊まれそうにないけど、ホテルの代金って返してくれるのかな」

「なにを心配しとるんじゃなにを!! 野宿でもなんでもしとれ!」


怒られてしまった。場を和ませようとしただけだというのに。


「怒るのも無理はねえけどよ、まずは落ち着けっての。よく考えてみろ、俺は野郎に風を当てたんだ。風は絶えず野郎の周囲に纏わりつき、俺に場所を教えてくれる。俺の能力は、結構万能なんだよ」


実際はもっと複雑な、科学の観点から見たら鼻で笑われてしまうような理論があるのだが、あえて説明はしない。自然を掌握する感覚は俺の家系にしか分からないものだし、なにより面倒くさい。だるい。


もうなんかバトルとかいいから帰りたい。ジャンプ読みたい。いや、もしかして俺帰っていいいんじゃね?


「なにを考えているのかが丸わかりですよ白道様。あと少しなんですから、辛抱してください」


「つってもな、あのなまはげを倒すのはいいけどよ、尻尾の位置が結局わからねえんだぞ?」


なまはげが持っていてくれたら助かったのだが、そうもいかないらしい。


「なまはげから直接聞き出すのはどうですか?」


「秋田の守り神を脅してか? 気が進まねえこった」


しかし、狐のセンサーがポンコツである以上、方法はそれしかないだろう。いまいち自白させる方法は分からないが、殴って殴って吐き出させるしかないか。


「おい、場所がわかっておるのならはよう出発せい。その風の探知能力、長続きはしないんじゃろ?」


「あ? なんだお前付いてくる気なのか?」


「当たり前じゃろ。儂の問題なのに儂が付いていかんでどうするんじゃ」


「はっ、殊勝なことだ。……けどまあ、今回は付いてくんな。お前は玲と一緒にいろ。ついでに、代わりの宿でも探しておいてくれや」


椅子にかけておいた上着を取り、羽織る。何故かは分からないが、なまはげはどんどんと俺たちから遠ざかっている。急いで追いかけなければ、風も追尾しきれなくなる。


「嫌じゃ、儂もついていく。儂はこの目で、儂の敵を見なければ気が済まん」


駄々をこねる子供のように(いや、見た目はまんま子供だが)、狐は俺の袖をつかんで、頑として動こうとしなかった。

幼女の姿の癖して、九尾の狐としてのプライドは残っているようだ。自分になにも出来なくても、何もしないまま終わってしまうのは嫌なのだろう。

だが、いまはそんなもの無用の誇りだ。意地になっているとか、ただの我儘とかじゃないだけ、たちが悪いとすら言える。


俺は玲に視線を送り、目で話しかける。玲は何故か少し赤い顔になった後、こくりと頷いた。


「わかりました。格安で綺麗なホテルを用意しておきましょう」

「なっ、御主までなにを!?」


うしろから回り込んで、玲は狐の両腕をロックした。子供の身長しかない狐をそんな形で拘束すれば、必然的に玲に持ち上げられてしまう。狐は立つことも出来ず、じたばたと足を動かしていた。


「狐には悪いけどな、こっからは大人の時間だ。ガキはお母さんと留守番してろ」


今にも噛み付きそうなほどに恫喝している狐の頭をぽんぽんと叩いて、俺は口端を吊り上げて笑った。


「誰がガキじゃ! 儂は夜の八時には眠たくなってしまうほどに健康管理がばっちりなんじゃぞ!」

「いやそれ子供の特徴だから。健康云々じゃないから」


ドラ○もんとクレヨンし○ちゃんを見終わると眠くなるという、全国の子供の黄金スケジュールじゃねえか。


「そんな、白道様。まだ母親は早すぎます……。もっと順序というものを大切に……」

「こっちはこっちでなに言ってんの? 馬鹿なの? 死ぬの?」


なにこいつら、たまにはシリアスになってもいいじゃん。俺が戦場に赴く兵士みたいな感じで輝くところじゃん。


「……まあいいや、んじゃ行ってくるから、後よろしく頼んだぜ」


ひらひらと手を振り、俺は入り口へと歩いていく。先ずは人の目の無い場所を探して、それから追いかけよう。人に見つかったらNASAの餌食に……! いや、そのネタはもういいか。









「くそう、あやつめ儂を置いていきおって。……ちゅーか玲、いいかげん放さんか」

「狐さん、余り憎まれ口を叩かず、白道様のお気持ちを分かってください」

「? 気持ち?」

「なまはげは、白道様といえども簡単に倒せる相手ではありません。それを承知で、白道様は一人で向かったのです。私たちを巻き込まない為に」

「…………」

「だから、今は待ちましょう。白道様が帰ってくるまで待つのが、私たちの仕事です」

「……あやつが傷つくかもしれんというのに、やけに落ち着いているんじゃな」

「当然です。白道様が負けることなど、ありえませんから。負けたとしても、それはそれで私が慰めるイベントのフラグが立ちます」

「ふん、信頼しておるんじゃな、あやつを」


「いいえ……、ただ、犬は主人の帰りを待つのが役目だというだけです」







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