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ゆる~らぶ  作者: 一 一 
二章 大会 ~高校一年生・一学期~夏休み~
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蓮の三十一 近況はそこまで変わってないみたい


 蓮くん視点です。


 それから部活見学と台本の読み込みで終わり、迎えた翌日。今日もまた、えっちらおっちら松葉杖をついて登校し、授業を受ける。


 体育大会が終わった後に控えていることといえば、期末試験だ。僕らは学業が仕事なんだから、避けて通れない道でもある。


 中間テストはかなり惨敗(ざんぱい)気味だったので、今回はなんとか巻き返したいところ。せめて、前回よりも点数を稼ぎたいな。一点でもいいから。


 しかし、高校の授業スピードは早い。中学の時とは比べ物にならないよ。中学でもついていけなかった僕には、かなり厳しいところがある。


 新しい単語や知識が出てきて、あたふたしている間に次の応用に進んでしまう。結局何もわからないまま、時間だけが過ぎていく感じだ。


 中間テストの反省を活かし、部活終わりに復習をしてはいるけども、僕の理解できる早さと授業スピードに差がありすぎて、間に合う気がしない。


 ここはやはり、前みたく演劇部のみんなを頼ってみようか?


「って思うんだけど、二人はどう思う?」


「知るか。勝手にやってろ」


「好きにすればいいのではないか? 拙者らは勉強に関しては手助けなどできんからな」


 昼休みになり、お弁当や購買のパンを広げながら、僕と階堂と春のいつものメンバーで昼食をとっていた。


 一応、時期が近づいてきたから期末テストについて相談したんだけど、答えは辛辣(しんらつ)なものだった。


 っていうか、僕だけの問題じゃないのに、何でこの二人はそこまで他人事なんだ? 僕だけ焦ってるみたいな気がして、なんか納得いかない。


「そういう二人はどうなのさ? 勉強はできてるの?」


「日々の授業を理解してりゃ、平均くらいは取れんだろ、普通。最悪基礎さえ覚えときゃ、半分くらいは点数取れっし、赤点回避できりゃ俺はどうでもいいしな」


「拙者は、相馬氏ほど部活で時間を取られることもない故、自宅学習で補填(ほてん)はしている。前回の中間テストでも、極端に悪い教科もなかったのでな。そこまで危機感はない」


 むっとしながら聞き返すと、二人からは余裕の発言が飛び出した。


 確かに、普通の人ならすぐに勉強内容を理解でき、苦労しなくても五十点くらいは取れるんだろう。けど、僕は普通より頭も要領も悪いから、階堂みたいな意見ですら(うらや)ましい。


 それに、階堂の所属する映像研究会は週二回程度で、春の料理研究会も曜日違いだけど週二回は同じ。時間はあるんだから、勉強もできるだろう。


 そんな二人に、筋違いかもしれないけど、少し恨みがましい視線になるのは仕方ない。これが、持つものと持たざるものとの違いなのか……!


「あ、部活といえば、二人とも部活はどう? 僕は地区大会用の台本を渡されて、みんな練習してるけど」


 話題がガラッと変わってしまったが、春が部活というワードを出したので、それとなく近況を聞いてみる。


 入部早々、他の部員たちと()め事を抱えるはめになった二人だったが、その後の進展はあったのだろうか?


「あ~、おおむね、良好だ。一年の同志も数人いるし、部活も基本的には楽しくやってるよ。あいつ以外とは、な」


「あいつ、ってあの人だよね? 体育大会の『部活対抗リレー』で二人三脚してた、女子の先輩の人」


「そうだよ! ったく、あいつは相変わらず俺の感想にはいちいち文句をつけるし、俺が気に入らねぇ作品やキャラクターを熱弁しまくるし、逆に俺が好きなやつは全部否定してきやがるし!

 俺は誰がどの趣味だろうが関係ねぇっつってんのに、ことあるごとに絡んできやがるんだぜ? マジで鬱陶しいぞ、あいつ! 週二回の部活は、ほほ確実にあいつとの喧嘩腰ディベートが開かれっから、最近は無駄に気合い入れなきゃいけなくなったしよぉ……」


 なるほど、ある意味順調のようだ。


 遠くからチラ、と見ただけだけど、向こうは絶対に階堂に気がある。そうじゃなきゃ、あんなに階堂のことを盗み見る仕草なんてしないはずだしね。


 まあ、階堂って、見た目はいわゆるオタクとはかけ離れた、やんちゃ系の男子だしね。部活見学の時に見た他の部員と比べても、映像研究会の中では少し異色だった。


 やんちゃ系、っていってもキョウジ先輩みたいなガッツリ不良、みたいな感じじゃなくて、よくいるクラスのいたずら好きとかムードメーカーとか呼ばれそうなタイプの顔だ。


 ズケズケ痛いところも突いてくる口調さえなければ、愛嬌(あいきょう)のある顔に見えなくもない。その先輩も、そんなところに()かれたのかな?


 まあ、アプローチにはことごとく失敗してるみたいだけど。最初に話を聞いたときは『先輩』だったのに、今じゃ『あいつ』だもんね。相当嫌われちゃってるなぁ。


 僕の予想でしかないけど、多分、その先輩は自分の趣味を共有してほしくて、しつこく話しかけてたんじゃないだろうか? それが、丸ごと全部階堂の趣味と真反対だっただけで。


 その流れで、個人的に先輩が批判するものがすべて、階堂のお気に入りだったに違いない。素直に批評すればするだけ、階堂からの心証が悪くなり、口論になっちゃうんだろうなぁ。


 とはいえ、それは全部僕の予想。当たってるかどうかはわからないから、僕からなにか言うことはないね。余計なお世話だもん。


 僕的には、階堂の友人として、先輩にはうまくやってほしい。友達の恋ばななんておもしろ……、ゲフンゲフン、応援したくなるもんね。


 今後は定期的に聞こう。想像だけでもかなり楽しくなってきたし、誰にも言わなきゃ問題ないよね。


「拙者は針の(むしろ)だな。今だ続く内戦状態は緊迫感だけが膨らみ、お互いの陣営を敵視する一方だ」


「それは……、大変だね。そういえば、リレーの時に走ってた先輩って……?」


「あぁ、彼女は上達派の代表で、部長でもある方だ。何でも、以前交際している彼氏に手料理を振る舞い、食中毒を起こしてしまったらしく、本気で料理の勉強をしたいと思い、入部されたのだそうだ。

 一年生から真面目に通い、その恋人とは破局したものの、かなりの腕前に成長したそうなのだが、拙者が入部して料理を披露した際、戦慄を覚えたように驚愕しておったな。そこから、拙者をやけにライバル視しているようなのだ。

 また、部長の態度につられて、他の上達派は拙者を目の(かたき)にし、反対勢力の娯楽派はそんな拙者らの姿が仲(むつ)まじく見えるらしく、疎外されている。

 結果、料理研究会唯一の中立派である拙者は、毎回四面楚歌で調理をするはめになっておる。その癖、拙者が作った料理には群がってくるのだから、本当に訳がわからんのだ……」


 それは、また、ご愁傷さま、としか言いようがない。


 体育大会で見たときは料理とは縁遠い人に見えたけど、あの人が部長だったんだ。ギャルっぽいバッチリメイクの人なのに、見かけによらないんだなぁ。


 で、やけに春を無視していたのも、春の料理の腕に嫉妬し、対抗心を燃やしていた名残(なごり)、ってことなのか。いや、どんだけ上手いんだよ、春の料理って?


 しかも、春がきっかけで起こった対立は、すでに二つの勢力に名前が決まるほど、深刻化してるらしい。上達派に娯楽派、か。なんて平和そうな対立構造なんだ。


 とはいえ、春は女子の人間関係の狭間(はざま)に放り込まれ、どちらの立場にもつけない孤立状態になっている、と。それは辛いだろうね。部員数は十人前後だったと思うけど、その中でハブられるのはキツい。


 でも、春は邪険にしても、春が作る料理は美味しくて勉強になるから、実食の時だけは人気者なんだね。春以外は全員女の子とはいえ、春の疲れきった表情を見る限り、羨ましいなんて思えないけど。


 こんな感じで二人の話を聞いてみたが、二人とも状況が進んでいるようで進んでいないんだね。研究会だからか、大きなイベントも文化祭以外なさそうだし、しばらくは変化もなさそう。


 僕は、早いとこ怪我を治して、一緒に練習できるようにならないとなぁ。予定としては来週くらいには松葉杖も必要なくなる、って話だし、早く来週にならないかな?


 なんたって、僕の初めての役だもんね。最初は目立つのが嫌だったけど、今は先輩たちと演劇がしてみたい、って素直に思えるから。


 怪我の関係で端役(はやく)しか与えられなかったけど、それくらいが僕には十分だ。主役クラスの長台詞なんて、僕じゃ到底覚えきれないしね。


「そういう博士はどうなんだよ? 部活の方じゃ、まだしごかれんてんのか?」


「いや、階堂氏。相馬氏はまだ松葉杖で移動しているのだぞ? 本格的な練習などまだまだ先ではないか」


「そうだね。とりあえず、大会が夏にあるみたいだから、その台本はもらったよ。僕だけ読み合わせだけで、怪我が治ったら練習になるみたい」


 その後、話の流れで僕の部活での近況を報告したりして、昼休みは終わった。今日は部活が休みだし、無理をしないでゆっくりしよう。


 ……あ、結局勉強、どうしよう? 何も解決してないじゃん……。




 完全な閑話回ですね。主に階堂くんと春くんの近況、って感じです。


 そして、大会前に迫る期末テストという大きな壁。蓮くんは無事、乗り越えることができるのか?


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