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ゆる~らぶ  作者: 一 一 
序章 出会い ~中学三年生~
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麗奈の一 兄貴がキモい

 蓮くんの妹ちゃん視点です。

 私は相馬麗奈。中二の十四才。


 突然だけど、うちの兄貴が気持ち悪い。


 いつからか? と聞かれれば、兄貴が小学校高学年だった辺りまで(さかのぼ)らなければならないが、それは置いておく。


 話を戻そう。


 ここ最近のことだ。兄貴がとてもウザいしキモくなってきた。


 五月辺りから家でニヤニヤしてるときが増えた。決まって何かを思い出すようにバカ面をさらして、一人でほくそ笑むのだ。


 私は初め、嫌悪を通り越して恐怖を感じた。


 だって、見た感じ変質者と変わらない行動を取る家族を目の当たりにしたら、誰だってそう思うだろう。


 別に元々兄貴のことが好きって訳じゃなかったから、最低だった評価が最悪になったくらいで、好感度はあまり変わらないけど。


 かと思うと、期末テストの一週間前くらいから神妙な顔をして学校から帰ってきて、ずっと自分の部屋にこもっていた。


 私の部屋は兄貴の隣だったから、一度不審に思って壁に耳を当てて聞き耳をたててみたら、


「……うう、わかんない……」


 という情けない声とともに、小さく鉛筆の走る音。

 兄貴が家で勉強をしていると理解できた瞬間、頭の中が真っ白になり、急いでお母さんに詰め寄った。


「お母さん、明日の天気は!?」


「明日? 何かあるの?」


「いいから!」


「一日晴れの予報だけど、それがどうしたの?」


 私は「明日は季節外れの大雪よ」と言われるのを覚悟して聞いたつもりだ。


 勉強嫌いで、机を漫画を読むこと以外に使ったことがなく、机の上は常にいらないもので溢れていた兄貴が、本来の使い方をしていた。


 私や家族にとっては天変地異の前触れだ。


 流石に、親に心配をかけることは忍びなかったので、その事実は伏せておくことにしたが、兄貴の不自然な行動に、改めて背筋が凍るような思いをした。


 私も兄貴と同じ学校だからテストが近かったので、テスト期間は努めて兄貴のことを考えないように勉強し、何とか自分のテストに集中できた。


 だが、これで兄貴の奇行は終わらなかった。


 夏休みに入り、たまたま友達との約束がない日に、兄貴はいきなり部屋の掃除を始めた。


 そして、テスト期間と同じように、毎年最後まで手をつけなかった課題をひろげた気配がした。


 私は兄貴が素直に勉強に目覚めたとは思えず、気持ち悪い気分が再びぶり返してきた。


 そして、大きな独り言が聞こえてきた。


「さあ、頑張れ僕。柏木さんと仲良くなるために」


 ……その台詞で、ようやくこの頃の異変の理由に気づいた。


 あの兄貴は、自分の身のほども知らず、好きになった子に振り向いてもらいたいから、成績を上げたいと考えたらしい。


 いきなりニヤニヤしだしたときからそれは始まっていて、テスト前に成績について言及され、結果も芳しくなかったから頑張ろう、ということだろう。


 正直に言うと、私は腹が立った。


 兄貴の奇妙な挙動のせいで抱いていた恐怖心が、どうせ実るはずのない兄貴の色恋沙汰に端を発していたと思うと、イライラが止まらなくなった。


 兄貴は分かりやすいほど脇役キャラだ。


 どうせ惚れた相手もかなりの高嶺の華に決まってる。風の噂で、ひとつ上の学年に柏木という名の美人がいると聞いたことがあるし、その人で間違いない。


 私のこれまで抱いていた胸のモヤモヤ感に責任を取れ! と声高に叫びたかった。


 が、たとえそれが兄貴であろうと、恋をすることは本人の勝手だし、それについて文句をいうのは間違っている。


 それに考えてみると、どうせ成就しない恋による兄貴の異常行動に、こちらが気を張る必要なんてない。


 どうせ一過性のもので、すぐに収まるだろう。


 そう自分に言い聞かせ、私のイライラを抑えようとしたときだ。


 コンコン。


「麗奈、いる?」


 私の部屋にノックが響き、兄貴が声をかけてきた。


 先程まで勉強をしていたのではなかったのか? と疑問に思ったし、面倒だとも思ったが、どうせ大した用事ではないだろう。


 私も幾分かは落ち着いた。いくらムカつく兄貴相手でも、一応は冷静な対応もできる。


 多分勉強してたみたいだったから、用件は大方、文房具の不足とかだろう。


 シャーペンの芯とか消ゴムくらいなら、融通してさっさと追い出せばいい、という気持ちでドアを開けた。


「…………なに?」


 普段からかけている眼鏡がムカつく兄貴が、一瞬驚いたような顔をすると、すぐに申し訳ないような表情を作った。


「突然で悪いんだけど、僕に勉強を教えてほし……」


 バタン! カチャリ。


 もはや条件反射だった。


(何? いうにことかいて、勉強を教えろ? 妹に? バカじゃないの? いや、疑問系にするのが間違いよね、あんのバカ兄貴っ……!)


 あのバカはせっかく収まってきたムカつきをさらに増長させてきた。


 どこの世界に妹から勉強を聞く兄がいるのか。実際身内にいたから、恥ずかしいやら腹が立つやら。


 とにかく、色んな感情が私の中で暴れまわる。


 考えるだけ時間の無駄だとわかっていても、あのバカはいつも私の琴線に触れる言動ばかりするからたちが悪い。


 ああ、もう! イライラするっ!


 私はなるべく家に居たくなくて、夏休みはほぼ友達と遊んだり、図書館で課題をしたりしていた。


 それもこれも、全部あのバカのせいだ。


 ほんと、ムカつく!!


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