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ゆる~らぶ  作者: 一 一 
一章 部活動 ~高校一年生・一学期~
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蓮の十五 体育祭の練習 ~クラス編~


 蓮くん視点です。


 修正します。『クラス対抗リレー』→『学級対抗リレー』


 演劇部の練習にガチバトルが追加されてから数日が経った。もう、僕の常識は演劇部に通じないものとして、深く考えることはやめたよ。


「はい、というわけで今日の体育は、体育祭の練習に当てます。クラスでどの競技を行うかは自由ですが、怪我をしないように気を付けてください」


 筋肉痛に加えて軽い青アザを作るようになり、肉体ダメージが増える中、ついに体育祭の練習が始まった。


 二週間後に迫った体育祭に向けて、僕らは通常授業の一部を使って練習をすることとなり、クラスごとに別れてグラウンドに散っていく。


 ちなみに、通常の体育の授業は三クラス男女別に行われている。一から三組、四から六組、七から九組、という具合だ。ちょうど同じ階にあるクラスと同じだね。


 ちなみに、七組以降は普通科ではなく、特進や英語特化、あとは商業クラスと、特殊な入試で入学した人ばかりなので、接点はほぼない。


 僕らは四組で、ちょっと離れた場所には五組と六組が集まっている。そして、体育祭の色分けは赤組で、五組が青組、六組が黄組であり、この場にいる他のクラスはみんな敵となる。


 なので、みんな競技の作戦を知られないためか、お互いを意識しながらまずは話し合いに入った。


「よし、これくらい離れれば話し声なんて聞こえねぇだろ。まずは、俺たちが各競技で行う作戦と、練習方針について発表する」


 円陣を組んだ僕らの中央で仕切っているのは、体育委員に選ばれた佐伯(さえき)健吾(けんご)くんだ。野球部に所属している彼はジャンル問わず勝負事が大好きで、今回の体育祭でも一番にやる気を出した人でもある。


 リーダーシップを取るのも上手く、すぐにみんなへと指示を出していった。その際、一人一人に競技に必要な練習法をプリントアウトした紙を配り、口頭でも説明していた。


 どれだけ力が入っているのだろうか? ここまでくると引きそうだが、みんな真剣な眼差しで佐伯くんの話に聞き入っている。


「何か、雰囲気が異様だね……」


「洗脳でも食らってるような熱の入りようだな」


「むう、女子までもが真剣に取り組んでいるな」


 今一クラスの空気に溶け込めなかったのは、階堂と春も同じらしい。佐伯くんの円陣から一歩引いた位置まで下がり、変な熱気にあてられているみんなを呆然と見つめていた。


「おい、海藻類トリオ! ボーッとしてないでこっちこい!」


 すると、大体のクラスメイトが各々割り振られた練習に行ったからか、佐伯くんの標的が僕らに移ってしまった。佐伯くんは中学は別だけど、桂中学出身の友人がいて、僕らのことは『海藻類』で覚えてるみたい。


「お前ら全員『玉入れ』と『大玉転がし』だったよな?」


「ああ、そうだ」


「なら、これをよく見とけ。競技の作戦が書かれてる」


 佐伯くんから三枚のプリントを手渡され、目を落としてみる。一番上に競技名が書かれ、練習法やコツみたいなものが細やかに記載されていた。


「『玉入れ』も『大玉転がし』も、ついでに『綱引き』も道具が必要だから気軽に練習はできねぇが、放課後練習なら事前に先生に申告し、自分たちで道具を出せば練習させてもらえる。

 この時間はこのプリントを熟読し、イメージを膨らませとけ。大玉のチームはお前らで一組作ってるから、よく相談しろよ。わからなかったら俺に聞け」


 一気にそれだけ言い切ると、佐伯くんは自分が出場する競技のメンバーのところへ行ってしまった。『学級対抗リレー』だったかな? 野球部だけあって、足が早いらしい。


「……行っちゃったね」


「何であいつらはあそこまで真剣になれるんだ? 理解できねぇな」


「同感である。早く移動したければ、自転車や車、電車などを使えばいいものを」


「いや、徒競走は移動手段のために足を早くしたい訳じゃないから」


 見当違いな春の言葉に突っ込みつつ、僕らは言われたようにプリントへ目を通していく。


「なんだこりゃ? これ本当に『玉入れ』の説明か?」


「『玉入れ』の基本的な流れ、玉の積み方、投げるときのフォーム、役割分担? え? 『玉入れ』って、玉を拾って投げてかごに入れるだけじゃないの?」


 階堂と僕が目にしたのは『玉入れ』のプリントだけど、まず目に飛び込んできたのは玉の積み方という見慣れない言葉と図解だった。


 玉の向きや大体の高さや幅が記され、最終的にジェンガみたいな感じで組み上がった箱みたいな玉の絵が載っていた。矢印で玉を重ねる順序まで丁寧に記されており、解説としては非常に見やすい。


 さらにその続きには、重ねた玉の持ち方と、かごへ投げるときのフォームや力加減なども、事細かに書き込まれている。


 そして、投擲役、玉拾い役、玉積み役といった役割についての説明や重要性がまで書かれており、内容が本気すぎて僕も階堂も驚いたり呆れたりするしかない。


「『大玉転がし』も似たようなものだぞ。玉の押し方や、折り返しと大玉の受け渡しのコツなど、注文がやたらと細かい。練習すべき点が明確なのは助かるが、ここまでやると呆れるしかないな」


 春が見ていたのは『大玉転がし』のプリントのようで、『玉入れ』のプリントに似たり寄ったりな内容らしい。


 また、少しうんざりしながらクラス全員参加である『綱引き』のプリントも見てみると、綱の持ち方、体重のかけ方、かけ声と力を込めるタイミングなど、指示が細かすぎて逆に覚えられるのか不安になってくる。


「これ、もしかしなくとも、各種目の競技スポーツとしてのノウハウを調べたんだろうな。佐伯のやつ、体育祭をエンジョイしすぎだろ……」


「わからない……、ここまでやれる熱意がさっぱりわからない……」


「拙者も相馬氏に賛成だが、ここまでやる佐伯氏がいる手前、どうしても手を抜けんぞ。少しでもサボれば、クラスの連中からどれほどの怒りを買うか、想像に難くない」


 基本的にインドア派な僕らは、佐伯くんの本気具合が信じられずにいたが、春の重々しい言葉に黙りこむ。


 そもそも運動が得意でないから、体育祭はほどほどに頑張るつもりでいた。けど、クラス全体で謎の盛り上がりを見せている現状、本番の成績が悪かったらクラス中から非難を浴びそうだ。


 今までも悪い噂のせいで僕らの扱いは雑だったが、体育祭をサボって余計に嫌われるのはよろしくない。最悪虐めに発展しそうだ。それくらい、妙なテンションでみんな練習していた。


「仕方ねぇな。とりあえず、俺らもクラスの空気に合わせるか。ちょっと先生に、放課後に道具を使えるか確認してくる」


「拙者たちは、邪魔にならないようにプリントを読み込んでおくとしよう。相馬氏、覚えられるか?」


「う……、ど、努力する」


 僕らの中ではアクティブな階堂は先生を探して走っていき、僕らはグラウンドの隅でプリントとにらめっこをすることとなった。


 テスト勉強が終わったばかりなのに、また勉強みたいなことをするのか……。


 体を動かすだけでも嫌なのに、頭も使うとなって僕のテンションはダダ下がりだ。案外覚える内容が多く、全部頭に入るのかも不安だ。


 その後、階堂も合流して、僕らは暗記のようにプリントの内容で問題を出しあって、イメージトレーニングで時間を潰した。


 やっぱり僕の記憶力が一番悪く、二人はすぐに覚えられていた。体育の終わりには、一方的に僕へ問題を出すだけとなり、間違えればデコピン一発をもらうはめに。


 授業後、僕のおでこは真っ赤に染まった。


 階堂も春も容赦なさすぎだよ……。


 放課後になってから僕らの本格的な練習が始まり、実際にプリントに書かれたことを実践してみた。


「……う~ん」


「……なんつーか、なぁ?」


「……何故だか、納得がいかん」


 結果は、確かに知識なしの僕らがやるよりは、格段にいい成績がデータで出てきた。道具を借りた時間いっぱいまで、他のメンバーも加えて何度か練習したけど、かなりの高水準で結果が出せたと思う。


 しかし。


「何か、他のクラスの練習を見る限り、僕らが力入れすぎてて逆に恥ずかしいんだけど……」


「だよなぁ? 競争意識高そうなのって、一年じゃ俺らのクラスしかいねぇんじゃねぇの?」


「他はずいぶんとほのぼのとした練習だな。一部、奇妙な緊張感が顔に出ているクラスもあるが、拙者らとは意味合いが違うようだ」


 僕たちのクラス以上に声を出していたり、他のクラスを意識して体育祭の練習をしているクラスはなかった。むしろ、僕らが頑張りすぎていて浮いている気がする。


 それを気にしているのは、四組の中では僕ら三人を含めても少数派で、誰もが暑苦しい体育祭の空気に飲み込まれていた。


「……部活もあるし、体育祭の練習もキツいし。僕、倒れなきゃいいけど……」


 そろそろ体育祭の練習時間は終わり、部活に行く時間になる。これから僕は、またキョウジ先輩に殴られに行くのか、と考えると更なる憂鬱が僕にのしかかった。


 テストもしんどかったけど、まだまだしんどい日々は続きそうだ。




 ぽっと出にならないか心配な新キャラが出ました。彼のせいでちょっとした体育祭のイベントが、本気の競争に早変わり。


 凛ちゃんが精神的にいじめられてる分、蓮くんは肉体的にいじめられています。作者は意図してなかったんですけどね……。


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