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ゆる~らぶ  作者: 一 一 
一章 部活動 ~高校一年生・一学期~
32/92

伸治の一 ぶっ殺されてぇのか?


 キョウジ先輩視点です。


 ちなみに、里香っていうのはトウコ先輩のことです。


 一応、混乱がないように先述しておきます。


「マジでついてくんのかよ、里香? 直接連絡受けたのは俺だけだから、別についてこなくてもいいんだぞ?」


「冗談は顔だけにしな。伸治一人で行かせられるわけないだろ? 昔も今も、私が伸治のストッパーなんだよ? やり過ぎないように見張ってるのは、私の義務だ」


「……ちっ、勝手にしろよ」


 西高で中間テストが始まる、大体一週間前。俺は後輩のレンマから誘われた勉強会を断り、学校を出た。後ろには里香がぴったりついてきやがる。


 これから会う奴らのことを考えれば、レンマのとこで勉強でもしといてくれた方がよかったんだがな。昔から里香は、俺のことになると妙に鋭い。


 まあ、仕方ねぇか。逆もまたしかり、俺も里香のちょっとした変化はすぐにわかっちまうからな。これだから、幼馴染みってのは厄介なんだよ。


 ミィコ部長らへの断り文句には、他の知り合いでの勉強会っつったが、俺が大人しくテスト勉強なんざするわけねぇだろ。ターヤ先輩やミトの奴は気づいたかもしれねぇが、他は納得したみたいだからいいけどよ。


「で? 誰に呼び出されたの?」


「東高の本郷だよ。いまさら俺に何の用だっつぅんだ」


「なるほど、いい予感は全くしないね」


 本名、本郷(ほんごう)(まさる)は俺らの同級生で、桂中学ん時に少しつるんでいたろくでなしだ。今じゃ柄の悪い東高でも名の知れた不良になってるみてぇで、いい噂なんざ聞けやしねぇ。


 まあ、わずかな期間とはいえ、そんな奴とつるんでた俺も、元々どうしようもねぇ不良のろくでなしだったんだけどな。


 俺が変われたのは、演劇部の先輩や部員、それに里香のおかげだ。


 最初は人数が少ねぇマイナーな部活で、一発脅せば幽霊部員にでもなればいい、なんて思ってたんだが、変人どもの巣窟だった演劇部の先輩たちから鬼のようなシゴキを受けた。


 毎日足腰立たなくなるまで練習させられ、何度もサボろうとしたが里香に捕まり、部室に連無理矢理れていかされた。


 体力的なキツさもあったが、俺がもっと苛立ったのは同級生のミトとトーラだった。見た目普通の女とガキが、俺よりハードな練習で平然としてるのがムカついたんだったな。


 んで、対抗意識が生まれて競うようになってからは、いつしか演技の楽しさもわかってきて、真剣に取り組むようになった。


 今じゃ、演劇部は俺の数少ない居場所の一つになってる。そういう意味じゃ、部活に強制連行した里香や、こんなバカ相手に向き合ってくれた先輩たちには感謝してる。口には出さねぇけどな。


 何だかんだで一年が過ぎ、俺にも後輩ができた。レンマはダメダメな奴だが、根性がある。少なくとも、一年前の俺よかよっぽどマシだ。


 初めの印象がなよっとしてるモヤシ野郎だったから、後で退部する前に辞めさせてやろうと、先輩たちから受けたような厳しい言葉をわざと吐いたことがあった。


 でも、レンマはビビるでもなく、文句を言うでもなく、食らいついてこようとした。入部したての俺は「無理だ」とか「動けねぇよ」とか、まずは諦めや言い訳ばっかだったから、純粋にすげぇって思った。


 一週間くらい揺さぶりをかけ、辞めるかどうか見ていたが、あいつは筋肉痛に苦しみながら自主的に演劇部へ足を運んだ。だから、追い出すのをやめて認めてやったんだ。


 ま、レンマはあの無愛想なミトを最初に落としやがった、演劇部でも異質な変人だからな。俺なりのだせぇ抵抗だったのかもしんねぇな。


 他にも演劇部には似合わねぇ真面目なハーリーや、華奢(きゃしゃ)な見た目に反してハイスペック過ぎて逆に違和感がねぇカリン、一緒にされたくねぇ類いのシスコンのオウジとか、愉快な奴らが入ってきた。


 勉強は面倒くせぇが、部活はそこそこ楽しめてる。そのために学校に来てるようなもんだ。


 だっつうのに。


 つい数日前に、本郷からメールが届いた。


『後輩ができたみてぇだな?』


 文面はそれ以外に日時と場所、それと添付ファイルに俺らの下校姿が写った写真が載っていた。


 挑発としては安いが、さすがに放置はできねぇ。下手に無視すりゃ、俺の知らねぇところであいつらが襲われるかもしれねぇからな。


 写メに写ってた一年はレンマとハーリー。シスコンとカリンは車通学っつう話だから、さすがに本郷も知らねぇだろう。


 無類の女好きである本郷のことだ、ハーリーをちょっと拉致ってヤるから見逃せ、とかふざけたことをいってくるに違いねぇ。


 もちろん協力する気はねぇが、俺の知らねぇところでハーリーに近づき、手下引き連れて無理矢理、ってのも十分あり得る。


 んなことになる前に、きっちり釘刺しとかねぇとな。


「よぉ、久しぶりじゃねぇか、橋本ぉ」


「ちっ! こっちはてめぇの面なんざ、二度と拝む気はなかったんだがな」


「そういうな。俺とお前の仲だろ? っつか、藤田も一緒かよ。相変わらずよろしくやってんなぁ? 今度俺にもヤらせろよ?」


「ざけんな。マジでぶっ殺すぞ」


「おーおー、こえぇ、こえぇ。それでこそてめぇだよなぁ、狂犬の橋本君?」


 こっちの台詞だ、強姦魔が。


 指定場所だった、西高と東高の中間辺りにあるコンビニに到着し、俺はなるべく胸くそ悪い視線から里香を守るように立ち位置を変えた。


 本郷の見た目は目付きが悪ぃだけで普通な俺と違い、大柄で毛深い熊みたいな奴だ。筋肉質でごつい体格は変わらず、いや、むしろ中学ん時よりでかくなってやがんな。


 狂犬、ってのは俺の昔のアダ名だ。今考えたら恥ずいだけだが、誰彼構わず睨んで威嚇しては、気に入らねぇ奴に喧嘩吹っ掛けてボコボコにしてたら、自然とそう呼ばれるようになってた。


 対し、本郷はデカイ図体の割りにいつも手下を何人も侍らせ、一人相手に集団で襲いかかるような小心者だ。今日も何人か柄の悪ぃ奴が近くにいやがる。本郷の取り巻きだろうな。


 特に、こいつは気に入った女に目をつけては、暴力で黙らせてレイプする卑劣なクソ野郎だ。自分より弱い奴しか強気になれず、なぶることに楽しみを見出だす人間のクズだ。


 中学ん時も、俺はこいつと積極的につるむことはなかったが、いつの間にか学校内では俺と本郷が手を組んだみたいに言われ、余計に避けられるようになっていた。


 一緒に行動してたのは、一ヶ月もなかった。当時も俺に構ってきた里香に目をつけた本郷が、同じ手口で里香を襲おうとしやがったからな。


 すぐに手を貸した奴も含めて、本郷と取り巻きの奴らを全員半殺しにしてから、本郷とは縁を切ったつもりだった。


 だが、どこからか俺のメアドを知り、今回連絡してきた。あんだけボコボコにしてやったのに、今さらメールを寄越した理由はなんなのか。


 本郷は俺らの姿を見つけると、無駄にデカイ図体をのっそりと起こし、にやにやとイヤらしい視線を里香に送ってきやがった。取り巻きどもは特に口出しせず、黙ってメンチを切ってきやがる。


 さっきも言ったが、里香に手ぇ出したら冗談抜きで殺すからな。


「で? わざわざ人のメアド調べて、時間と場所まで指定して呼び出しやがって、何の用だよ? 俺はもう、てめぇとはかかわり合いたくねぇんだよ」


「つれねぇなぁ。ま、丸くなっちまったてめぇなら、んな腑抜けたことを平気で言うのはわかってたけどな」


「喧嘩売りに来たのか? なら買うぞ? あいにく、喧嘩の腕はなまっちゃいねぇんでな」


 先輩からの指示で、部活では嫌というほど悪役や不良役をやらされたからな。錆び付かせてもいい技術は結局錆びなかった。


 先輩たちは「殺陣(たて)と一緒だ」なんて言ってたが、今振り返ってもぜってぇ違うと思う。そういうとこは、やっぱ変人だったんだなとつくづく思うな。


「おっと、よせよ。俺だっててめぇとやりあう気はねぇさ。俺の目的はてめぇじゃなくて、このカワイイ一年だよ」


 若干慌てた様子で、本郷はにやついた笑みはそのままに、スマホを取り出して写メを見せてきた。


 俺へのメールに添付された写真と同じもので、一年の女子は一人しかいねぇ。


「ほぉ……? 結局は俺に喧嘩を売りたいわけだ? いいぜ、来いよ? 骨折くらいは覚悟してんだろうな?」


 狙いはやっぱ、ハーリーだったな。ここで俺の同級生や、ミィコ部長を狙いに定めなかったのは、俺との付き合いが長い分、手ぇ出したらヤバイと思ったんだろうな。


 俺から言わせれば、本郷みてぇな昔の俺の繋がりが原因で、俺の知り合いが被害に合うのは、我慢ならねぇ。


 本郷(こいつ)が俺の目の届く範囲でやらかしたことは、全部俺の恥だ。何かおっぱじめる前に、気持ちの面で(くじ)いてやらねぇとな。


「……ちっ、わかった、わかったよ。てめぇの近くにゃ手ぇ出さねぇよ。それでいいか?」


 俺はいつでも殴りあう気でいたが、本郷はあっさりと引いてきた。両手をあげて降参のつもりか、俺らから離れるように後退する。


「大人しくなったとはいえ、てめぇの目があるところに手ぇ出すのはリスクが高かったから、確認のつもりで呼んだんだがな。

 てめぇの様子じゃ、おイタは止めといた方が良さそうだ。呼び出して悪かったな、もう手は出さねぇよ」


 そう言うと、本郷は俺の返事を待たずに取り巻きに合図し、去っていった。


 これで安心できたらいいんだが……。


「引き際がよすぎる、な。なに考えてやがんだ、本郷の野郎」


「そうだね。ハーリーもそうだけど、演劇部のメンバー全員に注意しておいた方がいいかもしれないね」


「里香、わかってるだろうが……」


「本郷のことは言わない、でしょ?」


 あいつは昔からかなり執念深い。俺が脅したからといって、そう簡単に引くとは思えねぇ。


 部員に全部話せば話は早ぇが、東高の不良に狙われてる、なんて無駄に怖がらせるのも趣味じゃねぇ。ここは俺と里香で、あいつらのことを注意して見とくとするか。


 警戒すんのは、この写メの面子だけでいいな。あまり俺らの目が分散すると、とっさの時に反応できなさそうだ。


 カリンは容姿があれだから心配っちゃ心配だが、あいつにゃ四六時中シスコンストーカーが張り付いてっし、問題ねぇだろ。


 まあ、ターヤ先輩にゃ報告しといた方がいいだろ。あの人には俺も勝てる気がしねぇ。喧嘩も、頭でもな。自衛ができる理解者が増えれば、目も増える。ここは先輩を頼らせてもらうか。


「じゃ、明日からなにかと理由をつけて行動を共にする。多少不審でも、何かあるよりゃマシだ。

 ……頼んどいて何だが、里香も狙われてんだから、無理すんなよ」


「バーカ。誰に言ってんの? 喧嘩の腕と度胸なら、あんたに付き合って身に付いてるって。

 ま、心配してくれんのは、嬉しいけどさ」


 ……そんなに不安げな顔でもしてたのか、俺が声をかけると、里香は穏やかに笑って俺の胸に軽い裏拳をかましてきた。


 俺はなんとも言えない気持ちを抱えつつ、やけに張り切ってる里香と家路についた。




 このシーンは入れるかどうか悩みました。

 だって、ラブコメにしては物騒ですしね。


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