凛の一 変な人がいました
注意:二話投稿です
こっちは凛ちゃん視点です。
私は一人でした。
もちろん、望んで一人になったわけではありません。気がつけば、私は一人になっていました。
何が悪かったのか。何をしたら良かったのか。
ずっと考えてきましたが、結局わかりません。
人見知りする性格が良くなかったのでしょうか?
……あり得ます、話しかけてくださる方がいても、緊張しすぎていつも無表情になってしまい、会話が長続きした試しがありません。私のアガリ性が憎いです。
小学生の頃は、おそらくそれが原因で、いじめのようなものを受けていました。
今思えば些細な嫌がらせでしたが、当時の私はひどく傷つき、人見知りに拍車がかかったようです。
中学に進学しても、私の人見知りは変わりませんでした。
クラスの皆さんに優しく話しかけていただけても、私は固まった表情でうつむいてしまいます。
勇気を振り絞ってお返事しても、自分でもそれはないだろう、と思うような冷たいやり取りしかできません。
無意識にできていた壁を取り払うため、私も努力しましたし、皆さんも頑張ってくださったのですが、二年間何の成果もあげられませんでした。
むしろ、私に話しかけるのは失礼だ、というよくわからない空気ができてしまっていて、余計に人が遠ざかってしまいました。
ああ、私に友達を作ることなんて、もう無理なんだ、とすでに諦めていた時でした。
「おはよう」
唐突に、知らない男の子から話しかけられました。
私はビックリしてしまって、読んでいた本から視線を上げることができません。
無愛想を地で行く私が言えた口ではありませんが、不意打ちなんて、卑怯だと思います。
「い、いい天気だね。昨日は雨が降っててジメジメしてたけど、今日は過ごしやすそうかな?」
突然話しかけられたために、私が困惑していると、その人は焦ったように言葉を続けました。
天気の話題を出すのは会話を続けるためには無難だと知っています。ですが、私はそれにどのように返せばよいのでしょう?
ムムム、難しいですね。
「あ、そうそう。昨日の『笑ってマンザイ』見た? 僕は『登リュウ』ってお笑いコンビが好きで、その人たちのネタ中、ずっと笑いっぱなしだったんだよね~」
頭の中で自分がどのように返事をするかを悩んでいると、また話題が変わってしまいました。か、会話のテンポが早すぎて、ついていけません!
しかし、たとえうまく切り返しができたとしても、私はテレビはニュース番組しか見ないので、彼の話す内容は全然わかりません。
そういえば、以前話しかけてくださった方もテレビの話題を出されていましたが、その時も答えられませんでしたね。
……私はどれだけコミュニケーション能力が低いのでしょうか? 何だか落ち込みます……。
「そういえば、柏木さんは、テレビとか見るの? 僕はバラエティ番組ばっかりだから、そういうのしか見ないんだけどね」
おっと、目の前の方を放っておいて、勝手に落ち込んでいる場合ではありません。この方のことは残念ながら存じ上げませんが、私もお話を続ける努力はしなければなりません。
しかし、この方は私のことはご存じなのですね。考えてみれば、新しいクラスになって一月が経ちます。クラスメイトの名前は覚えていてしかるべきなのでしょう。
…………あれ? 私、クラスメイトの名前って、何人知ってましたっけ?
「あ、僕のこと知ってる? 相馬蓮っていうんだ」
!
や、やりました! 初めてクラスメイトのお名前を知ることができました! ご自分から名乗って下さるなんて、なんて優しい方なのでしょうか!
そうま、れん、さん。
相馬蓮さん。
覚えました。もう忘れません。
……忘れないように、もっと復唱していた方がいいかもしれません。
「あと一年で卒業だけどさ、これからよろしくね。柏木凛さん」
相馬さん、相馬さん、相馬さん。
ちらっと、相馬さんの顔を伺います。今時珍しいメガネをかけていて、茶色の髪が所々跳ねているのが特徴的な、インドアっぽい方。
第一印象は、変な人? でしょうか?
あ、何だか覚えられそうです。
見た目が面白い人ですから、人の名前を覚えるのが苦手な私でも、忘れられないインパクトがあります。
相馬蓮さん。
ふふふ、完璧です。この柏木凛、貴方のことは覚えましたよ!
キーンコーンカーンコーン。
「……あ、休み時間が終わったみたい。じゃあね柏木さん」
そう言うと、彼は私の席から離れていきました。
………………あれ? 私、結局一言も話せてなかったのではないでしょうか?
次の授業の先生が教室にいらっしゃった時、ようやく私の失礼な態度に思い至りました。
ううう、ごめんなさい、相馬さん。
ぼちぼち更新ですので、まったりした気分で待ってください。