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ゆる~らぶ  作者: 一 一 
一章 部活動 ~高校一年生・一学期~
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蓮の七 え? 聞いてないよ、そんなこと


 蓮くん視点です。


 今回の設定は、まあ創作物だからということで勘弁してください。


 入学の日にはゴタゴタがあったけど、帰宅した僕は大人しくテスト勉強をしていた。


 参考にしたのは中三の時に受験用として配布された問題プリントだ。中学の内容を広く取り扱っていたし、対応できるだろうと思ったからね。


 実際のテストでは、あまり役に立たなかったけど……。


 どうやら、西高は僕が考えていたよりも勉強が難しいらしい。テストの後半は応用問題とか、難しい読解問題が出題されたりとか、とにかくわからない問題が多かった。


 まだテスト結果は出ていないけど、順位が出たら僕の位置は中学で勉強をする前と同じくらいの下位になるんじゃなかろうか?

 

 まあ、仕方ないよね。元々僕の成績じゃ入学すら危ぶまれた高校なんだし。成績は焦らず、大きく落とさないことを目標としてやっていこうと思う。


 さて、もうテストの話は置いといて。


 今、僕ら新一年生は体育館に集まっている。


「では、これから部活動紹介に移ります」


 そう。つまりはそういうわけだ。


 テストが二日に渡って行われ、土日を挟んだ月曜日。僕らは担任の佐野先生の引率で学校の施設案内を受け、その流れで部活紹介を受けている。


 クラスごとに整列して地べたに座り、司会役の先輩がマイクを握って壇上の隅に立っている。僕らは先程配布された、西高の部活がざっと()った冊子をめくっている。


「なお、皆さんご存知の方もおられるでしょうが、西高(うち)は帰宅部がありません。公立では珍しいかもしれませんが、部活必修です。中学校では帰宅部だった人も、今回の部活紹介を参考に興味の()いた部活動を見つけてくださいね」


 ……え? 何それ聞いてない……。


「では、最初は……」


 僕の戸惑いなど気づかない先輩は、さっさと部活動の紹介に移ってしまった。最初は運動部系だから、スルーしても良さそうだ。高校から運動とか、絶対についていけない自信がある。


 僕は特徴的なユニフォームや器具を用いてアピールする先輩方を無視し、配られた冊子の文化部系のページに目を向けた。


(う~ん、どれにしようかな)


 一通り目を通したけど、奇抜な部活はなさそう。割とどこにでもあるオーソドックスな名前が並んでいる。


 とはいえ、僕は何事もうまくいった試しがない。音楽や美術といった才能が必要な部活は論外だし、書道とかも字が汚いから入りづらい。


 階堂が興味を持ちそうな文芸部とか、映像研究会(多分、サブカルチャー系を含むと思う)とかも、僕はついていけなさそうだから無理だし。


 見た目だけなら化学部とか生物部とかが似合いそうだけど、理数系って苦手だからパスしたい。


 ……う~ん、見れば見るほど僕には不向きな部活が多い気がする。何で西高は部活必修なんだろう? 私立の高校とかならわかるんだけどなぁ。


 最近の学校現場では人手が足りなくて、外部から部活動の指導をしてくれる指導員を呼ぶくらいだ。ってニュースをたまたま見かけたことがあるんだけど、西高は当てはまらないんだろうか? 先生の負担が大きいんじゃないの?


 まあ、僕が心配するようなことでもないと思うんだけど。今は僕自身のことを考えないとね。


「ありがとうございました。それでは続いて、文化部の紹介に移ります」


 おっと、色々考えている間に運動部の紹介は終わったようだ。冊子だけじゃ雰囲気がわからなかったし、ここからは注意して話を聞いておかなきゃ。


 あ、ちなみに司会をしてくれている先輩は放送部だ。校内放送とか、大会とかもあるらしい。僕には合わなさそうだし、放送部も止めとこうかな。




「どうしよう、部活……」


 今日の予定はすべて終わり、僕は今放課後になってから机に広げた入部届けの紙を睨んでいる。


 結局、先輩方の勧誘を見てもピンと来る部活はなく、どうにも決めあぐねいていた。四月中に入部届を出さなくてはいけないそうだ。


 幸い、仮入部というお試し期間も(もう)けられているようだから、試しに適当に部活見学をしてみてもいいかもしれない。


「よ~う、博士。何(うな)ってんだ?」


「何やら悩んでいるようだな、相馬氏」


「あ、階堂に春」


 うんうん悩んでいると、お馴染みの友人二人が話しかけてきた。階堂も春も特に気負った様子がないから、もう入部先を決めているみたいだ。


「いやね、僕西高が部活必修だったなんて知らなくて、まだ部活を決めてないんだ」


「え? 博士知らなかったのか? 西高の部活必修って結構有名だぞ?」


「そうなの?」


「うむ。拙者も耳にしていたぞ。何でも、(すこ)やかな精神を部活動を通して学ぶ、という方針があるらしくてな。開校当初から部活は必須だったらしい。拙者も聞いたときは驚いたが、すでに当たりはつけていた故、悩むほどではないぞ?」


 何と、皆部活については知っていたらしい。よく見ると、すでに入部届けを書き終えて教室を出ようとしているクラスメイトもいた。


 そして、僕みたいに机に突っ伏して悩んでいる人はいなさそうだ。うわー、知らなかったのって、もしかしなくても僕だけだったんじゃないかな!?


「そっかー……。ちなみに、階堂と春はどの部活に行くの?」


「俺は映像研究会だな。中学ん時の同志として親睦(しんぼく)のある先輩もいたから、そこに決めたぜ!」


「拙者も鉄道研究会などがあれば、そちらへお邪魔したのだがな。残念ながらなかったので、料理研究会を(のぞ)く予定だ」


 階堂は予想通り、春はちょっと意外な部活を選んだみたいだ。


「料理研究会? 春って料理できたのか?」


「失敬なやつだな、階堂氏。うちは拙者と父以外は女性ばかりであってな。昔から強制的に家事を手伝わされているのだ。その関係で、たまに拙者も夕飯を作ったりする。今日も当番である故、冷蔵庫の中身を思い出しながら献立を考えていたところだ」


「い、意外すぎる……」


 基本的に春から家族の話を聞いたことがなかったので、僕も階堂もビックリして春を見上げた。


「というか、博士。お前もお前で、ぴったりな部活があったじゃねぇか。そこには行かねぇのか?」


「うむ。拙者もてっきり相馬氏は即決で部活を決めるとばかり思っていたぞ? むしろ、相馬氏はあそこ以外には考えられぬではないか?」


「へ? 僕にぴったりな部活なんてあったっけ?」


 二人は中学からの知り合いではあるが、付き合いが濃いためある程度僕の能力は知っているはずだ。


 そして、僕のできることなんてほとんどないし、自分で言うのもなんだけど、多方面で才能のなさを発揮していると思う。ぶっちゃけ、何もできる気がしない。


 それは二人も重々承知しているはずだ。


 そんな僕に、ぴったりな部活? 一体なんだって言うんだ?


「は? 博士、本気で言ってんのか?」


「うーむ、拙者が思うには、相馬氏は思い込みが激しいところがある故、気づいていないのではないか?」


 階堂と春が訳のわからないことを言ってくるが、僕には心当たりがない。どういうこと?


「いいか? 博士におあつらえ向きの部活ってのはだな……」


「ふむ、確かこの辺りに……」


 すると、二人はペラペラと部活紹介の冊子をめくりだし、同時に同じページを開いて僕の机に広げた。


『これだよ』


 そうして指差した部活に、僕は心底驚いた。


 え? 無理無理、できるわけないじゃん、こんな部活!



 はてさて、蓮くんひぴったりの部活って、何なんでしょうね?


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