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ゆる~らぶ  作者: 一 一 
一章 部活動 ~高校一年生・一学期~
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蓮の六 変わる環境、変わらぬ環境


 お待たせしました。なるべく毎日投稿できるよう、がんばって書いていこうと思います。

 蓮くん視点です。


 先生に促された僕と柏木さんは一階で別れ、各々のクラスに向かった。僕が遅刻ギリギリの時間で登校したから余裕もなく、階段につくと挨拶もそこそこに別れていった。


 僕のクラスは一年四組。階段を上がってすぐに教室のプレートが見えた。教室からはすでに賑やかな声が聞こえてくる。まあ、最後くらいに来た僕より遅れてくる人の方が珍しいのかもね。


「……失礼しま~す」


 遅れた負い目で小声になりつつ、後ろ側の扉を開けて教室に入った。


 幸い、みんなお互い近い位置の同級生とおしゃべりしてるみたいで、僕に気づいた人は少ないみたいだった。


 ほとんどが同じ中学出身とはいえ、入学早々目立ちたくない。早く決められた席につこうと、教室の後ろを歩いていたときだった。


「おっ!! ようやく来たか博士!!」


 ビクッ! と体を震わせてしまったのは仕方ないと思う。おそるおそる教室内を見回すと、みんなも僕と同じくバカみたいなボリュームの声に驚き、視線を集中させていた。


「か、階堂……」


「遅いじゃないか、我が同志よ! ほら、博士の席はここだ! 積もる話もあるし、早く来いよ!」


 僕を含む、クラス中の視線を受けても平然としているのは、僕の友達でアニオタの階堂だ。何故か僕の席で待っていたらしく、激しく手招きしている。


「ちょ、ちょっと。声が大きいって……」


「え~? 別にいいじゃねぇか。高校も博士と一緒とは思わなかったし、ついテンション上がっちまっただけだよ」


 間接的に注目を浴びた僕は、クスクス笑いを浴びて針のむしろの気分を味わったよ。


「そう言ってくれるのは嬉しいけど、もうちょっと人目を気にしてよ」


「は? 春がいる時点で無理だろ」


「失礼なことを言うものではないぞ、階堂氏。拙者の何が目立つというのだね? それに、相馬氏も時間ギリギリではないかね。一方的に責められる身ではなかろう」


 僕の席にたどり着くと、階堂の他にもう一人の男子がいた。階堂は椅子に堂々と座り、もう一人は机に腰かけて僕に話しかけてくる。


 名前は春伊吹(はるいぶき)。百九十センチはある長身と、それに反してガリガリな体型、おまけに変なしゃべり方が特徴的な、僕の数少ない友人だ。


 しゃべり方から春の方がよっぽどアニオタだと思われるが、実はオタクはオタクでも鉄道オタクの方である。


 中三の時は別のクラスだったけど、春も同じ学校で同じクラスだったのか。


「あ、春もいたんだ」


「いたんだ、ではないだろう相馬氏。なぜ拙者らにも西高に合格していたことを隠していたのだ? 水くさいではないか」


「そうだぞ、博士! 俺も春も、クラス表見て知ったんだからな!」


「ゴメン。隠してたわけじゃなくて、単に言いそびれたんだよ」


 謝りつつも、階堂に席を譲ってもらおうとしたら拒否された。僕の席だよね?


 しかし、思い出してみればよく話をする面子だったけど、そういえは進学先について話したことはなかった気がする。


 ……あれ?


「って、基本的に僕が階堂か春の話の聞き役だったから、話す機会がなかっただけじゃないか」


「あれ? そうだっけ?」


「拙者には身に覚えがないぞ?」


 この二人、種類は違えど自分のことをしゃべり倒すのが大好きみたいで、話し出すと止まらない。僕にはわからない世界だから、聞くしかできないのだ。


 階堂はシーズンごとに始まるアニメについての批評や、当たりのアニメのブルーレイがいついつ発売とか、神回がどうとかを話題によく出す。


 春はどこそこの切符を集めたとか、なになにの列車のエンジン音がたまらないとか、オークションで欲しかった鉄道模型が安くてに入ったとか、そんな話だ。


 二人とも、範囲を絞らず広く手を出しているものだから、話を聞くだけでも大変だ。


 まあ、すごく楽しそうに話してくれるから、つられて僕も楽しくなるんだけど。


「おい、あれって『海藻類トリオ』じゃねえ?」


「ホントだ。またやってるよ、あいつら」


「え? なにそれ?」


「え? あぁ、お前他校の出身か。西高に進学する半分は桂中学なんだけど、あいつらはそこで有名なオタクトリオなんだよ。

 特に、遅れて登校したグルグル眼鏡は、中学三年の時に学校一の美少女にちょっかいかけてた馬鹿で、結構嫌われてんだよ」


「ふ~ん。てか、なんで『海藻類』?」


「あいつらの名前だよ。階堂、相馬、春って苗字と名前からとって『海藻類』。グルグル眼鏡が相馬な」


「へぇ~。あんな眼鏡どこで売ってたんだろ?」


 すると、別の席で話していたグループの声が聞こえ、思わず苦笑が漏れる。どうやら桂中学の同級生が他にもいたらしい。


 僕と階堂と春は、よく一緒にいるところを見られており、一纏(ひとまと)めに『海藻類トリオ』と呼ばれている。そのせいで、僕もオタクだと思われてしまっているわけだ。


 ちなみに、階堂の「かい」、相馬の「そう」、春伊吹の「るい」で『海藻類』だそうだ。誰が言い出したか知らないけど、上手いことまとめたなと思う。


「そういえば相馬氏。柏木氏に振られて傷心と風の噂で聞いたが、何て無謀なことをしたのだ。まさか、相馬氏はドMだったのか?」


 さっきの同級生といい、春といい、僕の評価ってどうなってるんだ? 噂が一人歩きしてる感じがして、かなり怖い。


「酷い言いようだね、春。振られてないし、柏木さんとは何もなかったし……」


「ばっか! 春! 博士の古傷を(えぐ)るなよ!」


「え? 階堂?」


 春の誤解を解こうとしたけど、被せぎみに階堂が焦ったような声を上げた。


 え? なにその反応?


「……すまない、相馬氏。少々配慮に欠けていたようだ。許してほしい。この通りだ」


 ガチ土下座!?


「そんなことしなくていいから!! ほら、膝も汚れちゃうし!!」


 ある程度事情を話していた階堂の悪ノリのせいで、春が暴走し出した。(かたわ)らの階堂は僕らを見て忍び笑いをしている。お前も止めろよ!


 話し方が独特で、身長の関係もあってどうしても居丈高(いたけだか)な態度に見えるけど、春は基本的に素直で根がいいやつだ。こうして階堂にからかわれるのも、一度や二度じゃない。


「はい、皆さん席について……、何をやっているんですか?」


 最悪なタイミングで先生来たー!!


「な、なんでもないんですー!!」


 この時、僕はつくづく思った。


 高校生になっても、この友人二人がいる限り悪目立ちするのは避けられないんだろうな、と。




 あれからなんとか春をなだめ、そのまま入学式へと移った。校長先生の長い話や、起立、礼、着席の繰り返しという、式はありがちな流れで解散となった。


 再び教室に戻り、いくつかプリントや諸注意を受けてホームルームは終了。午前中で学校は終わり、あとは下校するだけだ。


「明日いきなり確認テストかよ……。ダリィな。動画サイト巡りができねぇじゃんか」


「確かに、休み明けですることではないな。忌々しい……、録り溜めした『世界の○窓から』のヨーロッパ全土総集編を一気見しようと思っていたのに……」


「階堂はぶれないね。あと春、それ楽しいの?」


 二人は自分の予定を崩さなければならないことに苛立ってるようだが、僕は趣味がないので二人の気持ちはよくわからない。


 特に、春のいう番組は有名だから知っているが、たしか十分も放送されないやつじゃなかったか? ヨーロッパ全土ってことだし、編集してもすごい時間かかりそうな感じはするけど、それを一気に見て本当に何が楽しいんだろう?


「はぁ、仕方ねえ。これが学生の勤めか。少しでも勉強しとくとするか」


「だな。さっさと帰るとしよう」


「じゃあ帰ろうか」


 意見もまとまったことだし、今日は帰ってテスト勉強をすることにした僕たちは、鞄を担いで教室を出た。


 僕らは電車通学だから、西高の最寄り駅までは一緒で、下車駅がそれぞれ違って別れることになる。クラスも同じだし、部活とかがなければ階堂と春の三人で下校することになりそうだ。


「ん?」


「一階が騒がしいな?」


「なんだろうね?」


 階段を下りたところで、一階が騒がしさに気づいた僕たち。喧嘩騒ぎ、というよりは、キャーキャーと黄色い声が目立つような……?


「まあ、俺たちには関係ないだろ。帰ろうぜ」


「同感だ。帰っても面倒事が待っているのだ。こんなところでも面倒なことに構ってられん」


「二人ともテンション低いなぁ」


 自分の欲望(しゅみ)に正直で忠実な二人だけど、やっぱり成績は気になるんだろう。明日のテストが憂鬱(ゆううつ)過ぎて面倒になり、騒ぎはスルーするみたいだ。


 というわけで、何か人だかりができている脇をすり抜け、僕らはさっさと帰宅することにした。


 ……う~ん、でも、騒ぎが起きてたのって、柏木さんが編入された三組だったような? まあ、柏木さんが中心なら頷けるね。美人だし。


 若干、女子の声が多いような気もしたけど、僕には関係ないかな。


 さて、僕も試験対策、がんばろう!



 作者自身はアニメも鉄道も無知に近いので、ディープなことは書けません。

『世界の車○から』の楽しみ方も、あくまで春くんの楽しみ方であり、一般の鉄道オタクと呼ばれる人々の楽しみ方はわかりかねますので、ご容赦を。


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