表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Phantom Rat  作者: タペペ
1/2

第1章 白い願い

初めまして、タペペです。

気楽に読んで出来れば感想をいただけると嬉しいです^^


夜の東京は、もう空を手放していた。

ネオンの光が雲を照らし、星の代わりにホログラム広告が瞬く。ビルの屋上に立つ男の影が、雨に滲んだ街を見下ろしていた。


黒のシルクハット。長いコート。右目に埋め込まれた義眼が、電子ノイズのように微かに光る。


 ーファントム・ラットー

この国で最も有名な怪盗にして、最も正体のわからない存在


彼のターゲットは、誰が決めるわけでもない。

いや、正確には“国民”が決める。


数時間前、

《THE WISH》に新しい“願い”が受理された。

政府顧問・藤堂源一郎。盗むものは“記憶チップ”。


辰平たつひらはポケットの中で、小さく笑った。

「…政治屋の記憶か。今夜はちょっと重そうだな。」


耳の奥で、低い電子音が一度だけ鳴る。

続いて、機械のフィルターを通したような声が流れた。


「準備は?」


「とっくに終わってる。ターゲットはオフィスビルの最上階、セキュリティは七層構造。」


「甘い。実質八層。七層目の監視AIは予備システムだ。」


「お前ってほんとに優秀だな。たまには褒めてほしいもんだ。」


「じゃあ、死なずに帰ってきたら考える。」


ノイズ混じりの通信が切れ、夜風の音だけが残る。

辰平はひとつ息を吐いて、帽子のツバを軽く下げた。


──跳んだ。


雨を切り裂くように、ビルからビルへ。

足元を滑る水面が、彼の影を無数に増やしていく。


藤堂のオフィスは、国家機密級の防壁に囲まれていた。窓ガラスは生体認証連動、内部は空気圧制御。

けれど、ラットにとって扉は“開けるもの”ではなく、

“すり抜けるもの”だ。


彼の義眼が光を反射する。

 視界に浮かぶのは、ハッカー《WISH》が送った侵入ルートのARライン。まるで都市の血管の中を流れるように、彼は静かにビルへ潜り込んだ。


─数分後、最上階。


デスクの上には、透明な小箱。

中には、青白く光る小さなチップ。

それが、藤堂の“記憶”。

金で消せる罪の断片。


辰平は指先で軽く箱を撫でた。

「思い出ってのは、意外と軽いもんだな。」


その瞬間、イヤーデバイスが再び震えた。


「ラット。時間切れ。ドローンが再起動する。」


「もう少しロマンチックに言えない?」


「……退路を開いた。北側の窓から二十秒。」


「了解、ウィッシュ。」


初めて、その名を口にする。

それが声なのか、AIなのか、女なのか。

ラット自身にも、まだわからなかった。


 彼は記憶チップを懐に滑り込ませ、夜の空気へと跳び出す。背中のマントが風を裂き、ネオンの海を舞い下りていく。


雨は冷たく、だが妙に心地よかった。

ラットの唇が、皮肉めいた笑みを描く。


「さて──今夜も、誰かの“願い”を叶えたわけだ。」


遠くで警報が鳴り響く。

それを背に、怪盗は闇の中へと消えていった。

読んで頂きありがとうございます。

どうしても怪盗ものを小説にしたくて書き始めました。

良ければこんな展開欲しいなどあればコメントください、参考にしたいと考えております。

気楽に読み続けて頂けたら幸いです。

どうぞよろしくお願い致します。

ファントム・ラットはじまりはじまり〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ