表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

父はヒーロー

作者: インコの足
掲載日:2025/10/13

『ヒーロー』と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?



 私の父はヒーローである。


 いや、コミックのような世界を守るヒーローとか、警察など社会を守るヒーローと言う意味ではなく。


 父は我が家のキッチンに現れる悪の親玉

──母の手料理の数々から、父自身の胃を守るヒーローである。




 その歴史は、父と母がまだ「〇〇ちゃん♡」とか呼び合ってたような付き合い始めた頃から始まった。

 ある日、一人暮らしの父のアパートに母が来て昼食を作ってくれることになった。

 メニューは餃子、手作りではなく冷凍品をフライパンで温めるアレだ。綺麗なキツネ色をした餃子を「〇〇ちゃんどーぞ♡」と出された父は、デレデレ(娘の想像)しながら口に運んだ。


 中が生だった。


 それ以降、母から出される餃子は必ず事前に箸で割り、中を確認するようになった。




 母は流石に反省したものの、料理の改善には至らなかった。

 その後、両親が結婚し、娘が生まれ、学校に行くようになっても、母の料理は改善されない。




 親子3人が揃う、ある休みの日。母が野菜炒めを作った。

 なんてことはない、ただ冷蔵庫の整理のため、余った野菜を切って炒めただけのよくあるやつだ。


 味が無かった。


 一体どんな味付けをしたのか、素材そのものの味すらなかった。ただ食材の食感だけが存在した。ついでに玉ねぎは黒焦げ、人参はほぼ生だった。

 父は抗議する母を退け、全員分の野菜炒めを回収し、無事な野菜をフライパンに放り込んだ。ついでに卵を足して調味料も加えた。


 数分後、食卓には美味しい野菜炒めが並んだ。




 これが我が家のいつもの光景である。 


 父は母が料理を始めたことに気が付くと寄ってきて、キッチンとリビングの間にある柱の陰からジッと母を監視するのだ。

 そして我慢できなくなると母から包丁やらフライパンやらを奪い、自分で作ってしまう。

 

 母は「大丈夫なのに」と不満気だが、時たま帰省する娘の胃の平和を守ることにも繋がってるので、父には是非頑張ってほしい。


 母に任せず、父が最初から作ればいいんじゃないかとも思うが、それも違うらしい。

理由については「う〜ん…… (答える気がないやつ) 」としか返ってこなかった。真相は本人のみぞ知る。



 

 そしてつい先日、母からLINEで「ホットケーキが上手く焼けた」と写真が送られてきた。

 厚さも焼き加減も均一、切り口からもふっくらと焼けたことがわかる、美味しそうなホットケーキだった。

 綺麗に焼けたね、と褒めたところ、父から追伸が来た。

 

 中が生だったから3分追加で焼いた。

 

 知ってた。



ここまで読んでいただきありがとうございました。

これは『ヒーロー』というお題を見て、ふと思い浮かんだエピソードです。

何の変哲もない日常でも、ひとつ視点を変えればいつもと違った風景が見えるかもしれません。


あなたの日常に潜むヒーローはどんな人ですか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ