8話
廿月は駆けながら町の中で悠輝を探す。しかし見当たらない。
(……少し遠くまで行ったかもな。とりあえず。幻想奇譚)
彼は能力を発動させ、黒いインクのかたまりから、ゾウのエレフンが出現。
「あらら。どうしたの。はつきおにいちゃん。ぼく、これからおねんねするところだったんだよ」
「ごめんな。起こしちゃって。でも、今頑張ってくれたらちゃんとお昼寝してもいいから。エレン。いま映奏奇譚できそう?」
「んー。ねむたいけど、できるよ」
「ありがとう。エレン。じゃいくよ。映奏奇譚」
廿月は、ゾウの子どもと合体し。顔に仮面マスク。肩にはマントを羽織っている。
「さて、いくか。エレン」
銀髪の青年がいうと、彼の体から、エレフンの声が聞こえてきた。
「うん! ぼくがんばる!」
「えらいぞ。エレン。帰ってきたらお菓子でもあげようか」
「やったー」と絵本キャラの子象は喜ぶ。
廿月たちは悠輝たちの後を追いかける。
その頃。悠輝たちは、アニメの乗り物や能力を使って目的地までたどり着いた。
金髪の女性達が乗っていたのはタヌキの形をしたタクシーだった。
料金はタダで感謝の気持ちさえあればいつでも使っても良いのだ。
「ありがとう。タヌキタクシー」彼女は手を振りながら別れの挨拶をする。
「いえいえ、またぽんぽこちゃんのタクシーにご利用ください」
そういうとタクシーは去って行った。
場所は町から離れた自然豊かな山近く。辺り一面、森林で囲まれている。
草木が茂っており、鼻孔にも土の臭いや涼しい風に当たった葉っぱの臭いが伝わる。
「この辺……でしたよね。黒墨さん」
「ええ。そうですけど、もう少し探さないといけないですね」
「想像してたよりも遠い場所にいるんですか」
「意外と道のりが長いですね。でもしばらく歩けばいずれ着きますよ」
「楽観的で良いですね。黒墨さんの旧友に会えたらオレちゃんは社長に報告します」
「助かります。ところで料金は……」
「はい、通常価格は──」
「お困りでしょうか。お姉さん方」
気がつく悠輝達の周りには黒服の男達が立っていた。