2話
廿月たちは、そう唱えると。
2人の影が動き、どんどんアニメのキャラの形になりつつある。
そして、それらが動きながら喋るようになった。
「わーい、おそとだー」体は水色で赤いマントを羽織った2頭身のゾウのマスコットは楽しく声を出す。
「うう……怖いよー」耳にピアスを開けているカートゥーンデフォルメな灰色に少し青みのあるオオカミはビクビクしながら怖がる。
ゾウの名前はエレフン・パオン。これは絵本の能力で、オオカミはウィンピィ・ウルフ。カートゥーンの能力だ。
能力名は幻想体験が正式名称で、能力者からは幻想鼠と呼ばれていた。理由は昔の短編アニメ『イマジナリーロジャー』からとられている。
「俺たちの能力……可愛いよな」廿月は少し心の声が漏れる。
「あぁ、アイドル志望の身として最高なマスコットキャラだ。オレちゃんたちを盛り上げてくれる」彼女は腕を組み、うんうん、とうなずく。
「さあ、エレン。掃除の時間だ。手伝ってくれるか」
「うん! ぼくは、よいこのヒーローだから、おてつだいできるもん」
ゾウのキャラはそう答える。
廿月は「ありがとう」と言い、一緒に床掃除する。
「さてオレちゃんたちも、がんばりますか。ウィンピィ」
「うんわかったよユウキ」
悠輝たちも手伝い、掃除を完了させる。
青年は幼少期の頃からこの作品が大好きだ。愛があればあるほど、能力も強くなる。
廿月は能力の詳細は知らないが本能でわかっていた。彼女もそうだ。能力者は何も知らなくても魂で理解できる。その心が原動力だからだ。
そうこうしているうちに、任務を終わらせる。
「それじゃ、掃除終わったので、俺達いってきますね。買いたいものはなんですか?」
「お、ごくろうさん。リストはメモにまとめた紙があるからそれを渡すわ。それを落としたときのために携帯電話にも同じものを送っとくよ」
彼は廿月たちに買い物メモを渡す。
「ありがとうございます」廿月はぺこりとおじぎをした。
「わーい、おかいもの、おかいものー。おかしいっぱい、かいたいな」
エレフンはウキウキしながら買い物を楽しみにする。
「ボクも骨型ミルクガムたべたいなー。でもお金足りなさそう……」
オオカミのカートゥーンキャラは心配そうにつぶやく。
「ははは、安心しろ余裕を持って予算を多く持たせる。それでなにか美味いもの買ってくれ」
「おー! 霧山さん最高だぜ! それじゃおかしを3000円分買いますか!」
彼女が喜ぶのも、つかの間、年上の男は「ちょっとまて!」といい。
「すまない、さすがにそんな多くは持たせないわ……」社長は顔をしかめっ面にし、汗をたらす。
「えーそんなー」
「当たり前だよ一ノ瀬さん。そんな買えるわけないじゃないですか」
「はっきー……、それはそうだけど」
悠輝が何か言いたそうだけど、そんなことは気にせずゾウの男の子は外に出ようとする。
「はつきおにいちゃんー、はやくいこー」
「……わかったよエレン、遅くなりましたね、霧山さんいってきます」
「ああ、いってらっしゃい。ちゃんと買うんだぞ」
廿月たちは玄関を出る。それを見送る社長。