26話
二人と一匹のカートゥーンは何でも屋まで歩くことにした。
今歩いているところはコンビニが多く、さっき見かけたコンビニから、二メートル先に同じ店が建っていた。なんとも不思議な場所。
しばらく無言だったが、羊のキャラから話しかける。
「二人ともお疲れ様」
スリーピィーは労いの言葉で、廿月も会話に参加する。
「スリーピィー……さんといえば良いですか?」
「別に呼び捨てでも言いよ」
「スリーピィーさん、先ほどはありがとうございました」
「いえいえ、私は恩返しとしてやったわけで」
「恩返しというと以前どこかであったってことですよね? 会いましたっけ」
廿月はあごに手をのせている。銀髪の彼はスリーピィーを能力者を助けた記憶になかったからだ。
「気づかずうちに助けたもらったお礼……とおもってくれたらいいよ」
「なるほど。わかりました」
「それと今から、能力についてのお勉強会するんだが二人とも大丈夫?」
「俺は大丈夫だけど、一ノ瀬さんは?」
「オレちゃんも大丈夫だ。何でも屋に到着するまで、いくらでも勉強してくれ。あ、待って」
悠輝は近くのコンビニへ行く、数分後帰ってきた。手に持っていたのはメモ帳とペン。
「勉強するなら、コレを用意しないとな」
にっこりと笑う悠輝、彼女は勉強熱心だ。
「ありがとう」
スリーピィーはお礼の言葉を伝えた。
先に廿月が質問する。
「質問です、どうしてマイクさんと戦っていたとき、エレン…ゾウさんの攻撃を効いてたんですか?」
「それは魂の能力に関わるんだけど、魂を宿ったアニメキャラには、同じ魂を宿っている幻想鼠の能力使うことで、攻撃できるんだ」
「……どう言う理屈で?」
「魂を卵の黄身で例えると、“殻を割って黄身が無事”なのが、“魂を攻撃していない”。ゆで卵で“黄身ごと固まる”のが、“魂ごとを攻撃する”感じかな?」
「つまり自分の攻撃が殻を割る行為。ゾウさんの攻撃がお湯でゆで卵にするってわけですね」
廿月はあごに手を置いて、自分なりの考えを話す。
「だとしたら、さっき絵本キャラの体で、マイクさんに攻撃できたのも、魂ごと攻撃したからってことですか?」
「おー! けっこう理解力あるんだな。そう言うこと。ややこしいけどそんな感じ」
「ははは、確かにややこしいですね。覚えられるかな……」
「さて、能力の詳細について話そうか。幻想鼠はどういうのか知っている?」
「うーん。幻想奇譚と映奏奇譚と戎具奇譚ぐらいしか……。あと、さっき教わった髑髏奇譚ですかね」
「教えてくれてありがとう。ではどうやってなったか覚えているか?」
「覚えてますけど、学校でやばい人達に襲われたとき、俺が必死に能力覚醒した感じです」
「あ、はっきーの時はそうなんだ。オレちゃんの場合、川におぼれている子どもを助けるために覚醒したかな」
「え?! 一ノ瀬さん、上京した時に能力発動じゃないんですか?!」
「あぁ、とっさについた嘘だな。あんまり言いたくなかったから、『上京したときに能力覚醒した』と話した」
廿月は口を大きく開けて、びっくりしている。
スリーピィーは気にせず、説明を伝える。
「なるほど、ありがとう。簡単に説明すると幻想鼠は魂の能力で、『普段の意識』と『秘められた意識』のバランスが少し傾いたモノなんだ」
その事実を知ると、食い気味に悠輝は聞いてくる。興味が湧いてきたからだ。
「えー、そうなんだ。どのぐらいのバランスで?」
「普段の意識が十五パーセント、秘められた意識が八十五パーセントの割合なのが幻想鼠なんだ」
「十五パーセント……意外と低いんだな」
スリーピィー「と思うじゃない? 人間の普段の意識は一から三パーセントしか使ってないから何倍も差があるんだよ」
「え?! そうなの! だとすると結構バランス傾いているんだな」
メモを取りながら悠輝は口を動かす。
「そうそう。理解が早くて助かる。それと幻想鼠の基本は幻想奇譚で能力を発動して、映奏奇譚で個人の能力を最大まで発揮する。まではわかるよね」
「まぁなんとか。はっきーもわかっているよな」
「それはもちろんですよ」
「それじゃ、映奏奇譚を極めた独奏奇譚は知っているか?」
「え? なんですかそれ!」
「まぁ、わからないよな。噂によると、それを発動したら相手が能力ごとのアニメの絵柄になるんだ」
「え? どういうこと」
珍しい効果に反応する廿月。あんまり聞いたことなかった。スリーピィーは詳しい説明をする。
「説明が難しいんだけど、例えば自分が絵本の能力だとして、独奏奇譚を出したら、相手が絵本のキャラのような見た目になるってことね」
「うーん、いまいちピンときてないです」
廿月は半分以下も理解していない、そのとき、悠輝はわかりやすい説明をした。
「簡単に言えば、オレちゃんの見た目がエレフンの作者が描いたような見た目になるってことだ」
内容を噛み砕いた例えを、悠輝は声に出す。
「そういうこと」
スリーピィーはうなずきながら口を動かす。
「あーなるほど。なんとなくわかってきました」
独奏奇譚の説明を聞いて、気になることを浮かぶ廿月。彼は疑問を話す。
「独奏奇譚のこと、外で喋って良かったんですか? 何か秘密にしてた方が……」
「あぁ、どうせデマだと思われるしな。幻想鼠の間でも、『独奏奇譚を信じている奴はアホ』というのも結構いるし」
「つまりオカルト話のくくりなんですね」
「そういうこと、まぁ信じても信じなくてもいいが、自分は勝手に信じているわけってこと」
「ほうほう」と廿月は声を漏らす。続けて、スリーピィーは口を開く。
「それと能力によって、応用もできるんだ。例えば髑髏奇譚でアニメになることも可能だが、逆に自身の体にアニメキャラの魂が入ることもできる」
「そうなんですね。俺の体を使って、エレンが戦うこともできる……という」
「そういうことだ」
廿月とスリーピィーが話しているとき、メモをしっかりとっている悠輝が割り込む。
「なるほど。オレちゃんだったら、ウィンピィの魂と人格が、将来売れっ子アイドルになる一ノ瀬悠輝の体を使って戦うって事だね」
「自信満々で良いね」
親指を立て、金髪の彼女のことを褒めるスリーピィー。また、説明は続く。
今度は廿月に目線を向けている。
「それと能力を発動させながら、変身ヒーロー系玩具を使うとそのヒーローなれるから、緊急事態の時はおもちゃ屋さんにいくのもおすすめだね」
「おすすめしてくれて、うれしいんですが、そういう機会ってあります?」
「まぁまぁ、ないかも」
「そうですよね。まず緊急事態の時、奇跡的におもちゃ屋さんあるのは……」
「覚えて損はないから、一応言っておくね。いらない情報ならごめん」
「いえいえ、教えていただきありがとうございます」
「最後の説明ね、幻想鼠は想像力でも強化できるから、原作にない技でも、想像と愛があればその技を活用できる」
「ほうほう、俺だったら鼻を伸ばす技が使えるってことですか?」
「まぁ、そんな感じ。別に原作と関係ない技でもできるけど、威力は弱くなるけどね」
「小さな切り札として使っても良さそうですね。もしくは不意の奥の手」
「そういうこと。でもできるだけ愛のある原作にない技がいいかもな、さっき言っていた鼻を伸ばす技とか」
「さっきのは冗談で言ったので、使うかどうかはわかりませんね」
「そうなんだ。君なら似合っていると思うよう」
「へへへ、ありがとうございます」
廿月とスリーピィーが楽しく説明会している。
メモを取り終えたのか、悠輝がまた話し出す。今度はスリーピィーについてだ。
「ちなみにスリーピィーの元の能力者はどんな感じなんですか?」
「うーん、詳しくはいえないが、性別なら男だな」
「へー、男性なんだ。いつかオレちゃんのファンになるかもなー。なぁ、はっきー」
悠輝は廿月の方に顔を向ける。
廿月はなにか引っ掛かることがあった。スリーピィーの雰囲気が『霧山さん』に少し似ているからだ。
「男性……」
他にも、依頼で助けた男性はいたと考えるが、今のところそれしか浮かばない。
だが、一人称が違うから別人だと思うことにした。
もし、霧山さんが一人称を変えて喋ってると仮定する。
そうなると、悠輝が言った嘘が、伝わったんじゃないかと、気になってきた。
「うーん、どうすれば……」
歩きながら腕を組んで悩みだす廿月。
「はっきー、どうすればって、どういうことだ……?」
「あ、いえなんでもないです。関係ないです」
「あー、もしかして、女性じゃないから、少しショック受けたんだろー。付き合えるかなーと」
「そ、そんなことじゃ……」
「大丈夫だ! オレちゃんが親友としてなぐさめてやるから気にするな!」
悠輝は自身ありげに胸を張っている。そして、張っている胸をドンドンと手で叩いている。
「あ、はははは」
廿月は苦笑いをした。嬉しいけど、勘違いされたことに少し困っていた。
説明会が終わると、ちょうど目的地近くまで着いた。
スリーピィーは手を振りながら、口を開く。
「それじゃ、私はこの辺で帰るとするか。今日はご苦労様。また会える日がくれば」
「ありがとうー。スリーピィー」
「スリーピィーさん、ありがとうございました」
「急な勉強会で申し訳ない。今度プリントしたモノを持ってくるけど……」
「大丈夫、さっき話したことメモにしたから」
「あ、そうなの。確認して良い?」
「どうぞどうぞ」
スリーピィーは悠輝のメモしたモノを読んでいる。
悠輝の筆記は読みやすかったのか、スリーピィーはスラスラと滑らすよう文字を目で追っている。
「うん、確認したけど、大丈夫そうね。それをえーと廿月さんにも渡してください」
「もちろん、はっきーにも見せるぜ。なぁ、はっきー」
「あ、ありがとうございます」
「でも、また今度会えたら、説明のプリント持ってきて、もっと詳しく話すね。もしかしたら伝えてないところもあるから」
「遅くなったけど、この辺で解散ということで」
「本当にありがとうな。スリーピィー」
「ありがとうございます。またきてください」
「そう言わなくても、またいくさ。ありがとう。それじゃ」
スリーピィーはその場を去っていく、廿月達は口角を上げて手を振っていた。
そして、そのまま何でも屋まで歩いていく。




