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25話

 園内のグラウンド。マイクを懲らしめ、廿月と悠輝は安心していた。すると、急にいつもの人間の姿になる。元に戻ったのだ。


 エレフンとウィンピィも、元の性格のまま存在している。


「ありがとう。エレン助かったよ」

「ぼくのすがたでたたかう、はつきにいちゃん。かっこよかったよー」


 廿月はゾウのキャラに感謝を伝える。二人ともニコニコして、話している。


「ウィンピィもありがとうな。おかげで助かったよ」

「すごい、ボクよりも強かった……」

「なにいっているんだ。ウィンピィのからだあってこそだろ。ありがとうな」


 悠輝はウェンピィを褒めて、カートゥーンキャラの頭をワシャワシャとなでまくる。

 

「さて、倒したことだし、保育士達に安全確保して、報告して帰りますか」

「そうですね。あれ?スリーピィーさんは?」

「あ、いない。多分帰ったんだろう。でも助かったな」

「ええ、それでは行きますか」


 彼らが託児所の方へ、軽い雑談をしながら向かう。

 帰りにどこ行こうか相談しながら、園長の方へ向かおうとしていた。





 ――だが、いきなり、マイクが立ち上がる。


 

 マイクの姿は元のクマの姿になっている。





 ゆらりと廿月達に近づき、拳を作る。そして、声を荒げながら、狂気の目を光らせる。


「ふざけるな!」


 マイクは廿月に後頭部目掛けて、瞬間、拳を突き出す。不意打ち攻撃。後ろから脳に衝撃がいき、後遺症になる可能性が高い。卑劣な暴力行動をマイクがしたのだ。


「?! はっきー!!」


「はっははは。どうだこの不意打ちは!」

 後ろに殴られた廿月、何事もなく彼の唇が動く。





「そういえば、俺も一ノ瀬さんと少し見てたんだよね。ヒーロー番組」




「……いや?! 手応えが……」

「確かこんな感じで避けていたな。エレンが『ぱおぱおーん』と喜んでいたよ」



 ――廿月は無傷だ。


 銀髪はゆっくりと振り向き、相手をニラんでいた。


「なぜ?!」

 マイクは驚く、自分の攻撃が来ると予想していたかがわからない。廿月は淡々と答えた。


「わかっていたさ、マイクさんが動けることに。わざと隙を見せたんだよ」


 マイクの狂気な目を、見続ける廿月。

 銀髪の青年も心が燃えていた。


「……全然、当たってねぇよ。俺は、喜呑拳(きのみけん)使いだからな」


 廿月はギリギリで避けていた。相手がまだ動けることを知り、攻撃のチャンスを狙っていた。


マイク「……喜呑拳(きのみけん)ってなんだ?」

廿月「簡単に説明すると合気道とカンフーを混ぜた特殊な武道。師匠から教わったんだ」


 廿月は喜呑拳(きのみけん)で避けていた。


 ギリギリまで避けなかったのは、至近距離で確実に相手を仕留めるため。この距離ならどんな攻撃でも当たる。可愛いゾウさんのポカポカパンチでも。


「まぁ、喜呑拳(きのみけん)は一般知識だから、喋っても能力漏洩にはならない。話してもマイクさんに有利になるわけじゃないから喋った」


「――?! こしゃくな!」

映奏奇譚(デュアルアクション)……」


 黒い舞踏会マスクをかぶる廿月。

 マイクがバカみたいに拳を振り上げる。だが、その腕・拳は廿月の手のひらで止められる。


 カウンターで喜呑拳(きのみけん)を使い、相手のみぞおちに当たった。あんだけしつこいクマのキャラでも、コレはもう耐えられない。


 気を失っているマイク。

 廿月は息を深く吐く。悠輝は見惚れていた、尊敬するぐらい。


「ふぅ……これでもう安心かな」

「……はっきーありがとう、助かって良かった。その技はどこで」


「あぁ、これは師匠から教わった技で……。ほら霧山さんの師匠なんですけど」

「あぁ、霧山さんから教えてもらった、拳法使いの。そこの経由で、はっきーは霧山さんを知ったんだったよな」


「そう。おかげで心と体を鍛えてもらいましたよ。一ノ瀬さん」

「さっきカンフーと合気道を合わせたものと言ってたけど、何かそれとは違う雰囲気だったな」


「一ノ瀬さんだけ、詳しく言いますと、酔った千鳥足の如く、予想不能な動きで敵を惑わせ、攻撃をする体術なんです」

「へーそうなんだ。めっちゃ強そう」


「実際強くて、切り札として使ったり、技のフェイントとして使えますからね。普段使わないと相手をよりよく騙せやすいですからね」


「それは良かった。安心したよ、はっきーが強いことにね。それじゃオレちゃんは倒したことを報告するね」


「強い……」廿月はつぶやく。


 廿月は今まで自分のことを弱いと信じていた。だが、悠輝のその一言に廿月は救われる。


 ――廿月はまた決心する。


「――俺、また決めたよ。一ノ瀬さん」

「また決めたんだな! はっきー。えらいぞ!」


「俺は手の届く範囲でアニメを守りたい、そしてアニメと共に生きる子ども達も守りたい。それが俺の目標」

「……それいいかもな。未来を守る。かっこいいぞ、はっきー」

「俺は今まで『弱い』と信じていた。ですが、一ノ瀬さんの一言で改めました」


 廿月の宣言。悠輝はいきなり彼の頭を触り、「心が強い自分を信じろよな」と笑顔で伝えた。

 廿月の目から透明な体液(なみだ)が出そうになる。



「ほうほう、お疲れ様。お二人さん」

 男性の老人が彼らの前に立っていた。

「あ、宝蓮(ほうれん)さん。すみません、つい暴れてしまって」

「保育士達から、事情はお聞きしましたよ。子ども達を助けていただきありがとうございます」


 ニコリと笑っている園長、続けて話す。


「バイトさん達は能力者だったんですね。それを履歴書に書いていたら、バイト代三倍も与えたのに……」


 廿月はその一言に、目を必要以上に強く丸くしている。


「そうなんですね! 僕ら内緒にしようと思いまして」


「別にアニメを使う能力者自体、そんなに珍しくないので、内緒にしなくても良かったんですよ。むしろそうだったらもっと丁寧に扱ってたのに」


 宝蓮(ほうれん)は申し訳なさそうに頭を下げる。悠輝は猫被りながらフォローをする。


「オレちゃんたちに、そんな優遇しなくても良いんですよ。一日バイトの訳ですし」

「そうなんですね。最近の若い子はえらいのぉ」


 宝蓮(ほうれん)は低い笑い声を発している。とても柔らかい表情で幸せそうなオーラをまとっていた。


「ここには悪い噂が立てられてしまって大変でのぉ…」


「悪い噂って、あの?」

「おい! はっきー!」


「やっぱりご存知でしたか、大丈夫です。悪い噂は単なるデマでね」


「マイクベアーというキャラが暴走しやすいキャラでして、暴走しすぎると美化された人間体になるんですよ……。このまえ運悪く、働いていた人に見つかってしまい、このようなデマを……」


 つかさず、悠輝は話に入り込む。


「そうだったんですね。誰が言ったんです?」


「たしか『桐生炭祢(きりゅうすみね)』という男性でしたね」

「き……桐生炭祢(きりゅうすみね)?! そうなんですね」


 デマを流した張本人は依頼主。悠輝は腕を組み、顔を下に下げている。彼女の血管はグツグツになっている、イライラしていたのだ。


 彼女は『本当かどうか調べてから依頼しろ』と心の中で呟いている。


 しばらく、悠輝と宝蓮(ほうれん)の会話が続く。


「まぁ、こういうのもマイクベアーのせいなので、反省してもらわないと……」


「……反省と言うことは処分てことです?」

「いやいや、そんな残酷なことはしません。反省部屋に閉じ込めるぐらいです。きっと彼もおとなしくするでしょう」


「普通は処分すると、オレちゃん聞いたことあったんですが、宝蓮(ほうれん)さんは優しいんですね」


「普通は処分でアニメキャラは消えなきゃいけないですが、どうも私にはできなくて。考え方が甘いのかな」


 宝蓮(ほうれん)は頭を少しかいている。彼自身、申し訳ないのか、廿月達に目線を合わせない。

「そうだ」と老男性は(ふところ)から、茶色い封筒を2つ取り出した。廿月達の給料だ。


「この後の処理は、私たちに任せてください。それと今日のバイト代です。無能力者だと思ってたので少ないですが……」


 相手に封筒を渡す宝蓮。廿月と悠輝は「ありがとうございます」と言い、悠輝は頭を下げる。


 ただ廿月は「給料が少ない」を否定するかのように、手のひらを左右に振る。相手を疑っていたのに、感謝の給料を払われるだけ嬉しいからだ。


「いえいえ、お金をいただけるだけとてもうれしいです。ありがとうございました」

 廿月は鹿おどしのように、身体ごと、首を深く落としていた。


「そうですよ。オレちゃんも今度、よく働くようにしますから」

「若いのに勤労感謝するのは嬉しいですね。それでは、仕事はこの辺で、おかえりくださいね」


 「はい!」と廿月達は園内から出ようとする。

 宝蓮(ほうれん)は謝罪するように、深く頭を下げ続ける。

 廿月と悠輝も、宝蓮(ほうれん)と同じようにお辞儀をした。


 宝蓮(ほうれん)は倒れているマイクをしばらく見つめている。

「今後もこういうバイトがいると助かるのだが……」





 門が見え、そのまま保育園を後にする。

 託児保育園(シュペルノヴァ)を出てから1分歩くと、廿月達の目の前に、羊のキャラが現れる。


「どうも、お二人さん。少し話したいことがあって」


 近くでスリーピィーが待機していた。

 その後、廿月と悠輝と一緒に歩いて行った。


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