24話
先に攻撃を仕掛けたスリーピィー。ひたすら武器で戦う。
彼が持っているモノはロープ。原作カートゥーンでは、スリーピィーがこれで悪いキャラをコテンパンにしていた。
スリーピィーはロープを素早く投げると、マイクはぐるぐる巻きにされ、身動きが取れなくなる。
「……ぬるいな。ねぼすけヒツジ」
だが、彼はニヤリと笑っていた。
瞬間、ロープはマイクの筋肉によってちぎれる。
軽々しく縄が切れたが、また同じように巻かれた状態になっていた。
「は?! こんなの聞いてない!」
「どんどん、力を入れてもいいよ。まぁ、また同じような結果になるけどね」
「く、しまった。このままでは……」
「どんどんいくぞ」
スリーピィーは、どんどん攻撃を仕掛けていく。身動きが取れないマイクに蹴りやパンチを繰り出す。
マイクが体に制限がある中で、攻撃しようとすると、羊のキャラは瞬間移動する。相手の攻撃を避けていた。
そして、マイクの顔面に拳を乗せる。
強打したのか、少し鼻から血が垂れ、憎しみや険悪が入り交じれた顔をみせる。
「なんでお前の攻撃が効いているんだ?」
「さぁな。私が――」
スリーピィー、『アニメキャラだからかな?』と言おうとしたが、話すのをやめた。
相手はアニメキャラだと自覚してないからだ。
内容や知識の無駄遣いだと考え、違う言い方をした。
「とっても可愛い可愛い羊だからじゃない?」
口だけ口角を上げているスリーピィー。
マイクは何言っているか理解不能だった。
「言っていることがわからないぞ!」
「なに冗談だよ。冗談」
スリーピィーは楽しそうな声を出し、また戦闘態勢に入る。
クマのキャラも、どこから攻められてもいいように、構えていた。
二人のキャラは集中している。両者、神経をすり減らしていた。
すると、ロープがどんどん解けていた。どうやら時間制限があるみたいだ。
マイクは美化された顔から、白い歯を浮かべる。
一方、廿月達は精神を整え、集中させていた。
「一ノ瀬さん。この技なかなか難しいですね」
「あぁそうだな。あともうちょいでなんとかなりそうだけど」
目をつぶり、新たな技を手に入れるために意識する。
潜在から呼びかけるように深呼吸。精神統一をした。
銀髪の青年達が、能力を開花する寸前、マイクと戦っているスリーピィー。
マイクは体を傷つきながら戦う。
すると、一歩も動かない廿月達を見て疑問している。
「なんでこいつら動かないんだ?」
「きっと、お前と戦って疲れたんだろ?」
気の利いたことを話すスリーピィー、マイクはいいこと聞いたのか攻撃を備える。
「ほう、だとしたら。このまま攻撃してもいいよな」
一瞬、まぶたを閉じるマイク。唇を動かした。
「乂奏牙――」
マイクは心を白にする。集中するのは廿月と悠輝の二人だけ。
呼吸を整えて、手を前に出し、詩のような言葉を発する。
「暁、狩る本能。黄昏、護る理性――」
マイクの周りにシャケの大群が現れていた。小さい魚だが、ざっと二百匹はくだらない。
見た目はシャケだが、魚雷のようだ。
「……! よせ!」
スリーピィーは止めようとする。だが心の中では安心していた。
だいぶ髑髏奇譚が、開花するまでの時間を、稼いだからだ。
『たぶん時間的には稼げた。あとはあの子達次第で覚醒する』と心の中で思っているスリーピィー。
だが、廿月と悠輝はまだ集中していた。
目を閉じており、シャケの大群に気付いてない。
「あと……一歩手前なんだけどな」
「急がないと」
「――――くらえ!」
そのシャケは一斉に集中砲火する。狙いはあの二人だ。
爆発音と共に狙った場所へ、何百匹のシャケが襲う。
マイクは高笑いしていた。
「ひゃははっは! 何かわからないけど、止まっていたら攻撃するに決まっているだろ! まるでヒーローもので、変身中に攻撃にしない怪人じゃないのさ!」
敵の攻撃により土煙が舞う。彼はにやりとしていた。
だが、現れたのは、エレフンとウィンピィの二体だけだ。
「なに?! あいつらはどこへ!」
「知っているか? 最近のヒーローは変身中に攻撃されても避けて変身するんだぜ。この前チラッとテレビでやっていた」
ウィンピィがオラオラと喋る。
だが、キャラの性格が一致しない。まるで別人のようだ。
「目の前にいるのが、俺達だよ」
さっきまでとは、口調が唐突に変わる子どものゾウ。
マイクベアーは頭がショートし、呆然としていた。
「ど、どういうことだ?!」
「髑髏奇譚。そのおかげで俺達は助かった」
「つまり、オレちゃん達は、アニメキャラになったわけ」
ニヤニヤと口角を上げているオオカミ。中身は悠輝だ。
髑髏奇譚とは、アニメキャラと入れ替わる技。アニメキャラの姿を借りて、戦うことができる。彼らはちゃんと開花したのだ。
能力覚醒した後、悠輝が地面を掘り、攻撃が止むまで、土の中に入っていた。
集中砲火が終わり、地面から飛び上がったのだ。
悠輝は得意げに髑髏奇譚のことを話す。
廿月は「うーん」と、うなりながら、気になったことを質問する。
「一ノ瀬さん、それ、敵にバラしていいんですか?」
「あ……。しまった! てか、はっきーも言ってる!」
「……! ああぁぁぁぁぁぁ! 興奮して言っちゃった! 敵に塩送っちゃったー!」
手をバタバタさせる廿月。だがマイクは腕組んでキョトンとする、理解してないようだ。
「ゴースト……? 何言っているんだ? 今って涼しいけど7月だろ? ハロウィンじゃない」
マヌケ顔のマイクを見ている二人。ゆっくりと戦闘体制を整えて構えていた。
「……意外とわかってないみたいですね」
「かわいいおバカちゃんで助かったな。はっきー」
「なにぃぃ! このボクがバカだと!」
「そういうこと。それじゃ攻撃させてもらいますか」
「戎具奇譚」
廿月はゾウのマイクを出現させる。そこから形が変わっていく。まるでハンマーのような打撃武器へと変化した。
「ボウボウ」
彼が声を出すとハンマーが燃え上がり、マイクベアーの方へ向かう。
廿月の能力は音によって属性が変化し、声を出すことでも効果はあり、炎、氷、電撃……なんでも変更できる。
しかし、デメリットもある。属性ごとについた時間は短く、一属性辺り、長くて五分程度しかもたない。それだったら属性なしで殴った方が良い。
属性を出した理由はあった。廿月にとって一刻も早くマイクベアーをこらしめたいと考えている。
そして子ども達やアニメキャラを助けたい気持ちが強く、炎属性で強化した。
廿月はひたすら炎をまとっているハンマーで、ボコスカと相手を殴る。
マイクベアーの体は燃えてないが、火傷するぐらいのダメージがどんどん加速する。
――――攻撃が効いていた。
「はっきー。オレちゃんも協力するぜ」
悠輝はつかさず持っていた自分のマイクを取り出す。
「これではっきーを応援するよー」
彼女はマイクに息を通す。だが、マイクは具合が悪くなった。
それは美声とは言いがたい歌声で、音程が外れている。
悠輝は音痴だ。歌えば歌うほど相手の気分が悪くなる。
もちろん、マイクベアーにもそのダメージが与えられている。
とても苦しく、吐き気もドンドン強くなる。
髑髏奇譚によってアニメキャラになった影響か歌声の攻撃が通り、耳の負傷がひどくなる。
「うわ……。やめろ……。苦しい……でもなんでダメージが」
マイクはもがき苦しんでいる。吐き気もするぐらいえづいていた。だがしかし、廿月はなぜか無事だった。
無事なので、ハンマーで攻撃し続けていた。
クマのキャラは質問する。どうして音痴な歌声に拒否反応しないのかを。
「な、なんで効かないんだ……」
「なんでだろう。友達が一生懸命、俺のために歌っているからかな。まぁ、自分音程はずれている曲も好きだから元気になれるんだよ」
「なんだその理論!」
「応援に理論なんて考えないけどな」
廿月はマイクに火炎のハンマーで攻撃する。さっきとは打って変わって、しばらく攻撃が効いていく。永続しているみたいだ。
「ぐはぁぁ! 何で効いている!」
マイクは脳が理解を拒んでいる。
彼の頭がおかしくなるぐらい、思考が追いつかないことだらけで、絶望していた。
「ふふふ」と悠輝が廿月の代わりに喋る。
「それはなんででしょうかね? わかったら景品でもあげるぜ。南国旅行チケットでも良いけどな」
「……そうかわかったぞ。ボクが優秀すぎて、頭がキャパオーバーしたんだ。天才すぎて相手の攻撃が効くようになったんだ!」
マイクはよくわからないことを発言すると、悠輝は頭をかきながら呆れる。
アニメキャラは自身がアニメキャラだとは知らない。脳が混乱して、おバカちゃん発言をしてしまう。
「ははは、全然違う。やっぱり面白いキャラだな。くまさんは」
軽くからかうように声を出している悠輝。クマのキャラの顔には血管が浮き、うなって威嚇する。
廿月は相手を見下すように話した。
「そんな長く喋らなくてもいいぞ? 時間は待ってくれるから」
「くっくっく」とマイクは笑う。勝ちを確信しているみたいだ。
不気味さがあり、目を少し細め、白い歯がアニメキャラになっている二人に見えている。
「……なんで的外れな解答したかわかる? 攻撃の時間稼ぎだからさ」
すると、マイクと周りにはシャケの大群がまた出している。今度は千匹を超えていた。
マイクのシャケ魚雷が向かっていく……が、それは不発に終わる。
なぜなら廿月は華麗に避け、悠輝は地面を掘り、土で防御していたからだ。
悠輝がエッホエッホと土をかいていると、偶然にも鉄の板が埋まっていた。それも使い、完全に攻撃が防がれた。
「そんなことわかっていたよ。時間稼ぎだってことは」
エレフンになっている廿月は目をつぶる。そして、唱える。確実に勝つために。
「映奏奇譚」
エレフンの体から仮面舞踏会のマスクが現れる。
続けて、ウィンピィ姿の悠輝も口を開く。相手の目をしっかりとみる。
「映奏奇譚」
ウィンピィの首にファーが巻かれる。すぐ動けるように走る体制をしている。
廿月はエレフンのからだで走りながら、声を出していく。
「ぱおーーん!!」と廿月は雄叫びをあげた。すると地面が少し揺れ、マイクの体制が崩れる。
「ありがとう! はっきー!」
つかのま、悠輝はマイクベアーの方へ使う。
ウィンピィの鋭い牙を使い、噛もうとする。マイクは腕で防御……。だが、この行動はフェイントで、悠輝は牙で地面を掘り、謎に出てきた小さいトランポリンを取り出す。
それをウィンピィになっている悠輝の頭まで持ち上げる。ゾウの廿月がジャンプし、その道具を使用して、また高く飛び上がる。
『廿月の攻撃』が本命だった。
彼は人間になっているクマキャラに向かいながら落ちていく。
廿月はエレフンの体で、限界まで息を吸い込む。
三秒、呼吸を止めた後、すばやく声を吐き出した。
「コラァァァァァァ!!」
声の周波数が、擬人化したクマのキャラ全身に、響かせる。言葉のエフェクトが形となり、ぶつけたような衝撃。
彼の攻撃はマイクを使わなくても音の能力は使える。ただ、戎具奇譚は能力強化もできため、道具を使うときもある。
今回はつかわなくても勝てると見込んで、廿月は原作再現にした。
エレフンの原作絵本だと「コラァァァ」で悪い奴らをこらしめていた。その再現だ。
「おっと、今度はオレちゃんの番だ!」
大きな口を開けて噛み付こうとするオオカミ姿の悠輝。
マイクベアーの腕に噛み付き、その後一回転して、クマのキャラの額に脳が響くような頭突きをした。
その隙に廿月がまた大声を出していく。
「コラァァァァァァ!」
また、体が響く。もう相手の体は限界が来ていた。二人の攻撃で、意識を失いそうになるマイクベアー。
少しずつ体が動かなくなり、廿月や悠輝を倒そうとする気持ちも消えていく。
「ぐは……」
『ドスン!』とそのまま、マイクは後ろに強く倒れる。
廿月達はなんとかこらしめ、無事子供達やアニメの保育士達を守った。
二人は地べたに座り、ほっとしている。
お互いの顔を見て、嬉しそうに目を細める。




