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22話

「な、なにかやばい予感が! 一ノ瀬(いちのせ)さん! 俺、さきに出ますね」

「もちろんだ。はっきー。オレちゃんは最終確認してから向かう。それまで時間稼ぎしといてくれ」


「わかりました」と銀髪の男性は急いで外に出る。


 悠輝(ゆうき)は園長からもらった紙をみて、最終確認をしている。

 しかし……。


「……あれ? そこの棚のスコップが足りないよな」

 彼女は焦っていた。数分間は倉庫掃除が終わらない。だが、仕事だけは完了させたいと考えている。

 

「はっきー、すまない。軽く時間がかかりそうだ。ちゃちゃっと終わらせるからな!」


 緊急事態だが、彼女は急いで倉庫仕事の居残りをする。

 金髪の女性は廿月(はつき)を信じるしかなかった。


 

 

 時が止まりそうな緊迫感。グラウンドで二人のキャラがにらみ合っている。

 園児達は色々混乱していた。

 急に泣き出して逃げる子ども、興味津々でマイクを観察する子ども。ただ呆然している子もいた。


 「よう、曲がった思考の保育士。お前はぼくが正してやるよ」


 肉体美が目立つ大男になったマイクはレートリオンの方へ向かう。

 犬のキャラは心底焦っていた。仕事仲間が暴走したからだ。

 

「おい、何しているんだよ」


 ただ立ち止まっているしかできないレートリオン。

 近くにいたちゃちゃとキッザは、子ども達を守りながら対立している保育士の様子をみている。

 

「どうしたのレートリオン! マイクさん!」

「ぴ、ぴょん!」

 

「お前らまとめて、ぼくがこらしめるからまっていろ!」

「く、こうなったら……。ちゃちゃ! キッザ! お前達は園児達と逃げろ。ここは俺様がひきとめる」


 レートリオンはなんとかしようと考えていた。

 そのとき、「まってください! ここは僕が!」男性の声がグラウンド中、響く。


 廿月(はつき)が現れたのだ。


幻想奇譚(トゥーンアクション)!」

 素早く声に出し、エレフンが現れる。


 ゾウさんは突進し、擬人化したマイクにぶつかった。

 ドスンと倒れるマイク。地面の上で横になる。


「やったよー」

 エレフンは嬉しながら、廿月(はつき)の方に急いで戻る。


 銀髪は曲がった正義のクマの様子を見ながら、レートリオンに向かって声を出す。

 

「大丈夫ですか? みなさん」

「お前はバイトの……」

 

「早く、子ども達を避難させて逃げてください!」

「……わかった。ちゃちゃ! ギッサ! 俺様と一緒に子どもを保育園に避難を!」


 茶碗のキャラとウサギのキャラは了解したのか、返事をした。

 エレフンは不思議そうにレートリオンの姿をみている。


 偽ライオンの犬キャラはしゃがんだ。小さなゾウに目を合わせて話しかける。


「お? お前は逃げないのか?」

「うん! ぼくもこらしめるから、だいじょうぶ。ワンちゃんたち、がんばってー。わんわんー」


 エレフンは応援しているが、レートリオンには侮辱に聞こえた。

 

「……オレ様はライオンなんだって。ガオーだぞ!」

「だったら、ガオーワンワンだー」

「……はぁ」


 五歳児の言動に呆れて、なにも言えないレートリオン。

 立ち止まっているワンちゃんにたいして、ちゃちゃは声を上げる。

 

「そうしている場合かー!」


 茶碗の女の子キャラは突っ込んだ。喉がつぶれないように調整しながら口を動かす。


「そうだよな。おいみんな! いますぐオレ様達の方へこい!」


「ちゃちゃ先生と一緒に行きましょう!」

「ぴょんぴょん! ぴょん!」


 保育士三人は素早く子どもを建物に避難させるよう命令する。


 それをみかけたマイクは怒りに燃えている。素早く立ち上がった。


「お前らなど。子ども達を守れない! ぼくが守るから下手なことするな!」


 クマキャラの言葉に違和感を覚える銀髪(はつき)

 

「マイクさん。子どもを守ると言っていたのに、全然守ってないじゃないか」


「……たかがぽっと出のバイトさんになにがわかる!」


「ぽっと出のバイトでもわかるぐらいに、マイクさんがひどいことをしているのは、わかるんですよ! よく見てください」


 マイクはもう一度子ども達の表情を確認。園児達はおびえている。


「こわいよ。ままー」

 三つ編みの女の子の体が震えている。こわくて一歩も動かなかった。


 「えーん!!」

 男の子が泣き出す。他に泣いている子もたくさんいた。

 

「こっちだ早く!」

 レートリオンは急いで号泣している子達を連れて行く。そのキャラクターの目は真剣になっていた。


「子ども達が怖がっている……?」


 マイクは突如笑い出す。自分の罪を認めたのか。いやちがう、ドスがきいた笑い声だ。

 彼は園児(ひがいしゃ)達の表情を見てもなんとも感じていなかった。


「なんだ、ぼくのような聖人を怖がるほどなんて、この子ども達も曲がった思考の持ち主だったんだな」


 保育士のクマは曲解した解釈で子ども達をみていた。

 廿月(はつき)の目が鋭くなる。心が燃えていた。

 感情的になりそう、いますぐ懲らしめなけらば――と銀髪は考える。


 マイクは口角を上げる。不気味な笑みだ。


「許せん。お前らを子どもなど思わん。所詮、捨てた親の思考を受け継いでいる人間の劣化コピーだ」


 歪んだクマの発言に廿月は我慢の限界。口を開く銀髪。


「劣化コピー? おい! マイクさん!」

「なんだ、バイトさん」

 

「いま、この子ども達をみて、コピーといったな。この子ども達は生きているんだよ……!」

 

 廿月(はつき)は弟の事件を思い浮かべる。さらにマイクによっておびえている園児達の悲しそうな声も。

 ……彼は訴えた。

 

「生きることを侮辱しているんじゃねぇぞ!」


 廿月(はつき)の心の奥底からの怒り。大声なのかエレフンはビクッと体を震わせていた。


「はつきおにいちゃん……」ゾウさんはつぶやく。


 その訴えは狂ったクマの前では響いてなかった。


「その前にぼくのことを侮辱しているんじゃない!」


 廿月(はつき)はどんどん怒りが上がっていく。ヒートアップしていた。

 

「生意気いうな。ちいさな命を軽く見ているやつなど、人じゃない!」

 廿月(はつき)はマイクの方をぎらつきながら見つめる。人を襲うヒグマを狩る狩人のようだ。



「ここからはプライベートの時間だ! ワーカーホリックな曲解正義のクマさんは俺に勝てるかな?」


 

 廿月(はつき)達は敵に向かって攻撃を仕掛ける。

 銀髪の男は「戎具奇譚(ウェポンアクション)」と声を出し、ゾウのモチーフとしたマイクを出す。

 

「これで、マイクさんを倒す!」

「ふ、やれるモノならやってみろよ。バイトさん」


 廿月(はつき)は腹式呼吸で息を整える。数秒後、クマのキャラに一発お見舞いした。


「ぱおーん!!」

 

 荒々しい声、廿月(はつき)は手応えを感じた。エレフンも勝利を確信している。


 だが、マイクベアーは無傷。何も攻撃を受けてないようだ。


「……それがどうした? カラオケ大会なら半月後だ」


 したり顔で銀髪の男性の顔を見ているマイク。廿月(はつき)は少し絶望していた。

 

「嘘だろ……」

「さて、ぼくも攻撃しないとな」


 マイクは攻撃を仕掛ける。まずは一発パンチを繰り出す。強化した肉体の体重をのせて。

 廿月(はつき)は両腕を使って攻撃を防いだ。


「はつきおにいちゃん!」

「エレン。だいじょうぶだ気にするな」


「ほう……ならば。これはどうかな?」


 最初は顔面、次に横腹、足、喉。

 どんどんコンボを決めるマイク。

 止まらない連続の打撃。一瞬怯むほどの重いパンチだ。

 銀髪の男性はひたすら防御している。


 廿月(はつき)は気がつく、殴るタイミングは固定だと。

 喉を狙って不発に終わったら、正面に攻撃。

 顔面を殴ったら必ず横腹を狙う。

 しばらく様子を見て、反撃を考えている銀髪男性(はつき)


 

 だが、マイクはそれを見抜いていた。

 パターン攻撃していたら、絶対、策にハマると。


 マイクは顔を狙った後、横腹を狙わず、すぐさま喉を攻撃。


 廿月(はつき)はハッとする。相手の思惑通りになってしまったと。

 だが、銀髪はサッと横に避ける。保育士のパンチは不発に終わってしまった。


 「いまだ!」と廿月(はつき)は力を込めて、相手のみぞおちを狙う。

 体を突くように手刀を使って攻撃。反動で少し後ろに下がるマイク。


 ……美形になったマイクの顔をみても、まだ手応えなし。

 平気な顔をしている。手刀が効いてない。



 その瞬間、廿月(はつき)の体を捕まってしまう。


「このまま握りつぶす!」


 擬人化したクマは銀髪を握りつぶそうとしていた。


「がっ!」


 廿月(はつき)の苦しそうな表情。いまにも骨と筋肉が破壊されそうだ。

 

「やめろー。はつきにいちゃんをはなせー」


 エレフンは飛び出し、マイクの後頭部を狙う。

 ゾウさんは子どもの力でポカポカ殴った。


 攻撃が効いたのか、マイクは頭を抑える。

 一瞬廿月(はつき)に攻撃するのをやめた。


 クマのキャラはエレフンの手を掴み、ジャングルジムの方面へ強く投げる。


「雑魚が」


 かなりピリピリしているマイク。

 次の攻撃に備え、エレフンの方へ向かった。


 ゾウさんが攻撃されたのを見た廿月(はつき)は、急いでマイクの背中に一発殴る。


「これ以上、エレンを攻撃するな……」

「……しらねぇよ。バイトさん」


 廿月(はつき)を掴み、反対側を向かせる。

 銀髪の腹に鉛のように重い蹴りを入れるマイク。


 力が強かったのか、エレフンと同じ方角へ飛んでいく。 

 一気に距離を取られる廿月(はつき)の姿。


 ジャングルジム内に入っている二人。廿月(はつき)、エレフンはピンチに陥っている。


 マイクは廿月(はつき)を追い詰めた。エレフン達にに能力を解放しようとしていた。




「オレちゃんの親友なにをするんだ!」




 その時、悠輝(ゆうき)が助けてくれた。

 彼女はロングソードでマイクを斬ろうとする。

 一瞬の隙をつくも、マイクは、間一髪で避けてしまう。


「ボクがいるぞ!」

 

 悠輝(ゆうき)の反対にウィンピィが現れる。

 オオカミの牙が鋭く光った。


 マイクの腕を力一杯、噛みしめる。


「ぎゃぁぁぁぁ!!」


 クマの擬人化は叫ぶ。

 怯んでいる間に悠輝(ゆうき)は銀髪の方へ向かった。


「すまなかった。遅くなって」

一ノ瀬(いちのせ)さん!」

「ゆうきおねえちゃん、ありがとう!」


 悠輝(ゆうき)は二人をジャングルジムから取り出す。

 

「倉庫の紙を見ていたら、スコップの数が足りなくてさ」

「少し仕事していたんですね。一ノ瀬(いちのせ)さん、すごいなー」

 

「あくまでもバイトだからな。しっかり仕事はやらないとさ。アイドル活動にも響くぜ」


 悠輝(ゆうき)はまぶしい笑顔で廿月(はつき)達に話している。

 彼女達が会話している間に、マイクはオオカミを離す。


「何、いちゃいちゃしているんだよ!」


 獲物を仕留める寸前の表情をしているマイク。

 その姿に悠輝(ゆうき)は話しかけた。


「いちゃついているんじゃない、仕事報告だ。まじめにやっているんだよ! いくぜはっきー! 映奏奇譚(デュアルアクション)!」


「そうだ、映奏奇譚(デュアルアクション)


 悠輝(ゆうき)は頭にオオカミのピアス耳をつけて、首にファーを巻きつけた。オッドアイになる。

 廿月(はつき)も目に黒い舞踏会マスクをつけて、マントを羽織り、オッドアイになった。


「さっさとマイクさんをこらしめて、園長さんに報告だ!」


 悠輝(ゆうき)たちは一斉に攻撃を仕掛ける。目にも止まらぬ速さ。


映奏奇譚(デュアルアクション)!」


 男女の声が重なる。銀髪は絵本みたいなフォント。金髪は海外のようなポップのフォントが背後から流れている。


 廿月(はつき)は目にも止まらぬ鋭い突きをする。

 悠輝(ゆうき)は単なる蹴り技を披露した。


 重い攻撃。さらに戎具奇譚(ウェポンアクション)で武器を持つ。


 叩いたり、切ろうとするも、マイクは受け止めた。

 二人は攻撃をするも全く効いていなかった。


「嘘だろ……! 今まで映奏奇譚(デュアルアクション)で強化してから、効かなかったモノはいなかった」


 廿月(はつき)は体を震えている。ほとんど無傷でいたものは少なかったからだ。


「だったら、ぼくが最初かな。景品もらいたいよ」

 

「オレちゃん達、いままでそんなことはなかったのに……。いや、未遂が多いか」


 悠輝は考え、つぶやいた。


「さっきまでウィンピィの攻撃は効いていた。なんでだ」


 彼女が謎を推理しているとき。廿月(はつき)は絶望している。


「どうすれば……」

 

「何かお困りのようだね」


 誰かの声が聞こえる。


 すると、眠たそうな目の羊のキャラが廿月(はつき)悠輝(ゆうき)の前に現れた。


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