18話
倉庫内では日が当たっているも少し暗く、ものが溢れかえっていた。
珍しく窓があり、ガラスごしの風景をみたら、子どもたちが楽しそうに遊んでいる。
園長は倉庫の入り口の前で廿月達の話しかける。
「えーと今からやる内容は把握してますよね? 明烏さん」
「一応把握はしてますが、細かくは……」
園長の懐から紙をとりだした。
「そうですね。この紙に書いてある指定されたものを取り出し、不必要なものはしまう。それだけですね」
そのまま話し続ける宝蓮。廿月と悠輝は黙って聞いていた。
「終わったら、私に報告して解散しても良いですからね、それではよろしくおねがいしますね」
倉庫のドアを閉める園長。二人はお互いの目を見て話し合う。
「なんだか、そんなに怪しくないよな。親友」
「……そうですね。やっぱり杞憂だったんだよ」
廿月は気のせいじゃないかと予想した。しかし、悠輝は腕を組んでいた。表情が疑っている顔だ。
「でも何か引っかかるんだよ。怪しくないからこそかな」
「うーん。少し様子見ですね。」
「まぁ、『なんにもなかったですよ、大丈夫』とあいつに言えば依頼完了だから、一生懸命働いて無事に帰ろう」
少しぶっきらぼうに話す悠輝。よほど、あの依頼主のことが嫌いのようだ。
銀髪の男性は「うーん」を声を出している。何か考えがあるみたい。
「一ノ瀬さん。どうします? エレン達だして手伝いますか?」
「そうだな……。誰もいなさそうだし。能力出してもよさげだな」
「能力のこと黙って働いてますからね。それでは」
「幻想奇譚!」
廿月は力強く言葉を吐き、能力を発動させる。
インクが現れ、どんどん具現化していく。心奪えるような見た目のゾウの姿が、彼らの目に映る。
「こんにちは。はつきおにいちゃん、ゆうきおねえちゃん。きょうはなにするの?」
ゾウさんは彼らに向かって質問を投げる。銀髪の男はあいさつをしてから返答した。
「こんにちは。今日は倉庫掃除をするよ。エレンも手伝ってくれるかな?」
「わーい、そうこだー。たんけんしたいなー」
「ダメだよ、エレン。俺たちは仕事しないと」
「えー、たんけんしたいー」
床に寝そべり、「わー」と暴れるエレフン。まるでちいさな怪獣のようだ。
廿月は微笑みながら、優しく注意する。相手をあやすように口を開いた。
「一生懸命働かないと、お金がもらえなくて、お菓子やおもちゃも買えないんだよ?」
「それはいやだー!」
まだ体を大きくバタバタさせているエレフン。廿月が最後の一手を口に出す。
「それに、エレンはヒーローになりたいんだよね。ヒーローは困った人を助ける。だったら一緒に手伝ってくれるかな?」
「うーん。そうだね。ぼくは、よいこのヒーローだから、がんばるよ!」
絵本のゾウさんは納得したのか、立ち上がり、廿月達の手伝いをすることに決めた。
廿月の口元が緩んでいた。とてもうれしそうだ。
「偉いぞ、エレン。それでこそ俺の憧れているヒーローだ」
「流石だな、はっきーは。オレちゃんも出しますか。幻想奇譚!」
彼女が能力を発動させる。海外アニメ調のオオカミが登場した。
具現化したウィンピィはいつも通り、おびえている。そして倉庫内を見渡す。
ますます、おびえるオオカミのキャラ。彼は話しかける。
「うー、ここ暗いよ」
「大丈夫だウィンピィ。若干暗いが、オレちゃんがいるから怖くないぜ」
「そう言われても……」
それでも心配するウィンピィ。エレフンは二人に近づき、オオカミのキャラに安心する言葉を投げかける。
「ウィンピィくん。ぼくもいるから、こわがらなくてもいいんだよ。それにはつきおにいちゃんもいるから」
ゾウさんの発言は、心安らぐような優しい言葉だ。廿月も同じく声をかける。
「そうだよ。一緒に頑張ろう」
みんなが見守る中、オオカミのキャラクターは静かに決断をする。
「うーう。みんながいるなら、しょうがない。ボクも手伝うよう……」
ウィンピィはしょうがなく彼らの手伝いをすることになった。
倉庫の中はシャベルやゴザなどの道具がはいっている箱があり、それが無数にある。
彼らの仕事は、今後保育園で必要なものを取り出し、不必要なものをしまうシンプルな仕事内容。
だが、廿月達は軽く頭を抱えていた。
「た、高すぎるだろ……」
「すごいぞう! ぼくのしっているキリンさんより、たかーい!」
エレフンと廿月は驚愕していた。
倉庫内は広く、はしごはあるが、廿月達の身長よりも高い棚がずらっと並んでいる。
廿月は高すぎる棚を見て少し絶望していた。
悠輝は銀髪の彼に提案を出す。
「うー、どうすればいいんだ。ユウキ……」
「そうだがウィンピィ。この棚、高いな……。そうだ! はっきー。能力を使っていけるか?」
「映奏奇譚でってこと? いいですよ」
「映奏奇譚」
簡単に映奏奇譚を発現させる廿月。彼の目がオッドアイになり、仮面会でかぶるようなマスクが現れた。
彼は楽々と荷物を整理する。空を飛べるし、力も強くなっているから、倉庫作業が簡単になったからだ。
「よいしょ! 次良いですよ」
「ありがとうな。はっきー」
「お安いご用ですよ」
淡々と作業している二人。あと二割片づいたら仕事が終わりそうだ。
廿月は映奏奇譚を解除する。
「なんとか簡単に終わりそうですね。一ノ瀬さん」
「あぁ、そうだな。はっきー。あとは下段棚の整理で終わるから、しばらく使わなくて良さそうだ」
「これも、はつきおにいちゃんたちのおかげだね」
「いやいや、エレフンも手伝ってくれたからだとおもうよ。ボクも頑張った方だけど」
「はっははは。オレちゃんからしてみれば。みんな頑張ったからさ。早く終わらせて依頼主に報告しよう」
腕を組んで笑っている悠輝。順調に進むので、上機嫌のようだ。
突如、ドアをたたく音が聞こえる。二人は慌てて、能力を隠す。
倉庫のドアから現れたのは、熊みたいなアニメキャラだった。
彼は緑のオーバーオールを来ている。見た目は成人男性キャラのようだ。
「やぁやぁ、お仕事ご苦労様です」
「え? クマみたいなキャラが現れた」
軽く驚いているのか、目がまん丸になっている悠輝。
「ははは、たしかにぼくはクマですが、りっぱなシュペルノヴァで働いているものですよ」
廿月は拳を作り、ポンと手のひらにのせる。納得したみたいだ。
それを聞いて申し訳なさそうに頭をさげる悠輝。
廿月はクマのキャラクターに対して、話しかけていく。
「あー、働いている方なんですね。名前はなんて言いますか?」
「ぼくはマイクベアー。気軽にマイクって言ってね」
「マイクさん。この保育園では色んなアニメキャラが働いているんですね」
「ええ、ここではぼくみたいな保育士10人もいますから」
二人は驚愕した。そんなに多いとは思わなかったからだ。悠輝は勢い乗って話を割り込んできた。
「結構多いな、びっくりしたよ」
「よく言われます。ところで君たちはなんで倉庫掃除バイトを選んだんです?」
「それはえーと」
悠輝が考え込んでいると、廿月はつかさず会話のフォローした。
「僕たち、本業は何でも屋で働いているんです」




