17話
悠輝との会話が終わったのか、園長は銀髪の彼に目線を合わせる。
「そういえば、あなた達の名前でひとつ気になったことがありまして、とくに明烏さん」
「なんでしょうか?」
急に呼ばれたのか、少し体がビクッと反応した廿月。
「『廿月』で『はつき』さんと言えばいいんですかね? たしか『廿』の漢字は『廿日』しか使ってはいけなかった気がしますよ」
「えーと、これは両親がつけたもので、本当は廿日という名前だったんです。だけど、母親が間違えて『廿月』にしてしまいふりがなも『はつき』になったんです」
廿月は自分の名前について解説する。悠輝はそれを聞いて、驚愕していた。
「え?! そうなの?! しらなかったぜ」
「そうそう」と廿月は肯定。説明を聞いて、クスクスと笑い出す宝蓮の姿。
「ははは、そういうわけですか。なにせ、あなたさまの名前は珍しかったですから」
「それはよく言われますね。よく甘月と間違われます」
「そうですよね。私もそっちと間違えました」
園長と話している廿月達。白い倉庫の場所から少しずつ近づく。
楽しく喋っていると、アニメキャラが目の前に現れた。
「お! お前らが倉庫掃除を手伝うバイトか。よろしくな」
ファー付き上着をきているライオンみたいな絵本キャラが、やってきた三人に話しかける。
廿月は園長に質問した。誰かわからなかったからだ。
「えーと、このキャラは?」
「私の保育士たちです。ここではアニメキャラにも働くようにしてまして」
彼らは納得し、軽くうなずいていた。
「へー、アニメキャラが働くの良いですね」
悠輝は一言を声に出す。
廿月も反応した、彼にとってもアニメキャラが毎日働く珍しいと感じたから。
「そうなんですね。珍しい」
「そんな珍しくないですよ。別の保育園でもアニメキャラを使って働かせていますから」
園長は、にこやかに口を動かす。「へー」と廿月の口から言葉が出た。
「てっきり、コラボのときしか働かないと思っていました」
銀髪の彼は今まで勘違いしていたことを告白する。それを笑いながら受け止める宝蓮。
「そう勘違いする人は少なくないのでわかります」
宝蓮はアゴを手で押さえる。
「そうなんですね、ありがとうございます」
彼は感謝の言葉を伝える、目の前のアニメキャラに向かって話しかける廿月。
「ところであなたは」
急に降られたのでキョトンとしているライオンのキャラ。その後、彼の口が開く。
「オレ様か? オレ様はレートリオン。立派なライオンさ」
彼はライオンと名乗るが、よく見るとイヌ科のような見た目をしている。まるでゴールデンレトリバーのような見た目。
それについて怪しんでいる金髪の彼女。
「本当にライオンか? まるで犬みたいだけど」
悠輝はジト目でレートリオンの方を向く。
「そうだ! 断じて、ゴールデンレトリバーではない!」
胸を叩いて犬じゃないと自称するレートリオン。
「何言っているの? あなたは犬じゃない」
すると、誰かがこっちへやっていく。声の姿は特徴的で、ご飯が乗っている茶碗が喋っているのだ。
「ちょ、はんちゃ! なんていうことを言うんだ!」
犬のキャラは『はんちゃ』というお椀のキャラに突っ込んだ。
「だって、ほんとのことでしょ?」
はんちゃは腕を組みながら、犬らしいキャラと対話する。
「オレ様は! 心の奥までライオンだ!」
「こんな威厳のないライオン初めて見たよ。レートリオン」
茶碗のキャラはエセライオンに対して話している。
「ぴょん」
となりにいたウサギの男の子は相づちをうつように声を出した。
「お前もかよ……ギッサ」
ガックリと肩を下げるレートリオン。そのしょぼくれた姿なだめるように、銀髪の男は声をかける。
「……まぁ、そういうときもありますよ。うさぎさんのいった通りです」
「簡単に流しているな……ってなんでこいつのいっていること分かるんだよ!」
「それは……、長年の勘です」
「お前若いだろ! おじいちゃんぶるな! 年配の人を敬え!」
エセライオンは怒鳴るように叱った。それを悠輝は割り込むように言葉に出す。
「まあいいじゃないかよ。それじゃオレちゃん達は倉庫に行ってくるから、ワンちゃん達は子どもの面倒頑張れよ」
その一言にイライラしているレートリオン。目をガチガチに開いている。
「犬扱いするな!」
彼女に対してまた大きな声を出す。その直後、深呼吸をし、心を落ち着かせる犬のキャラ。
「……だが応援してくれたありがとうな。怒鳴ってすまなかった。子どもの面倒はしっかりみるから安心しろ!」
「またね。バイトさんたち」
「ぴょんー」
彼らは手を振りながら、子ども達のいるグラウンドへ向かう。
悠輝が話を振ってきた。心配している声のトーンだ。
「あのアニメキャラ達も働くってすごいことですね。なんだか癖のありそうな性格で」
「そうみえます? でも私がなんとかしているので、どんなキャラでもある程度働けるようにしてます」
「ふーん。頑張っているんですね」
「アニメキャラが働くことによって、子ども達も喜びますからね」
「はぁ……」と納得している悠輝の声が漏れた。なんだか歓心している声だ。
「そういう狙いが……」
「そういうことです。そろそろ倉庫につきますよ。話につきあっていただきありがとうございます」
目の前には白い建物の大きい倉庫があった。廿月達は中に入ろうとする。
悪い噂はなさそうにもみえた。




