12話
華南の旧友と別れてから時間が経っていた。依頼が一段落終えたので、霧山さんは華南と一緒に別部屋で話していて、その間、廿月達は絵凛と一緒にケーキを食べている。
オレンジ色の彼女はパクパクと食べているようだ。その姿を見ている銀髪の男。
「……ねぇ、これ俺らが食べて良いの?」
彼は恐る恐る質問する。何か怖かったのだ。
「え? 良いんだよ。お母さんを守ってくれたお礼ね」
「……でも絵凛ちゃんの」
廿月は何か言いたそうだけど少女のほうが口動く。
「馴れ馴れしく言わない! 私が良いと良いと言ったらいいの!」
彼女は口調を荒くしながら声を出す。その光景を見た悠輝はゆっくりを口を開く。
「そんなお利口さんにしなくても、えりりんから許可得たら良いんじゃないのか? 親友」
「おい! お前は馴れ馴れしくしすぎ! ちょっとぐらい遠慮しろ!」
「ははは、照れるなよ。オレちゃん達に感謝しているくせして」
悠輝は机にバンバン叩きながら愉快な大声を出した。
「実際のところはそうだけど! なんか腹立つ!」
「まぁ、えりりんは年頃だからな。しょうがない」
金髪の彼女はやれやれとした仕草や表情をしていた。
「めんどうな人だな……」
絵凛は彼女をみて呆れていた。
「そういうオレちゃんの性格もかわいげがあるだろ?」
「ないわ!」
オレンジ髪の彼女は金髪の女性に向かって突っ込む。
その頃。廿月は気にせず、絵凛から許可を得たケーキをゆっくりと食べていた。
「そういえばエレンにも食べさせないとな。幻想奇譚」
廿月は能力を発動させる。
「うーん。ぼく、ねむねむだよー」
「起こしてごめんな、エレン。君にケーキを食べさせたくて」
「ケーキ! わーい。たべる」
エレフンは嬉しそうな表情でケーキをパクパク食べる。
とても、けなげな姿だ。
「そうだな。オレちゃんもウィンピィ出すか。幻想奇譚」
同じく能力を出す悠輝。何も無いところからアニメキャラが出現する。
「うぅ……。ボク、オオカミだけど食べても良いのかな?」
「あぁ、いっぱい食べて良いぞ。そのぶんデカくなれ」
彼女が能力を出していると、絵凛は話しかけてきた。
「これが廿月さんの能力? ずいぶん、かわいいこと」
「かわいいのは絵本キャラだからね」
「通りで」
絵凛はほんのり口角を上げる。まんざらでもないみたいだ。
「あぁ、それに俺のヒーローだからな」
「ヒーロー?」
「俺が小さい頃から好きだった絵本でアニメ化もしていた」
廿月は嬉しそうな柔らかい表情をしていた。
「ふーん。いいじゃない。あと生意気なことをいってもいい?」
「何のことか分からないけどいいよ」
廿月は彼女の発言を許可する。すると、なかなか厳しいことを言ってきた。
「ほぼ初対面の私が言うのも悪いと考えるけど、廿月さんさ。もうちょい感情豊かになると良いよ」
「え? これでも豊かだけど?」
「いや、私からしてみれば全然。感情が乗ってない。まるでロボットみたい」
「……そうか。今度から気をつけるよ」
「何で感情乗っていないかは分からないけど、廿月さんが笑うと良くなるのかなと。あ、勘違いしないでね。私はあなたの無表情が怖いからそう言ったの」
「無表情……そうかもな」
こわばった笑みを浮かべる廿月。
「こんなんじゃ。憧れのヒーローにも顔向けできないよ」
「でも実際、会っているよ」
銀髪の青年はエレフンの身体をトントンと優しく叩いた。
「それは比喩みたいなもので……」
「後のこの作品は、俺の弟も好きでな。もうこの世にいないけど」
「……どうして」
「殺された。犯人も自殺して」
柑橘色の少女は廿月の言葉に強いショックを受ける。
「……つらいね。そうだったんだ。初めて会ったときから色々とひどいこと言ってごめん」
「いいよ。気にしてない」
「ありがとうね。絵凛ちゃん」
「はぁ、もうなんでも良いわよ」
絵凛は大きく肩を下ろし、後で言いたいことを忘れたのか、口を開くのすら、あきらめる。
様子を見ていたエレフン。男の子は絵凛に向かって元気よく挨拶した。




