11話
「こ、これは、あのときなくしていたペン」
「すまんすまん。これをあのとき渡せなくて、このタイミングになってしまった」
「いやいや、大丈夫さ。確か無くしたときは、お前の娘が生まれたぐらいだよな。お子さんは元気か?」
「ああ。元気さ。私に似て、しかも可愛いんだよな~」
「俺が手伝った甲斐あったようだな。お前の──」
女性は切れながら胸ぐらを掴む。
「お前の……? なんのことだ。またキモい発言じゃないよな」
白衣の男性は焦りながらこう喋る。
「えーと、お前の……頑張りもあったから今があるって事を言いたかったんだよ。母は強しってね」
「あのときは本気できつかったな……だが、娘に会えてうれしさが勝ったかな」
「ああ。俺も嬉しかったよ……」
二人はしみじみ思う。廿月と悠輝は静かに見守った。
「なんだか黒墨さんの意外な一面が見られましたね」
「まぁ、旧友ならこういう態度も取るんじゃないかな? はっきー」
「……そう言うものなんですかね。俺、友達が一ノ瀬さんしかいないから」
「お、嬉しいこと行ってくれるじゃん。オレちゃんもはっきーのこと親友だと思っているぜ~」
彼らは軽く抱き寄せながら友達のようにじゃれ合う。
「なんだか、この二人も良い感じの関係性だな。いつかは二人の──」
「二人のなんだ? 上坂……!」
華南は切れながら乱舞のほうを見つめていた。
「いやなんでもないです……本当にすみませんでした」
「そうか、まぁビンタぐらいで許そう」
依頼主の女性は力強くひっぱたく。乱舞から変な声が漏れた。
「あの? 要件は済んだでしょうか? そろそろ帰ろうかなと思いまして」
銀髪の青年は依頼主の女性に呼びかける。
「それもそうね。この人に汚い顔も見たし、娘の心配しているようで帰りましょう」
華南は帰る準備をする。そのついでに乱舞へ小声で何か伝えた。
「ねぇ、この子達には私のことにも言わないでね」
「ははは、そんなこと言わんさ。友達だろ?」
「まぁ、そうだけど。心配で……」
「大丈夫さ。言うとすればお前の娘が亡くなった黒墨の好きな人だったぐらいだし」
「……そうだけど」
「だから、娘のために生きろよな。俺のかけがえのない友人さん」
「ええ、だけど。知らない女の子に変なこと言わないでね!」
「……そこは気をつける」
旧友同士の彼女たちの会話が終わり、廿月達のほうを見る。
「待たせたわね。さぁ、いきましょうか。」
「何か話してたんです……いや深いところは聞かないでおきますね」
「気遣ってくれてありがとうね。じゃあね、上坂。またいつか」
華南は白衣の男性に手を振る。
「あぁ、お前も長生きしろよ」
廿月達も挨拶をし、乱舞に出口まで案内してもらう。
その頃。絵凛は何でも屋で母親達が来るのを待っていた。
それを心配した霧山さんは声を掛ける。
「なぁ。そのケーキ食べないのか?」
「食べたいけど、少し待ってから食べたいかな」
「……ぬるくなっちゃうよ」
社長は心配そうに伝えた。
「私は一人で食べるケーキよりも、みんなと食べるケーキが好きだから。だからお母さんがいるとき食べるの」
「そうか……、ところで廿月はどこにいるんだ? 探してもいなくて」
「それなら私が依頼してお母さんのほうに言ってるわ。大丈夫依頼金は渡している」
「そんな勝手なことして……」
「勝手かもね。ただお母さんが心配だったから。お父さんはいなくて」
「……そうなんだね」
絵凛はゆっくりとうなずく。
「私は女の人はお母さんしかいないけど、男に依頼したのは初めてなの。廿月さんならそう言うことできるなと思って」
「……あいつはやればできる子だからな」
「後は単純に馴れ馴れしい女が信用できなかったのもあるけど」
「悠輝は悠輝だからな。初対面ならしょうがない」
「でもね。人を信じるってこんなに安心するものなんだなと感じた。廿月さんならお母さんに変なことしないと信じているわ。馴れ馴れしい女は知らんけど」
「ははは、それならいいんだよ。ちょっと待って。電話かかってきた」
霧山さんは受話器を取る。悠輝達からだ。そろそろ何でも屋に帰るらしい。
もちろん帰りはタヌキタクシーで、社長はオレンジ髪の少女に伝える。
彼女は激しく喜び。母親の帰りをしばらく待つことになった。
絵凛はケーキを食べる準備をしていた。その表情は天使のように微笑んでいた。




