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2.副主将の圧


「1年、全員顔が見えるように並べー」


 待ちに待った部活動。今日からやっと新入生は部活に見学に行けるのだ。『入学式の翌日だけどネ』とイマジナリー小倉がツッコんだ気がしたが知らない知らない。俺はもちろんバドミントン部を選んだ。


「俺は主将の柳田やなぎだだ」

「俺は副主将の都築つづき。全員、出身校、名前、あと実績とかあれば言ってくれ。ハイ、右端から」


 運動部に似つかわしいエネルギーに満ち溢れた柳田さんと、淡々と流れ作業のように進めていく都築さん。両者対照的で、この部が引き締まって見える。


「は、はい! おれ、僕は......」


 見学に来た1年は全部で17名。中学で名を揚げた者がちらほらいる。きっとスポーツ推薦で来たのだろう。かくいう俺もスポーツ推薦枠の一人だ。ご縁に感謝しないとな。


「次」

「はい。冴島さえじま中出身、桜庭悠然です。実績は特にありません」


 一瞬、副主将が怪訝そうにしたが、俺からは早々に視線が外された。パッとしない新入生に興味なんかないということだろう。絶対強くなってやる。奥歯の音がする。


「次」

福神ふくじん中出身、佐伯徹! デス! 大会優勝経験がある! あ、いや、アリマス!」


 両手を腰に当て、胸を張って自信満々に佐伯が名乗ると、空気が一瞬にして変わった。顔色が変わって、動揺が見て取れる。


『佐伯ってあの?』

『マジで?』

『福神って強豪だろ?』

『やっべー! 楽しくなりそー!』


羨望と嫉妬と焦り。そして躍進の喜び。


入学式で名前を聞いた時からもしかしたらと思っていた。

どこにでもいそうな名前で、でもスポーツをしているらしいことから、福神中の佐伯かもしれないと。


 佐伯徹。

プロバドミントン選手を両親にもち、兄はなんとオリンピック出場経験者だ。本人も彼らに負けず劣らずの実力を兼ねそろえており、中学バドミントンではかなり人気の選手だった。おそらく高校でも活躍していくのだろう。


 レギュラー陣も非レギュラー陣も、この優秀な選手に目を奪われている。自分の地位が脅かされる可能性に焦る人、選抜メンバーにすら入れないのにと嫉妬する人、チームがさらに強くなると喜ぶ人、さまざまだ。


 俺はというと、燃えていた。

有名なあの佐伯がいるチームで一緒に練習できる。一緒にできなくても『見て』技を盗める。こんなにいい条件があるだろうか。


 レギュラーに入ることができないから嫉妬? 

いや違う。強豪のレギュラーに入るだけの実力に嫉妬している。才能とセンスの両方を持ち合わせた佐伯が羨ましい。だけれども、佐伯への憧れはなかった。ただ隣で一緒にプレーしてみたい。それだけだった。


 注目されて興奮する佐伯はバドミントンという楽しみに震えているようだった。上がった口端がふるふるとゆれている。


俺もここで鍛え抜かれてやるという闘志をもって前を見据えた。


「マネを紹介しとくなー。うちは2人いる」

笠井かさい色葉いろは、3年。よろしく」

広瀬ひろせ絢乃あやの、2年です。よろしくお願いします」


 笠井さんは厳しそうな人だ。隣同士でおしゃべりに興じる1年に鋭い視線を向けると、彼らは委縮してうつむいてしまった。ゼッタイ怒らせないようにしよう。超怖い。彼女に対して、優しく穏やかな広瀬さん。ニコニコと人の好さそうな笑みを浮かべている。


「あと1年でもう一人マネ希望が、」

北沢きたさわもも、1年です! よろしくお願いします!」


 主将の声を遮って一歩前に踏み出した彼女は、大きな声で挨拶した。ちょっと耳がキンキンする。


 北沢と名乗った彼女は身長が150センチあるかないか。かわいらしい見た目もあいまって、小動物か何かに見える。張り切っているようで、副主将の足を踏んでいることには気づいていないようだ。カオ、怖いっす。都築さん。


「......ちょっといい?」


顔に圧をこめまくって1年にすごむ彼は鬼だ。ただでさえ小さい北沢が縮こまってるぞ。


「まあまあ落ち着けよ、都築の旦那♡ 嫁が泣いてんぞ♡」

「死ね」

「言葉の暴力ッ」

「ちょっと柳田ママ、説教してやって!」

「もぉダメよ、お友達いじめちゃ。悪い子!」

「テメェら全員外周・筋トレ5セット追加な」

「「「サーセンシタ!!」」」


 3年生による茶番。嫁というのは柳田さんのことらしい。ママというのも柳田さんのことらしい。忙しい役回りだな。ご苦労なこった。

 主将の柳田さんは割とノリがいいタイプとみた。くねくねと都築さんにすり寄って耳にホウッと息を吐いた。見ていてとても気持ちが悪い。ほかの3年の先輩方も面白がって都築さんを取り囲む。


 しかし、この部活において主将の立場は副主将よりも下らしい。般若の顔をした都築さんが突きつけた無理難題は彼らの膝を折った。ひれ伏さざるをえなかった。



尊敬する。








佐伯「俺途中から空気なんだケド!」

小倉「俺なんか、桜庭の想像だぞ......」

都築「悪いな1年。今回は登場人物紹介も兼ねているからな」

佐伯「この人ちょっと楽しそうなの何?」

小倉「強者の余裕ってやつだろ。ほっとけ」

都築「僻むなよ、格下ども」

佐伯・小倉「腹立つ!!」



桜庭「インターハイの時期ですね。一同応援しています」

佐伯「あっテメ、桜庭ァァァ!! 観に行きまっす! 頑張れよ!」

小倉「テメェは許さん! 皆さんにとっていい思い出になりますように!」

都築「青春の1ページです。楽しんできてください」



 皆様のご健闘をお祈りしております!!


***

一応彼らも強豪校のメンバーなのでそのうちインターハイとかやりたいなと思っています。本編でもやるよ。

全然筆が進まないけどね! 

どうか、温かく見守ってやってください。



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