異世界召喚されて5年、かつての魔王は俺の飲み友になりました
「「かんぱ~~い!!」」
ここは、王都にある大衆酒場。
一仕事を終えた者達が、酒や料理で労をねぎらう憩いの場。
そんな酒場のカウンター席で、俺は飲み友と景気良く杯を交わしていた。
「くぅ~~!! やっぱり、クエスト後の酒はうめぇな!」
「あぁ、吾輩もこの一杯のために、朝から徒党を組んで攻めてきた古参の貴族共を黙らせてきた甲斐があった!」
黒いローブ姿の飲み友が嬉しそうに酒を煽る姿を見て、安心したように微笑むと次の酒を注文した。
「それにしても、かつては敵同士だった俺たちがこうして飲み友になるなんてな!」
「……貴様、吾輩が来る前に一杯ひっかけたな?」
「ヘヘッ、バレたか」
小さく舌を出した俺に、飲み友は呆れたように溜息をつく。
「だって、俺たち勇者と魔王だったんぞ?」
「そうだな。吾輩は魔王で、貴様は召喚された勇者だった」
今から5年前、俺は勇者として日本から異世界に召喚された。
夢にまで見たシチュエーションに胸を踊らせた俺は、国王に言われるがまま剣や魔法を身につけ、これまた国王に言われるがままソロで魔王討伐へ。
そして召喚された次の年、俺は人類を脅かす魔王に出会った。
「最初は、もっと大柄でいかつい奴を想像していたが、実際会ってみたら禍々しい角が生えていること以外、細身の人間と変わらない容姿。その上、大の酒好き」
「そうだな。貴様が我が城に乗り込んできた時、吾輩は気合を入れるために、秘蔵の酒に手を伸ばしていた」
そう、こいつは決戦前に一杯ひっかけようとしていたのだ。
「初めて見た時は驚いたが……そこからだよな。飲み友になったのは」
「あぁ、あの時にお前が『俺が『魔王を倒した』と嘘をつくから、俺と飲み友になってくれ!』って言わなかったら今頃、吾輩はあの世で部下達と一緒に酒盛りをしていただろう」
「おいおい、あの世に行っても酒飲むのかよ!」
「当然だ! 吾輩と酒は切っても切り離せないからな!」
そう言って現世で楽しく飲んでいるこいつを、誰が魔王だと信じるだろう……いや、『魔王を倒した』と嘘をついて、平和になった今なら誰も信じないだろうな。
そんなことを思いながら、追加の酒を煽っていると、突然元魔王がニヤリと笑った。
「そう言えば、我が国で新しい酒が出来たんだ。もちろん、飲みに来るよな?」
「当たり前だ! クエストついでに飲みに行ってやる!」
「ハハッ、そう来なくては!」
こうして俺は、いつものように飲み友と朝まで飲み倒した。
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