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92:開戦! 惑星デモドリフト撃滅戦!!

 時間と空間を歪めてこじ開けられたトンネル。

 世界の境界をくりぬいてなお安定して存在するそれの中を、イクスブリード・ドラゴンは赤い翼を羽ばたかせて進んでいる。

 後方には母艦であるエキドナと、その随伴艦である二隻のオルトロス級万能空母の姿が。この味方を置き去りにしないように、後方の負担にならない速度に絞って飛んでいくのだ。


「……はじめて通るが、ゲートの中はこんな風になっていたのか……ルーナとリードくんもこれを通って……」


「いやーアタシらは初めてじゃないけど、こんなんじゃなかったし。前のは気がついたら向こうにって感じの、マジで一瞬だったからさ」


俺の中でコックピットモニターを眺めながら感嘆するクリスには悪いが、そうなんだ。クリスのすぐ後ろのルーナが言うように、前にゲートに巻き込まれた時には、こんな風にトンネルを潜った覚えは無い。爆発に巻き込まれた衝撃で意識を飛ばしてたこともあるかもしれない。が、それも何分もかかっていなかったはずだ。


「じゃあなんでまた今度のはこんな風に潜ってる時間が?」


「そんなことアタシが知るかって……まあ、推測としちゃあ、使ってるゲートの制御装置が裏切りフィッシュ博士のヤツだからって事くらいかね?」


「未熟な技術のコピー品だからって事?」


「アタシだって違いが出てる事以外は分かんないんだからから、ハッキリとはなんとも。それプラスに安定感重視してるから……とか? 考えつくのはそんなとこだけど」


 ファルの質問にあくまでも推測だと強調するルーナだが、その見立ては外していないと思える。ブリードの知識でも確実な瞬間転移が出来る程に安定した直結型ゲートは技術的に高いレベルのもので、サイズや確実な転移のためには少しばかり航行するトンネル型の方が良いのだとか。もっとも、長々と時空間の歪みを航行するようでは、かえって中途でのトラブルリスク増加もあるので、バランスが大切なようであるが。


「……っと、トンネルが終わるようだ。惑星デモドリフト付近に出るのなら、まず攻撃を受けるだろう」


「オッケー、分かってるって絞まっていこーって事さね!」


「後ろのエキドナたちも守らないとだから」


 クリスが音頭を取って、改めて気を入れた俺たちはトンネルの出口を抜ける。

 するとその瞬間、視界をまばゆい光が埋め尽くす。

 案の定の集中砲火に、先んじて守りを固めていた俺たちは防護フィールドを全開に前進。さらにアンカーからもエネルギーストームを盾として前に。


「ゲートを潰さず、わざわざ出待ちに待ち伏せしてくれるとはありがたいッ!!」


 余裕を見せつけたつもりか。こちらの侵攻ルートを残してくれていたデモドリフトへ感謝のランスカノンを。敵だらけで何の遠慮も無しのフルパワーで放たれた二つの極太ビームは弾幕を真っ向から押し返して貫く。そのまま左右に腕を開けば、連動して広がった破壊光線が光を放つモノを焼き払い、光の玉を数珠繋がりに生み出していく。

 そのまま前進して敵弾幕を攻撃と防御とで薄めてゲート前の安全圏を確保する。

 これに続いてエキドナとオルトロス級の僚艦がゲートを抜けて姿を現す。

 ここへきて曲がるビームとエネルギーボールが俺たちを迂回して母艦たちへ。


「そうくるよなッ!!」


 母艦狙いの攻撃に俺たちは正面方向のエネルギーストームを残して宙返り。殺到する誘導弾らをランスカノンでなぎ払う。しかし当然俺たちだけで潰しきれる量を放つような手ぬるいマネはしてこない。が、エキドナらとてただぷかぷかと虚空に浮かんでいるワケでもない。ホーミングレーザー機銃による対空砲火、艦載機による迎撃弾幕が船体を守る盾となる。

 そうして開幕の挨拶を凌ぎきった母艦へ着艦。一呼吸にチャージしたダブルランスカノンのフルパワーを正面方向にぶっぱなす!

 我ながら目が焼けるほどに強烈な輝きが視界を埋め尽くす中、足場にした母艦エキドナに過負荷をかけないように反動をセルフキャンセル。

 そうして光が収まると、俺たちを狙っていた砲撃は完全に沈黙していた。


「……ま、これで終わりって事は無いよな」


 呟く俺の明滅する目が見ているのは瞬く間星の光。

 と言っても、その距離ははるか彼方のモノじゃ無い。星と言うのはまばらに光を灯した鋼の球体。機械惑星デモドリフトの放つモノだ。

 巻き込まれてじゃあなく、こっちから攻めるために世界の壁を越えて来たってのに悠々と構えてくれて腹の立つ事だ。

 しかしそれはそれとして、ヤツからのアクションを見逃さぬように、通常の視界に加えて最大望遠でもフルメタルプラネットの表面を。


「まったくの無傷ってか? 忌々しいッ!!」


「砲台の破損はあるようだけれども……外壁には焦げ目一つ見えない、か」


 舌打ち混じりのルーナに続いて、クリスがヘルメット奥の顔を苦々しく歪めてうめく。

 俺たちがなぎ払ったのが星の外に展開していた艦艇や砲台だったとして、外壁にだって届いていたはずだ。それに母艦に足を停めてのダブルランスカノンも放っている。だっていうのに堪えるどころかほぼほぼ無傷とか……こっちの方が参っちまうって。


「弱音吐いたってしょうがないって! 一発で通じないなら十発、それでも足りなきゃ百発を叩き込む!」


「たしかに! それに急所になる箇所だって無いとも限らない!」


「まあ弱気を見せるにゃあ早すぎたってヤツさね!」


「勝負はこれから、だもんな!」


 ファルの飛ばす檄に、俺たちはそれぞれに気合いを入れ直して甲板から飛翔。あわせて復活した砲台からのビーム砲を相殺しておく。

 そこから続く艦隊狙いのはエキドナらに任せて、俺たちは宇宙を切り裂く勢いで駆ける。機械惑星の外壁。そこにクレーターのように存在する砲台がイクスブリード・ドラゴンを狙ってエネルギーを漲らせてるんだもんな。味方は巻き込めないって。

 照準を合わせられないように高速飛翔する俺たちを追って、自転の方向も周期も無視して回る機械惑星。

 この俺たちの機動を鈍らせようと、無数のビーム砲や誘導エネルギー弾が殺到してくる。が、ファルの巧みな翼使いが誘導弾とビームを絡ませて爆発させる。

 こんな調子でしのげてはいるが、当然逃げてばかりじゃあラチも開かない。と言うわけで俺たちからもお返しを繰り返しに放ってやるのだが、こちらも外壁に穴を開けるには至ってない。


「通じるまで何発でも続けてやるつもりだけどさ、もう一工夫入れてみても良いんじゃない?」


「当然!」


 ルーナの軽口に、クリスはコックピットに蹄を叩きつける。この強烈な踏み込みをトレースした俺は虚空に生みだした力場のレールを踏みつけ、翼に襲歩ギャロップの推進力を上乗せ加速。一気に惑星デモドリフトとの距離を詰める。


「近づけば使える砲も限られるだろうがッ!!」


 これに正解だと答える代わりに、小回りの利きそうな機銃が一斉に俺たちに向けて立ち上がり光を放つ。

 毛羽けばのようにびっしりと立ち上がった銃身から絶え間なく浴びせられるビームは、たしかにドラゴンのバリアを破れずに弾けて散っている。だが機銃とはいえこの威力は――


「分離して突っこんでたら蜂の巣だったわなこりゃあ」


 ドラゴンだったから受け止め切れているが、三種のイクスブリードでも危うくなる威力だ。機械惑星が俺たち以外に本腰で狙いをつけるような事は絶対に避けないと!


「どちらにせよ、私たちの他に目を向ける余裕など与えるつもりはないッ!!」


 そんな懸念も敵の抵抗も踏み破って、クリスはランスカノンの穂先を外壁に突き入れ、溜め込んだエネルギーを解き放った!

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