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85:別にやっちまっても構わんだろってね

「離れて! 常設の警備隊と合流をッ!!」


「リードくんも無茶はしないで!」


「もたついてるのがあったらかっぱらってでも助けにくるからな!」


「かっぱらいはともかく……助けにくるまで持ちこたえて!」


 牽制と挑発目的の発砲に合わせて、生身の三人娘に退避を勧める俺だが、三人とも言われるまでもなく蹄と羽音を遠のかせている。さっすが、判断が早い!


「助かる! でも待ってなくたって構わないよな!?」


 助けに戻るために離れていく生身のトリオへ触手を伸ばそうとする魚とゴリラ、コウモリとタコのメカキメラに、俺は全弾撃ち尽くす勢いで連射しつつ突撃!

 これでやっと俺に集中し始めたメカキメラの目玉に、俺は飛び膝蹴りを見舞ってやる。

 割れた魚眼レンズの破片。これキラキラと散らして仰け反る敵を真下に宙返り。合わせてリロードを済ませて背中へフルバーストを。

 一連のダメージに悲鳴めいた軋み音を上げたメカキメラはずるりと滑るようにして反転。その勢いに乗せた剛腕で振り下ろしてくる。


「思っていたより速いッ!?」


 が、それだけ。後ろ飛びに距離を開けた俺に大きく遅れた大振りのパンチは、グリップから落とした空カートリッジを潰しただけで終わる。そのままジグザグに飛び退きつつマグチェンジ。こっちを追いかけて落ちてくる鉄拳と、こそこそとクリスたちに向かうメカタコ足に銃撃を浴びせてやる。


「……お互いに余裕があるじゃあないか」


 マグナムショットも食らわせてやるが、怯むだけ。膝蹴りを入れた目玉も含めてすぐに回復してしまう。

 ヤツの攻撃からは強烈な圧を感じるが、テレフォンパンチも良いトコで、まずマトモに食らうようなモンじゃない。

 俺もヤツもお互いに決め手に欠けてるってヤツだ。

 もっとも、大振りだろうと油断していたら避けられるモノも避けられないだろうが。当たらなきゃあどうってこと無いってのは、当たったらヤバいってコトなワケで。だからって、牽制する手を緩めるってのは絶対に無しなんだが。

 ホラまた俺を睨んでるフリして他所に足出そうとする。俺の攻撃が装甲やら自己修復でどうにかなると甘く見て!

 そんな油断に、俺はブレードバレルを取り付けたブリードガンを。


「あの裏切り者みたいな忌々しい顔してからにッ!!」


 ことさらに大声を張り上げて見せれば、禍々しいメカキメラはこっちを見て構える。

 その止まったデカイ的にマグナムショットを! ……ただし、バレルを着けてない左のでだ。

 盾に出した巨大な腕、これが直撃にひしゃげて浮き上がるのに合わせて踏み込む。

 懐目掛けて一直線な俺に、メカキメラは崩れた姿勢で控えていた腕を振り下ろしてくる。が、俺は素直すぎるそれを横っ飛びに回避。強引に切り替えた軌道をスラスターで滑るようにして進み、進行方向を塞ぐメカタコ足に体当たりの要領でブレードバレルを突き刺して、からのマグナムトリガー!

 内側からの爆発で千切れ飛ぶメカテンタクル。当然密着状態だった俺は、この威力に逆らわずに飛んで転がる。転がり抜けた後に地響きが響く中、俺も地面を叩いてベクトルを変更。錐揉みにメカキメラの肩を踏みーの、合わせて左のガンを投げつつのジャンプ、かーらーの……!


「フルパワーブレードもう一発ッ!!」


 交換したカートリッジのフルパワーを注ぎ込んだガンブレードを魚頭のてっぺんに。そして長く太く伸びたそのエネルギーブレードが深々と引き裂いただろう内部に、もう一度カートリッジ交換してのマグナムショットを叩き込んでやった!

 胴体から連鎖的にかけ上ってくる爆発。それを足裏に受けながら俺はジャンプ。放り投げていた二丁拳銃の片割れを回収しつつ着地する。

 連続のフルパワー放出という大仕事を終えた一丁を格納しながら、俺は残る一丁を前にメカキメラと対峙する。

 満タンのに取り替えたビームガンの銃口の先には機体のおよそ半分の消し飛んだ化物が。

 おそらく胸部辺りから始まったのだろう爆発は下っ腹にまで至ったらしく、その連鎖的なダメージの痕はひしゃげ開いた装甲と、そこから覗く内部パーツの激しいスパークからも見てとれる。

 そんな爆発のおかわりを起こしかねない胴体は、支えであるタコ足が痙攣を起こして広がったがために、ずしゃりと音を立てて着地する事に。

 見る限り敵は明らかに機体の重要なパーツを喪失しており、単独での自己修復は不可能なダメージを負っているようだ。

 思いの外軽く機能停止に至ったメカキメラに、俺は単独での撃破と、奇襲から仲間を守れた達成感に胸が熱くなるのを感じる。

 が、これまででここで終わった試しは無い。

 そんな経験から、俺はこっちに晒されたズタズタの内部メカに向けてエネルギー弾をトリプルバーストに。

 この三発の光弾が傷口をさらに深く抉れば案の定。微動だにせずにいたメカ触手がのたうち回る!

 

「死んだフリなんかが今さら通じるかっての!」


 偽装するにしても堪え性の無いメカキメラに叫び返しつつ、俺を狙った横なぎの一撃を跳びこえる。

 当然飛び上がった所を狙ってのタコ足も飛んでくるが、これに俺はブリードガンの射撃とスラスターとを合わせる。

 エネルギー弾をクッションに、自分からも跳ぶことでダメージを軽減。さらに絡みつこうとしてくるのをすり抜ける。

 転がり、射撃を置き土産にしてのバックステップ。からのマグチェンジしての構え直しをすれば、ひっくり返ったメカキメラが。

 上に向いたメカ触手の基部。のたうつその中央には弾け飛んだはずの魚の顔が。

 裏切り博士そっくりなその顔は足りないなりに自己修復で作ったのか、それとも最初からこちらのが本物なのか。


「どっちでも構わないが! 案外ナルシストだったらしい!」


 やるべきことは同じ、依然変わり無く。と俺は振り回されるタコ足をかわしながら、射撃で動きの出鼻を挫いていく。

 しかし効果のほども変わり無し。フルパワーで撃たない限りは、マトモなダメージになりそうにない。

 やるしかないか。

 腹を決めた俺はエネルギー満タンのカートリッジを二つ片手に握って突撃を。

 当然俺を近づけまいと無数のマシンテンタクルが鞭のように迎え撃ちに。

 足をさらいにくるのを飛び、上体狙いのをエネルギーブレードで切断。

 そうやって掻い潜っていた俺だが、縄跳びした着地点に埋まっていたのに足を縛り上げられてしまう。


「しまったッ!?」


 巨体を支えていたパワーで絡みつく触手は振りほどけず、俺は逆さ吊りにされてしまう。そんな俺の姿に、タコ足の中央にある魚顔がその目を弾むようなリズムで光らせる。

 そんなヤツの顔面に俺は握っていたエネルギーカートリッジを投げつけてやる。が、いくら満タン入っていても、礫にしただけじゃ鬱陶しいだけでしかない。

 だからって、構わず食いつきにくるのは油断が過ぎるんだよなぁ。

 と言うわけで俺はマグチェンジをすませていたブリードガンを発射。その狙いは目の前に迫った魚顔……に弾かれた、ブリードガンの満タンカートリッジだ。

 我ながら振り回されながらでよくぞ当てた。そんな自画自賛が出てしまうような狙撃は封じ込められていたエネルギーを爆発、タコ魚のメカを焙る。

 このダメージにたまらず触手を振り回す機械の怪物に、俺は銃に残っていたエネルギー全てをくれてやる。さらにダメ押しにもう一発のマグナムショットもおまけに付けて。

 これが焼け焦げた装甲をぶち抜いて、メカキメラは魚の口と目を中心に火を噴いて爆発する。捕まってた俺も、振り切るのが間に合わなくて、火柱に巻き込まれる事になってしまったのだが。


「いつつ……ちょいと捨て身が過ぎたか……予想の上とはいえ、修理必須になるまで無茶させちまったからなぁ」


 煙とぼやきの上がる俺の手には、もう一丁と同じく壊れてしまったブリードガンが。


「敵の攻撃を確認、さらに勝ったからヨシ! ……とかネタで言ったら、ビンタどころか拳骨でもすまないだろうなぁ」


 俺の無茶に着いてこられず煙を吹くそれと、駆けつけてくる仲間たちの反応。これに俺は待ち受けるお説教を確信して気を重くするのであった。

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