表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/100

66:敵意の雨は

 ファルの羽ばたきをトレースして赤い翼を打った俺は加速するままに真正面の敵機を貫通。ついでにすれ違い様に足の届くところにいたヤツにも蹴りを入れて引き裂いておく。


「町には近づけさせんぞ!」


 意気込むファルが翼を操るのに合わせて機体を翻し、また次の、さらに次のとターゲットを爆煙に変えて行く。

 上空からの強襲を知らされた俺たちは、とにかく空だとイクスブリード・スカイになって迎撃に。

 ゲートの使えるデモドリフトの事、降下隊は陽動だろうとの予想はあった。だが住民の避難も始まったばかりという状況で、他に選択肢は無かった。

 衛星軌道上の拠点から直接降下でもしているのか、カプセルに包まれて落ちてくるのを俺たちはある程度の高さと範囲の中で破壊し続けているのだ。

 これは基地からの指令によるもので、取りこぼしや破片、指示エリアを大きく外れたものは他の空戦機や対空砲が担当する事になっている。俺たちは真上から基地と市街に飛び込もうとしてるのを迎え撃てばいいというわけだ。


「とはいえこの数! いったいどれだけのを落として!?」


 多数だとは聞いていた。いたがそれにしても切れ目が無い。デモドリフトのトルーパーにキリが無いというのも、いつもの事といえばいつもの事でもあるが。

 そんな事を思っていたらノイズ交じりの通信と光信号が地上から。


「地上部隊出現ッ!? 来るとは思っていたがッ!!」


 そちらは備えにと展開していたクリス率いる陸戦隊、ルーナに従う海戦隊が対処してくれているらしい。

 ここまでは読みどおり。しかし上空からの降下部隊は未だに途切れない。だから落ちてくるのの迎撃に集中してていいと言うが、次の動き次第ではそうもいかないぞ。

 上下の動きの変化に注意していた俺は、上からひときわ大きな、俺たちを追いかけるような動きをしているのを見つける。

 唐突に急加速してきたそれに、ファルは仕留めかけたトルーパーから狙いを切り替え、真上へ回し蹴りを突き出す。

 思いがけず軽い手応え。

 重力を受けて突進してきたのが爪にぶつかり砕け散るのを正面に、俺はその意外さに驚かされた。が、それも一瞬にファルの羽ばたきで急加速。狙撃のレーザーをかわす。

 そのままぐるりと機体を翻してレーザーの出どころへ機銃斉射。対して俺たちを狙ったらしい鳥型の機体は、回避の羽ばたきに合わせて光をばらまいた。

 誘導性を持つエネルギー弾へ、俺は機銃をばらまきながら突撃。爆発の隙間を抜けて新手の鳥型を追いかける。


「後ろ取ったぞッ!!」


 と、ファルが必殺を念じたのも束の間、鳥型の大型機はこちらに向けて光の玉を。

 こちらの頭部機銃とぶつかり弾けたそれは、またのエネルギーミサイルだ。その爆発の目眩ましを突き抜けた俺たちの目の前に、敵の姿は無い。レーダーからも消えているあたり、ジャマーも混ぜていたか!

 しかしファルはそんな目眩ましの中でも足を……もとい翼を緩めずに俺を動かす。そのお陰で背中を狙った機銃斉射から逃れられた。


「あーらま。これも避けるのねぇ? やってくれるじゃないの」


「この声、またレイダークロウかッ!?」


「あらーご名答ー声まで覚えてくれて嬉しいわー!」


 機嫌良く正解だと答えたレイダークロウからのご褒美だと言わんばかりの攻撃が。

 ギラつく殺気に輝くこれを、俺はファルに導かれるままに振り切りに。

 行く手を阻むように別方向からも迫るものを引き連れたものとぶつけて打ち消す。さらには速度の緩急で逆に引きつけてエネルギー弾同士を接触させる。

 そうして数を減らしながら、ファルはまだ地上を目指すトルーパーらも撃ち、あるいはホーミング弾の壁にして撃破していく。


「まー生意気! あたしを相手にする片手間に降下部隊を減らしてくれるだなんて!」


「それくらいできなくてはな!」


 強気の啖呵を切るファル。だが言葉にするほどに軽くはない。当たり前だが、どうしてもレイダークロウに気を取られる以上、見逃さざるを得ない降下機体は増えている。だがその分は低空の防衛網を信じて、俺たちはこっちを抑えておかなくては。


「それにしてもまた我々のコピー品を着込んで来たか!? 私たちを取るに足らない反逆者と見下しておいて、恥ずかしくないのかッ!?」


 ファルが言うように、レイダークロウが纏っているのは明らかに俺たち、イクスブリード・スカイを意識したモノ。以前にスクリーマーが合体してきたランドのコピーの系列だ。


「あーらあらあら、ずいぶんと言ってくれるじゃないの。今回のはただのコピーじゃなくて、無駄を省いてあたしに合わせた特注品なのよ? この差が分からないのかしら?」


 爪を伸ばした鳥人と、全体を鏃のようにコンパクトに畳んだ高速態。その変形を繰り返して俺たちを追っていたレイダークロウは、俺たちの前を先回りに横切るのを繰り返すように。

 なるほど、そうやって見せびらかしてくるだけあって、ランドを強引に再現しただけの前のコピーよりは洗練されているように見える。だとしてもだ。


「このわたしのスカイのコピーでしか無いことには変わり無いだろうッ!!」


 ファルが闘志を乗せて叫ぶや否や突撃。全力のエネルギーを纏っての体当たりを仕掛ける。

 これまでの限界を越えた速度とパワーで迫る俺たちに、レイダークロウの操るコピーが驚きにカメラアイを瞬かせる。その首元を俺たちの機首が突き破る。


「なぁ、にぃッ!?」


「自信があった割に、性能にはさらに差が開いていたなッ!」


 ほぼ同等のスピードで粘るつもりだったのだろうが、あいにくだ。計画破綻のショックに絶句しているのがコピーから露出した姿から良く見えるぞ。


「またパワーを上げてきてる……それともアタシら相手に上限を隠してたっての!?」


「そんな事はお前が知る必要は無いッ!!」


 また破壊してやるとファルはトドメの一撃を繰り出しに。このスピードと全重量を込めた蹴りは半壊状態のコピーを紙切れのように切り裂く。


「ま、いいわ。これでアンタたちと真っ向勝負する気は無かったもの」


 突然の冷たい声。

 それまで動転していたはず。だと言うのにスッと凪いだ敵の声色に、俺もファルもギョッとさせられる。このわずかな隙にレイダークロウは潰れるコピーから離脱。それを追いかけようとした俺たちにぐしゃりと歪んだコピーが絡みつく。

 蹴りに突き出した脚、それを中心に巻きつくなりに残骸が赤熱化を。これは自爆かッ!?

 と、思った瞬間には俺の耳目は爆発に包まれていた。瞬間的に強化したバリアで致命打は回避。それでも軽いものじゃ無いんだが。


「だが飛ぶのに問題は無い! 敵もまだまだ降って来ているのだから!」


 しかしファルの闘志に陰りはない。むしろ邪魔者が消えて、降下部隊撃破に向けてより燃えているようにさえ見える。


「基地内部に侵入者!」


 だがそんな闘志に水を差す報告が映像と共に。それは戦車を強引にひっくり返しながら防衛線を踏み越えたクラッシュゲイトの姿だ。

 地上、低空に展開した部隊が止めようにも、エース機体はどっちも手が出せない位置で足止めを食ってる。

 こりゃあマズイ。降下もレイダークロウも、陸からの攻め手も、全部コイツを突撃させるための布石だったってコトかッ!!


「……リード行って!」


「分かったッ!」


 ファルの判断は早かった。

 状況を見るなりに俺をスカイ内部からパージ。スカイイクスとなって自分は降下部隊撃滅を続行、俺を基地防衛に送り出す。


「任されたからにはやらないとだよな」


 そう自分に言い聞かせながら、俺は地上を見つめてスラスターを噴射。重力に推進力を重ねるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ