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64:灯台下暗しってコト!?

 暗闇の中に赤い光が点々と灯る。

 足場と天井の輪郭を描くように続くそれを頼りに光を向ければ、平坦な金属板の床があるのが見える。

 そうして無事に足場が続いているのを確かめながら、俺はフルメタルな両足を進めて行く。


「せめて明かりくらいは動いてくれれば良いんだがなぁ」


「……仕方がありませんよマスター。別の事にエネルギーが必要な真っ只中、最深部まで届ける余裕がありませんから」


「それは分かっているけれどさ。愚痴くらいは出るって」


 ウェポンライトアタッチメントを着けたブリードガンを奥へ向けて進みながら、俺は通信越しのアザレアにぼやき続ける。


「ユーレカ遺跡、その未踏の最深部を調査するっていうのに、俺とアザレアたちだけの調査チームでゴーだなんてさ」


 そう。俺たちが今踏み込んでいるのはユーレカ基地地下にある未踏地区だ。

 元々ユーレカ基地とシティは、三種のイクスビークルを格納したエキドナと、その停泊拠点跡の調査拠点をベースにした門武守機甲とその前身組織を中心とした防衛都市だ。

 その地下には更なる遺跡の存在が確認され、調査も進められていたが、未だにその全容は明らかになっていないのだ。

 そんな未踏のエリアに、こうして俺たち少数の調査チームで乗り込んだのにはあるものの存在を確認する必要があると判断されたためだ。

 それはデモドリフトの探し求めるもの。ヤツらサイドの今後を左右するのだろう機械、あるいはその断片だ。

 衛星軌道上に浮上した拠点、門武守機甲からはサテライトベースという呼び名で呼ばれるようになった要塞を前線基地としたのだろうデモドリフトの四幹部たち。

 ヤツらはあの拠点から地上の都市を吹き飛ばせる攻撃が出来るにも関わらずに、それを一度しか使用していない。

 これまでにもデモドリフトらはこちらの世界での発掘品を回収・使用していた。その事から、恐らくは再侵略の第一目的として向こうでの再生産が不可能になったパーツの探索があるのだろうと予測されていた。それは俺とルーナの機械惑星デモドリフト偵察によってほぼ間違いないだろうと認識されていた。

 つまり、ヤツらが地上を一気に焼け野原にしないのは、まだ回収すべきとしたモノすべてを手に入れていないからだろう。それがライエ副長官らユーレカ基地トップ層の見立てだ。

 そしてデモドリフトにとって、もっとも目障りなはずのこのユーレカ基地を破壊しないのも、ヤツらが必要としているものがユーレカにあると見られているから。

 その予測が正しいのか否か。それを確認するべく、俺たち調査チームがまだ探せていないエリアの探索に送られてるってワケだ。


「でも人手にも余裕は無いからって少数精鋭が過ぎるって、これは」


「……この為だけに外から人材を招くワケにも参りませんからね」


「呼べば来てくれそうな人が信用ならないからってのも分かるんだけどさぁ」


 デモドリフトとそのレジスタンス由来の文明遺跡の権威であるドクター・ウェイド。あの魚人の博士を、ウチの上層部は信用してない。まあ俺の合体不能トラブルのトリガーにもなってたし、俺とルーナに疑惑をかけてきた側に立っていたりもした。現場で見えてる疑惑はここまでだけれど、長官副長官からしたらもっと怪しいところが見えてるんだろうな。そんな相手をこんな懐どころじゃない深くにまで招きいれるのは、ちょっと警戒心が無さすぎるってもんだ。

 それで俺とアザレア達アンスロタロス数名っていうチームでっていうのは安心感があるからそれは良い。良いんだが、防衛もあるからこれ以上は人手を割けないってなってるのはなぁ。

 まぁいつまでもぼやいていても仕方がない。仕事は仕事だ。


「一番奥からさらっていくから、もう少し急いだ方がいいよな」


「……そうですね。ゲートがロックして停止している可能性もありますから、動力を再起動、確保しながら最深部に向かうのがベストでしょう」


 目的物のありそうなところから探っていく調査計画に乗っ取っての提案に、アザレアからは手に入っているエリアマップにひとまずの目的地へのルートを書き込んだモノが示される。

 と言うわけで気を改めた俺は進むべき道へ銃口と光を向ける。

 アザレアらと各種ツールの乗った車両を置き去りにしないように、時々大きめに先行するのを挟みつつゆるゆると奥へ。

 そうして復旧作業が必要なところでは、セキュリティの過敏な反応に対して作業チームのガードにつく。

 そうやって道々に光源とエネルギー、そして追加のマップデータを確保しながら進んで行った俺たちは目的の最深部に到達する。


「……倉庫か?」


 一回り見回した俺の印象はこの一言に尽きる。いくつかの塊にまとめられたコンテナがざっくりと隅に寄せられた状態で置かれている。

 そこここに見える開封済みの中身をスキャンしてみれば、ブリードの記憶の中にもある品と重なる。


「……我々レジスタンス、その物資保管庫である事に間違いは無いでしょう。当時の現地メンバーのシェルターも兼ねていたようですが」


「ああ、食料品が入ってたっぽいヤツの残骸があるのはそういう……」


 千年以上のモノだからな。もう腐るを通り越して土になってる。が、外箱の掠れたマークからは人々を養うための物資が入っていたことが分かる。

 こうなると確かに、俺を含めた今戦ってる門武守機甲のメンバー。その先祖がこの場にいたのかも知れないと思える。そう考えると一層に感慨深く感じるな。こう、歴史に埋もれていたものが自分たちに繋がっているのだってなるとさ。


「歴史的な感動はともかくとして、ここに目的のモノは無いんじゃないか? 倉庫ったってシェルター兼用のだろ?」


「……そうですね。避難地にひとまとめにすることは無いでしょう。こういった場所からは少し離したところ……プロテクトを強められそうな部屋に候補を絞ってみます」


 アザレアがそう言うと、俺の頭にあるマップに次々に絞り込みの結果が反映されていく。

 うーん、仕事が早い!

 そうしてあるのならここだろうと、目星を付けられたのは片手の指で数えられる程度の数。アクセスポイントからでも強固なロックと機密のかけられているのを認められたゲートの奥だ。


「確認できたよ。じゃあ最初の計画通りにまずは手近なところから確認していこう」


「……了解しましたマスター」


 効率からしても奥からさらっていく計画に変更無し。俺がそう告げて歩きだすのに、アザレアら調査チームの乗る車両はタイヤを転がして続く。

 程なく最寄りのポイントに到着した俺は、ゲートにアクセス。強度強化も受けて固く閉ざされていた扉はブリードを確認するなりあっさりと中へと招き入れてくれる。

 そうして踏み込んだ部屋の中で、俺は思わずギョッとさせられてしまった。


「これは……剣か?」


「……外観からはそう見えます」


「しかし、このサイズは……ブリードな俺でもとても振れそうに無いぞ?」


 そう。部屋の中央、そこで円柱形のカプセルに閉じ込められたのは巨大な両刃剣だ。

 エネルギー結晶体で構成されているのだろうその刀身は、色こそ違えどランドのランスカノンのようなものなのだろう。

 だがサイズは明らかに俺たちの扱う結晶槍をも上回っている。イクスブリード・ランドでも振るのに苦心しそうなその巨大さは、今の俺からしたら担いでも無理だろう。

 しかし俺は初めて見たはずのこの巨大な結晶剣の威力を思い出し、鋼の体を震わせる。

 そうだ、俺はこいつの恐ろしさをよく知っている。いや、正確に言えば、俺と一体化したブリードが、だが。


「デモドリフトの剣……そりゃあアイツらが壊さずに取り戻したがるはずだ」


 これが仮にヤツらの手に渡った事を思うと、俺は機体が震えるのを抑えられなくなってしまった。

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