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60:浮上する悪夢

「オイオイオイオォーイッ!? なんだってんだよッ!?」


 そんな事俺が知るか!

 などと俺たち全員を代弁してくれたルーナの叫びに内心で突っ込みながら、俺は浮上するモノに向かって構え続ける。

 レイダークロウの撃破を合図としたかのように海を割って現れたモノ。まだ海に浸かった部分はあるが、見えている部分だけをひと言で言うなら半球状の機械の塊だ。

 その半球体の部分だけでも俺たちの母艦を余裕で収納してしまえるのでは無いかと思えるほどに大きく、ユーレカ基地のメインベースと同じ程度はあるように見える。

 つまりはアレだ。規模こそ小さめだが、これまでの奪還作戦でも出てきた浮遊要塞ってヤツだ!


「これまでのものと同じならばッ!」


 俺がこの結論に至ると同時に、仲間たちもまた我を取り戻す。そして母艦からの指示のままにターゲットへ集中させた火力を浴びせる。

 海水を滴らせた半球体は、瞬く間に降り注ぐエネルギーとその爆発が起こす光の中に再び姿を消す。

 だが射撃停止の指令を受けて、その目映い光が収まると、そこには傷ひとつ無い球体が。

 機械球の下。破壊力に負け、すり鉢状にたわんでいた海面が戻るのに押し上げられるようにして、球形の浮遊要塞はさらに空へ。


「ば、バカな……ノーダメージだと……?」


「そんなはずは……これまでは通じていたんだ! きっと修復速度を上げて無傷に見せているだけだ!」


 こちらの事を意にも介さず空を目指す浮遊要塞へ、一部の機体から砲撃が飛ぶ。しかし連係も無い先走りのそれらは球形の表面を滑るようにしてそれて消えてしまう。

 形状による受け流しにも見えるがそうじゃあない。

 アレは要塞表面のバリアを貫く事ができずに弾かれただけ。さっきの集中砲火も同じように凌いだと言うのなら、散発射撃などが通じる道理は無い。しかしなるほど、それならばただ単純に要塞の巨体らしいパワーで守りを固めているだけと言うわけだ。

 だがそうして落ち着かせた俺を、続いて放たれた声が揺さぶってきた。


「あーら。こっちは出てきただけだって言うのにご挨拶じゃなーい」


「な!? この声、レイダークロウッ!?」


「そんなまさか!? お前はついさっきにッ!?」


 ファルも動転のままに叫んだが、間違いようがない。聞こえてきた声はさっき間違いなく撃破したメカオネエのもの。


「真っ二つにして頭側を完全に破壊したのに、何故ッ!?」


「きっと影武者か、今の声が録音なのだろう!」


「あらあらまあまあーそう思うのも無理無いわよねー? でもどっちもハ・ズ・レ。さっきはよくもやってくれたわよね。死ぬほど痛かったぞ?」


 俺たちの推測をバッサリと間違いだと切り捨ててからの怨み節。

 そのドスの効いた声色に、機体にぞわりとした怖気が。機械の体が震えるだなんて、俺の弱気か、それともファルの反射を繊細に読み取ったためか。

 それはともかく、この怨み方は本物。ならばヤツは即座に復活したって事に――


「オウオウ! 冗談にしちゃあ笑えねえぞ! お前がマジモンだったとしたら、さっきファルたちがぶっ潰したお前が影武者なりなんなりじゃなくてなんだってんだ!? さっきのもお前も本物だって証明して見せろってんだ!」


 気圧される俺を追い抜くようにしてルーナがべらんめえ風味にレイダークロウへ詰める。

 そうだ。俺たち自身の実感は別にして、敵の言うことを丸呑みにしてどうする。要塞から声だけで言ってるヤツが本当に復活した証明にはなってない。


「あーらなーんで敵に手の内の種明かしなんてしなくちゃならないのかーしら? ちょっとくらい自分たちで調べて考えてごらんなさーい」


 が、レイダークロウからの返事は素っ気ない。いや今現在激突している敵にわざわざ種明かしをする道理が無いのはその通り。

 実際ルーナも「冥土の土産は無しかケチ臭い」などと言いつつも、ウインドウに映る顔は予測通りと言った風だ。


「だったら叩きのめして吐かせてやるまで! リードくん!」


「分かった!」


 気を吐くクリスにうなずいて、俺は中のファルと目配せ。


「……確かに、上がったパワーに振り回されたからね」


 消耗からの交代に彼女が納得を示したところで、俺は機体を分離。地表で待つクリスのランドイクスへフリーフォールで向かう。


「ずいぶん無防備にチェンジするじゃない。あいにくとこっちはわざわざ合体を待ってやるほど甘くは無いわよ?」


 怨み心頭だったさっきのひと言を聞いてそんな甘い見立てをするものか。

 ホウライ跡地からまたも飛び立った飛行型。俺を狙って飛んできたその新手の大半はエキドナ付きの空戦隊に打ち落とされる。が、その犠牲を盾にして俺に迫ったものがエネルギーミサイルとバルカンを。

 これに俺はスラスターをチョンと噴かしながらブリードガンを連射。この動きでミサイルを相殺。目前に迫った攻撃を回避する。

 そうして避けられるのを見越してか、飛行トルーパーの数機が俺の流れた先へ先回りしていた。


「体当たりかッ!?」


 まるで速度も軌道も変えない突撃には冷やりとさせられる。が、俺はブリードガンのブレードを起動、回転。歯車の歯のように飛び出した光の刃が特攻機を切り裂いて、爆発が俺の軌跡を描いていく。


「リードくん! 急いで!」


 そうして爆発の音と熱エネルギーに目と耳を塞がれたまま自由落下をする俺の頭に、イクスブリードチームの繋がりを用いた警告が直に響く。俺はそれに反射的に従って上方向へのスラスターを噴かして機体を折り畳む。

 すると極太の熱量の塊が俺の真上を通り過ぎた。

 方角からするにこれは浮遊要塞から。兵隊を目眩ましにした殺意モリモリのビーム砲だ。

 避けた俺を追いかけて、刃物を落とすように降りてくる破壊エネルギーの光。これに俺は安堵の息を呑み込んで地上へ加速する。

 そんな俺を迎えに、真下にランドイクスが滑り込む。無限軌道で土砂を巻き上げながらのその勢いは、合体妨害に突っ込んできたデモドリフトの大型戦車をも跳ね返すほど。

 そうまでして迎えに来てくれたクリスに答えるべく、俺は車モードのままにランドイクスのハッチへダイブ。


「ふんッ!?」


 そして四本の脚で機体を持ち上げつつ、クリスが気合を込めて突き上げた腕の動作を再現。結晶質のランスカノンをエネルギー砲へぶちこむ。

 合体によって高まったエネルギー、それを突き上げ解き放った力は圧し切りにくるパワーと拮抗。その直後に貫き返す。


「あーらま……アレを防ぎきる? あそこまでのパワーがあるだなんて聞いてないわよー?」


「これを次に受けるのはお前たちだ! なんの企みがあるにせよ、浮かせておいて良いものでもあるまい。叩き落としてから何もかもを洗いざらいに吐かせてやるぞ!」


 こちらの予想以上のパワーに絶句するレイダークロウへ、クリスと俺は湯気を立てる槍を向けて撃墜を宣言する。と、同時にランスカノンを発射。撃墜してやると言った時にはすでに実行済みなのだと言わんばかりに。

 遠く空間を穿ちながら、まるで拡散しない鋭利なエネルギー砲。強固に収束したそれは打撃力を無駄なく標的へと叩きつける。

 だがこのランスカノンを受けて、浮遊要塞は小揺るぎした程度。装甲表面に張られたバリアを滑り散らされてしまう。

 バカな。この一撃はこちらの、ユーレカチームの最大火力と言っても良いんだぞ。少なくとも徹甲の点ならば先の集中砲火を上回る。だというのに貫けない。その防御力に俺もクリスも声を上げられずにいた。

 だがこうして強固な守りを見せつけられたのは序の口に過ぎなかった。続いて聞こえて来た音声に、俺たちは完全に声を奪われてしまうことに。


「いつまでも遊んでいるなレイダークロウ。計画を進行するんだ」


 その声もまた俺たちが以前に討った、倒したはずの敵幹部のモノ。スクリーマーのモノだったからだ。

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[一言] この記憶を継承した復活……まさかコイツら……!
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