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50:見つけたのはまさかのモノ

 異世界へのゲート。

 惑星デモドリフトの一角でそれを見つけた俺たちは、即座にその装置を起動して帰還……とはならなかった。

 発見するなりに待ち伏せのに襲われたとか、装置が囮で仕込まれていたトラップごと爆発したとか、そういうことではない。


「まさか単純に故障してるとはね」


「これを俺たちへの侵略に使ってるワケじゃ無かったとは……」


 ルーナがぼやいたとおり、ただ故障のために起動させることすら出来なかった。それだけの話だった。

 だから俺たちはこのゲートを一度限りでも使えるようにするために、修復作業に入っている最中ってわけだ。

 分担は小さくて五本指の使える俺がメインで、ルーナのシーイクスは足場や照明とかでサブって感じで。

 今もシーイクスを踏み台に、ゲートのメンテナンスハッチの中で不足したパーツを埋めたところだ。


「しっかし、ゲートはブリードが壊したんだろ? それで故障したまんまってことは、新しく作ったってワケ?」


「いや、そもそもゲートって一つじゃなくて、制御してるコアユニットと繋がったのがいくつかある、らしいんだ。家の出入口に使えるのも玄関一つじゃ無いっていうか……で、ブリードが壊したのは、その戸締まりと行き先を制御してるコアユニットってことで」


 俺の解説がまずいのか、ルーナからは「ほーん」と気のない相づちが。

 しかしだとしてもこのゲートが修復の途中で放置されているのは不自然だ。

 コアユニットの側に制限があったとして、使えるゲートはあって損があるものじゃないはず。

 だと言うのに整備兵型のトルーパーの影も形も無い。まるでもう使う予定もないと放棄してしまったみたいじゃないか。


「……で、修理はどうにかなりそう? 動かせそうなん?」


「まぁ、ブリードの知識があるから、今のところはなんとかなってるってところ」


 パーツ交換程度だから順調に進められてるとは思う。だが根っこのシステム回り、それこそコアユニットとかを弄らなきゃ……となるとお手上げなんだよな。


「まあでも、制御コアとの接続自体はできてるようだし、行き先の設定もなんとかなる……とは思う」


「なんだい、歯切れの悪い。しゃんとしな。不安要素があるならハッキリ言いなっての」


「ああ、うん。俺は本職の整備士じゃないし、修理やれてる知識も転がり込んできたみたいなもんだし、それで修理できたら出来たでヤツラに利用されやしないか、なんて考えるとなぁ」


「言えたじゃあないか……と、言いたいが相変わらず考えすぎだっての。まず集中して直して、無事に仲間と合流してからの話だろ?」


「それは……そうだろうけども」


「けどじゃなくて、そうなんだっての! 考えて動けば結果は着いてくる。その先はその先だってーの!」


 心配事をバッサリと切り捨てられてもやっとしないでも無い。けれどルーナの言うことは正しいってのは分かる。

 とにかく今は俺たちの世界に、ユーレカに帰る事だけを考えて、帰り道の修復に集中する。

 そうして大壁一枚をまるごと使った装置全体を弄り回すこと小一時間。どうにかこうにか起動できそうなところに持っていくことはできた。


「おう、お疲れちゃん。なんでえ言ってるよりも出来るもんじゃあないか」


「メカの体に教えられてどうにかってところだって」


「謙遜すんない! それで、動かせそうってことはこれで帰れるって事かい?」


「いや……それが、もう一つやらなきゃならんことがある、みたいで」


「お? そのやらなきゃならんことってのは? 修理にろくに手を出せなかった分、アタシが活躍出来る仕事だとありがたいんだがね?」


 ここまできてもう一歩ある。と、気まずさを抱える俺を、ルーナがギザ歯を見せて笑い飛ばすのに、俺の頬も自然と緩む。

 俺が気を楽に出来るようにしてくれる彼女に、俺はありがとうとひと言挟んで、やるべき事を伝える。


「このゲートの行き先を俺たちの世界に設定しなおさないといけないんだ」


「なんだそんなこと……って、わざわざ言うからにはちょいと面倒な手順がいるってワケね」


「話が早くて助かるよ。別のエリアにまで行かなきゃ出来ないっぽくてね」


 言いながら俺はシーイクスにマップデータを送信。

 行く必要があるエリアというのは、このゲートのある空間から離れた区画。ほぼ中央と言う位置にあるゲートコアユニットのあるエリアだ。そこで直接にこのゲートの行き先を設定し直さなくちゃならない。

 ここのコントロールユニットが修復出来たのならその必要も無かったんだけども、ほとんど一から組み立てなくちゃならないような状態だったからな。


「なんだいそんなこと。んじゃちゃちゃっと行っていじってくるかね。ついでに爆弾でも仕掛けてやってさ。上手く行きゃあ大金星さね。何せデモドリフトのゲートを封じれるんだからさ」


「まあ、全部上手く行けばね。やり過ぎて俺たちが帰れなくなったら意味ないし」


「分かってるって。まずはちゃんと帰ること。他は上手く行ったら美味しいなって事だっての」


「まあ、それなら。じゃあこのまま移動は頼むよ」


「なんの。この中を泳ぐのにも慣れてきたところだからね。振り落とされないようにしてなよ」


 ルーナがすいっとコックピット内で体をくねらせると、シーイクスが目的地に続く通路へ。

 当然、ここまで来てやられてたまるかって待ち伏せを警戒して物陰周りは特に慎重に進む。けれどもコアのあるエリアまで何事もなくスムーズに進むことが出来た。


「ここ、マジで敵の本拠なんだよな? しかもここほとんど本丸だろ? ここまでもぬけの殻なことあるかよ。気持ち悪い」


「まったく同感だよ。でもブリードはここがそうだって言うんだよな」


 警戒の空振り続きで気疲れしたルーナにうなずき返して、俺はコアユニットエリアの扉を開く。

 壁に身を隠したシーイクス。俺はさらにその上から引き金に指をかけて開いていくドアを見守る。

 左右、上下、斜めと幾層にも重ねられた装甲隔壁が順番にスライド。その動きが終わった俺たちはそれぞれにそれまで遮断されていたレーダーの感を確かめる。

 だがこの重要な部屋を守る者の反応は何もない。

 ステルスしてる可能性もある。

 通信越しにうなずくルーナがジリジリとシーイクスを泳がせるのに任せて、俺もまた周囲に目を配る。


「……玉座、のつもりか?」


 その一方で真正面、大広間の奥の装置を見るルーナがつぶやく。

 その感想も言い得て妙ってところか。

 微かに唸り、鈍く輝く巨大な円。そこから下へ伸びた光のレールは、広間の中で一段高く盛り上がったところで台のようなものとぶつかっている。

 光のレールが背もたれで、コアユニットから漏れる輝きがその頂点を飾るモノってね。


「ブリードによれば、暴君はアレに座って命令を飛ばしてたらしいけれどな」


「は? マジで玉座じゃん。てか、アレを椅子にするようなサイズだったっての?」


 ルーナが仰天するのも無理はない。何せデモドリフトの玉座にもなってたコントロールユニットのサイズはシーイクスを乗せたって余るほどだ。アレにふんぞり返って座れるとなると、イクスブリードになった俺でも見上げなくちゃならない巨体になる。

 しかし巨体と言っても……。


「まあ、母艦サイズどころか町くらいありそうなのと戦ってきてるんだから、デカさなんていまさらだったか」


 そうなんだよな。これまでも大物を相手取って来てたんだから、サイズだけならいまさらの話なんだよな。


「とにかく、ホントに何もいないなら、今のうちってね」


「ああ。幹部連中の誰かが飛び込んで来ないとも限らないし……」


 と、答えかけたところで、俺は玉座の下辺りに何かがあるのを見つけた。

 それは大型の機械の残骸。元は人型だったのだろうと思われる物だ。

 俺はそれが何か確かめようと目を凝らして、思わずギョッとなる。


「……おい、おい、まさか……!」


 無惨にも打ち捨てられたそれは、かつて玉座に座っていただろうモノ。つまりはこの星の支配者で、侵略者の首魁。そのはずのデモドリフトだ。

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