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28:ビーム飛び交う戦場に生身でフライ

 ちくしょう、アイツら時も場所も構わず湧いて出てきて!


「おかげでこんなところ飛ばなきゃならなくなったじゃねえかよ!」


「相手が備えていないところを突く。それが戦闘というものですから。やられた側としてはたまったものでは無いですけれども」


「それは、そう!」


 下に乗るアザレアの冷静なツッコミに、やけっぱちな返事をしつつ体を振る。この舵切りでグライダーを傾けて流れ弾から逃げる。

 そうなんだよ。俺が今ブーストグライダーで飛んでるのは、デモドリフトの飛行機兵隊と門武守機甲空戦隊が飛び交う戦場の真っ只中なんだよ!

 どうしてこうなった。

 というのも、アルテルの敵出現の報告を受けた俺たちが基地に連絡したら、そっちでも確認済みでエキドナの出撃準備中なんだと。

 ならこっちは避難を優先して、迎えが到着してから参戦しよう。それが普通のプランだし、そうしようって意見だって出た。でもルーナが――


「飛べるヤツは空中で合流すれば良くね?」


 なんて言い出すから! それにアザレアまで「空中戦ならイクスブリード・スカイの出撃が早い方が良いでしょう」なんて言うから!

 それでアザレアが支援もするからって事で、グライダーに燃料補給してーの、俺と二人乗りにしーの。そんなこんなで流されるまんま、まさに風に流された凧のように俺は空の戦場にテイクオフさせられたってワケで。


「嘆いていても周りの弾が減るわけではありませんよ、マスター」


「分かってる! それもこれも基地を留守にしてる間にヤツらが攻めてきたから!?」


 一秒でも早くエキドナにたどり着いて、デモドリフトの手下どもを退治してやる!

 だから最短距離で突っ切りたい……のだけれども!


「そのコースは危険です」


「そうなのぉ!?」


 アザレアに待ったをかけられるし、ホントに直進加速してたら直撃コースのエネルギー弾やら機械兵が横切るし。

 なんでこんなことが出来るのかといえば、エキドナのレーダーや、オペレーターに入ってる同胞アンスロタロスたちとのリンクで戦場を俯瞰できているからだとか。

 じゃあどこを通れば最速で着くのかってナビを頼めば良いだろってなるだろうけども。


「右旋回から急制動。翼を地面に垂直にして0,2秒加速……」


「分かった。危ないコースに入りそうな時だけにしてくれ」


 皆まで言ってくれるなって止めたくなる。そうなるくらいにどうやれってのって細かなアクション指示してくるんだもんな。こんなん空に生きてる人間でも、やれって言われて出来るかよ。

 とにかくたどり着けなきゃまず意味がない。遠回りが近道になるって気持ちでやるしかない。


「それでは遠回りになりすぎです。ですので左へ舵を切って加速を……」


「りょーかいだ!」


 だのに慎重にやろうと思えばやりすぎだってなるし。これはやっぱりアザレアにグライダー任せた方が良かったかな。その方が絶対に効率良かっただろ。

 そんなこんなで、アザレアと出撃済みの空戦隊、それにエキドナにもおんぶにだっこ状態ながら、俺はグライダーをエキドナの甲板に着陸させる事に成功する。


「ああー! もう死ぬかと思ったぞぉお!!」


「やっとの思いで着艦したとこ悪いけれど、これからが本番よ」


「分かってますよアーシュラさん!」


 憂さ晴らしの叫びをやり続けてる場合じゃない。風が叩きつけてきて、敵の弾やらも飛んで来かねない甲板からはそそくさと撤退。出撃待ちの機体、空戦機らが出待ち中の格納庫へ。

 そうして借り物のグライダーを整備班に預けて自分の持ち場にまで走ろうってところで、アザレアに背中を捕まれる。


「こちらです、マスター」


「ぐえ!? 何すんのさ、だってブリードのいつもの場所は……って、あるのぉ?」


「先んじて運ぶべきだと判断しましたので」


 文句を言う間も無く示された場所には、ピッカピカのトリコロールの車、ブリードが。

 こんな下準備にまで手を回してもらっちゃって、失敗なんか出来ないじゃないかよ。

 やべ……なんか震えてきた。


「やはりリードに先を越されてしまったか。弱気を言ってた割にはやるじゃないか」


「スラスターと優秀なナビのおかげさ。俺一人じゃ何回オダブツしたって到着できたかな」


 後ろからかかったファルの声に軽口を返したが、そこに震えは出てなかっただろうか。

 パイロットスーツを受け取って愛機スカイイクスへ向かう背中からは、多分分からないくらいだったと思いたいけれども。


「出る前から合体した状態で行きたい。リードも遅れないでくれ」


「俺にはスーツも要らないんだから、そうそう遅れたりしないさ」


 言いながら俺はブリードのフロントに手を乗せる。そのまま一体化に入った俺に、アザレアは「御武運を」とひと言かけてくれる。

 武運ね。まあ幸いにも、味方には恵まれてここまで生き残ってこれてる。運勢って言うなら結構良いもの持ってるのかもしれないな。

 そんなことをつらつらと考えながら、俺は即合体出来るように車モードのままスカイイクスに機体を寄せる。

 このいざ出撃って時の緊張感……まだ場数が足りないのか、メカのボディに溶け込んでもヒリヒリくるなあ。

 そんなワケで色んな意味で固くなっている俺は、唐突な警報で飛び跳ねる事に。


「こちらへ突撃してくるのが!?」


「弾幕! レーザー機銃をばらまいて!」


「!? 集団が中央の一機を庇って!」


「ホーミングレーザーを抜けた!? この一機は!!」


 まるで実況解説のようなオペレートに被せるように衝撃がエキドナを襲う。


「ハロー、レジスタンスのみなさーん」


 モニターされた甲板。そこでくねりとしなを作った有翼のヒト型。低い男声で挨拶するソイツは――


「レイダークロウッ!?」


 甲板に取りついたデモドリフト幹部はゆったりとその目を瞬かせると、手に持つ銃を格納庫へ向ける。

 これにマズイと思った俺はとっさに変形。目の前の隔壁に張り付く。同時に連続した衝撃が隔壁越しに。それは程なく俺を直接に襲って、その威力でもって壁から押し離す。


「あらなるほどブリードがいたのね。ハロー」


「のんきなあいさつを!」


 大穴の開いた隔壁からこちらを覗き込んで手を振るレイダークロウへ、俺はブリードガンを発射。風穴を抜くそれを、メカのオネエはわざとらしく声を上げながら身を引いて回避。そこからすかさずエネルギーバルカンを応射してくる。が、その狙いは俺じゃない。


「ぐぅッ!?」


「マスター!?」


「いいから、機体の影に!」


「あらあらお優しいこと。小さいのを見捨てられないのって辛いわよねぇ」


 そう。ヤツが狙ったのはアザレア、それにスカイイクスらの出撃準備を進める整備班の人たちだ。

 俺の反撃をスルリとかわしてはこっちにエネルギー弾丸の雨を降らせてくる。それを俺は手近な装甲板と機体で受け止めて、中への被害を最小限度にと走り回る。

 もちろんただ射たれるまま耐えるだけじゃなく射ち返しもする。けれどヤツのおちょくるような足運びは乱れもしない!


「クッソ! スカイイクスの、準備はッ!?」


「隔壁に取りつかれていては、乗り込むにも!」


「そりゃあそうだ!」


 味方による逆転の目を早くと求める俺だけれど、この状況が出させてくれなくしてる。外のホーミングレーザー機銃も、逆にここを屍の山にしかねないから使えない。どうしたらいい!


「あら? あらあら。よーく見たらそこらで走ってるのってこっちの知性体サイズの同胞? いや、有機生命体とのミックスっぽいからレジスタンスかしら? こんなのまでいたのね」


 その間に向こうはこっちの人員のスキャンまで済ませてたのかそんな事を呟く。しかし感心した口振りに対して、続いた言葉はとんでもないものだった。


「なるほど、これは潰しておかなくちゃだわ。まあ掃除の中に優先順位が出来る程度だけれど。反逆者は野放しに出来ないもの」


 ふざけているのか!?

 コイツらデモドリフト、アンスロタロスのみんなを最優先で潰して回るつもりだと? それも片付けの手順のように!

 その反感に任せて、俺はマグナムショット! 穴だらけの隔壁もろともにメカオネエを吹き飛ばす!

 そしてすかさずにダッシュ。ヤツのボディにブリードの重みと推力をぶちかましてやった。

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