妹に相談してみた
Lillianが妹になったのは、ちょうど十年前のことである。
髪は銀色、瞳の色は透き通るような緑色。よく似てない兄妹だと言われるけれど、それもそのはず、僕達は血が繋がっていない。
リリは父親の再婚相手の連れ子だった。
でも僕は本当の妹だと思っている。幼い頃からずっと一緒に生活しているからだ。
ウチは両親が家を留守にすることが多い。
だから、僕が人生の中で最も長い時間を共にしているのはリリである。
夜ご飯の時間。
僕はリリに今日の出来事を伝えた。
「──僕は、どうすればいいかな?」
「簡単です。男らしくなりましょう」
リリは食事を中断すると、机の上に手を出した。そして白くて長い指を一本ずつ伸ばしながら言う。
「ひとつ、妹とお風呂。ふたつ、妹と添い寝。みっつ、妹と一線を越える。以上を達成した時、一颯さんはワンランク上の男になるとリリは確信しています」
「リリ、何度も言ってるけどダメだよ。もう子供じゃないんだから」
僕がいつも通りの返事をすると、リリは残念そうに俯いた。
「一颯さんはリリに魅力を感じませんか?」
「まさか。とても魅力的だよ」
「ならどうして欲情しないのでしょうか?」
「当たり前だろ。妹なんだから」
「リリは義妹です。妹であり、幼馴染のような存在でもあります。要するに両方の属性を持つヒロインです。そろそろ真剣に攻略を考えては頂けないでしょうか?」
僕は苦笑する。
リリは賢くて、とても頼りになる。そして僕よりも身長が大きい。でも精神的には未だ子供っぽい部分が残っているようで、こんな風に少し変わった甘え方をしてくる。
「今日のアピールはこれくらいにして、一颯さんに質問です」
「はい、なんでしょうか」
「先程のお話で登場した方に、一度でも理由を問いましたか?」
「……いいえ、何も言えなかったです」
リリは溜息を吐いた。
「一颯さんのダメなところです。疑問はその場で言葉にしましょう」
「……はい」
「落ち込んだ時は、妹の膝枕がオススメです。如何ですか?」
「……遠慮しておきます」
僕はまた苦笑して、食事を再開する。
リリの言う通りだ。東雲さんの行動に疑問があるならば、本人に質問するしかない。
……僕もスパチャ(物理)するか?
そこそこ真剣に考え始めたところで、リリが口を開いた。
「提案です。配信で相談しましょう」
「配信は、その、本人が見てるかも……」
「好都合です。バーチャルの力を借りて、本人に伝えるつもりで配信しましょう」
魅力的な提案だ。
確かに、風早一颯としては言えないこともVtuberのイツキとしてなら言えると思う。
「……大丈夫かな」
「失敗を恐れることはありません。何もかも失うことになっても、リリだけは一颯さんの味方です。だから安心して挑戦してください」
妹の心強い後押し。
兄として、ここまで言われて何もしない訳にはいかない。
「ありがとう。やってみるよ」
そして食事の後、僕はいつもの時間に配信を始めた。