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次は、絶対に

 僕たちは、なりふり構わず宣伝をすることにした。


 東雲さんがSNSなどで友人を誘ったり、

皆で交代しながら校内を歩き回ったりした。


 リリも手伝ってくれた。

 彼女はインターネット関連に強いから、直ぐにホームページを作って試聴できる環境を用意してくれた。


 二日目は、そのサイトのQRコードを巨大なボードに貼り付けて校内を歩き回った。


 少しずつ客足が伸びた。

 一時は行列ができたくらいだ。


 大変だったけど、嬉しかった。

 ああ、自分達で作ったモノを売るのって、こういう感じなのか、と思った。


 だけど、後になって思う。

 リリの提案で実行したような宣伝は、事前にやるべきことだった。


 それを本番までに思い付けなかった。

 それが、僕たちの現在地。


 当然、上級生達とは勝負にならなかった。

 一年生だけの売上で見ても、その上級生の手伝いによって報酬を得ただけのクロ達にも勝てなかった。


 もっと、やれることがあった。

 何もかも後になって気付かされる。


 こうして一年目の学園祭は、とても悔しい思い出として、僕たちの心に刻まれた。



 *  *  *



 普通の学校生活が再開した日の放課後。僕は東雲さんに呼び出された。


 最初の時と同じ空き教室。

 彼女は、窓の外を見ていた。


「こんにちは」


 なんとなく、挨拶をした。

 彼女は少し間を開けて振り向くと、どこか遠慮がちに片手を挙げて苦笑した。


「学園祭のことですか?」


 僕から質問すると、彼女は珍しく俯いた。


「……どう、だった?」


 それはきっと色々な意味が込められた言葉だった。僕は言葉を探したけれど、上手い表現が見つからない。


 しばらくすると、先に彼女が口を開いた。


「ごめんね」


 どうして謝るのだろう。

 彼女は不思議に思う僕を見て言う。


「全然準備が足りなくて……せっかく協力してくれたのに……だから、ごめん」


 僕は唇を噛み、言葉を飲み込んだ。

 

 謝る必要は無い。

 だって僕は感謝している。

 東雲さんが声をかけてくれなければ、誰かとチームを組むことすら難しかっただろう。


 だけど彼女の気持ちも分かる。

 すごく楽しかったけど、結果は残念だった。


「次は、もっと頑張りましょう」


 だから僕は、その言葉を口にした。

 彼女は驚いたような目で僕を見る。

 そして上を向いて長く息を吐くと、いつもの笑顔を浮かべて前を向いた。


「それな。次、ゼッタイ勝つから」


 それはとても東雲さんらしい言葉と表情だった。

 

 あらためて思う。

 僕は、彼女のようになりたい。


 今回は彼女の背中を見ているだけだった。

 だから次は、せめて肩を並べて挑みたい。


「はい! 頑張りましょう!」


 次は絶対に後悔なんかしない。

 この日僕は、そう胸に誓ったのだった。



 ここまでお読みいただきありがとうございました。


 本作は、ここで終了となります。

 私の方も次はもっと満足できるラブコメを執筆するため頑張ります。また作者の名前を見かけたら、どうか読んでやってください。

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