表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/49

学園祭に向けて 1

「音声作品ってこと?」

「そうそれ!」


 山根さんの質問を受け、東雲さんはパチっと指を鳴らした。


「春高のブランドって、やっぱ学力じゃん? 聞くだけで効果ある教材とか中高生に受けると思うんだよね」


 僕は素直に頷いた。

 今日まで何も考えていなかったけれど、言われてみれば納得感しかないアイデアだ。


「でもそれ競合多くね?」


 山根さんが自然な指摘をした。

 それを聞いて、僕はまた自然と頷いた。


 教材を売る。きっと多くの生徒が同じことを考える。結果、お客さんを奪い合うことになる。


「良い質問です」


 東雲さんは突然先生みたいな口調で言う。


「こちらのデータをご覧ください」


 まるで質問を予測していたかのように、東雲さんはポスターを捲った。どうやら複数の用紙が重なっているようだ。


「過去五年間における教材の出品数は平均して七点でした。音声作品に限れば二点です」

「結果は?」


 山根さんの質問を聞き、東雲さんはニヤりと笑う。


「一位を取った例は過去一度も無いですね」

「ダメじゃん」


 山根さんが容赦のない指摘をした。

 東雲さんは存在しないメガネをクイっとして、得意気に言う。


「あたしが無策だとでも?」

「おー? ハードル上げ上げだぞ?」


 東雲さんが不敵に笑う。

 どうやら勝算があるらしい。


 ……やっぱり、凄いなあ。


 今日の勉強会、僕は勉強することしか考えていなかった。でも東雲さんは既に学園祭のことを見据えていたようだ。


 本当に同じ高校生なのだろうか?

 少なくとも半年は同じ授業を受けたはずなのに、何だか劣等感を覚えてしまう。


「我々だけが持つ武器! それがこちら!」


 ナヨナヨした思考を中断して顔を上げる。

 東雲さんは僕と幻中さんの間に身体を向けて、大きく両腕を広げた。


 ……どちら?


 僕と幻中さんの間にあるのは勉強道具だけ。もっと先にも本棚しかない。


 本当に何だろう?

 首を傾げると、彼女は笑いながら言った。


「風早くん達のことだよ?」

「僕ですか?」

「じゃん!」


 東雲さんは時代劇みたいにスマホを僕に突き付ける。その直後、聞き覚えのある音声が流れた。


「録音してたんですね」

「そう! てか意外。もっと大袈裟な反応すると思ってた。自分の声って、なんか恥ずくない?」


 言っていることは分かる。喋っている時の声と機械から聞こえる声は別物だ。僕も最初は戸惑った。

 

「聞き慣れているので」

「何それ詳しく! いや、やっぱ待って、今はダメ。また今度お願い!」


 心底悔しそうな表情。

 べつに大した内容じゃないから今話しても良いけど……。


「てかシノ、本当に風早の声好きだね」

「マジそれ。超ツボ」


 僕があれこれ考えていると、微妙に背中が痒くなる会話が始まった。


 なんとなく二人から目を逸らして、そこで妙にそわそわしている幻中さんの姿に気が付いた。


「あの、風早くん、達、というのは?」



しばらく更新ペース落ちます。許して。許して。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

▼この作者の別作品▼

新着更新順

 人気順 



▼代表作▼

42fae60ej8kg3k8odcs87egd32wd_7r8_m6_xc_4mlt.jpg.580.jpg c5kgxawi1tl3ry8lv4va0vs4c8b_2n4_v9_1ae_1lsfl.png.580.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ