1/49
プロローグ
「やっぱ人体より声帯っしょ!」
昼休みの時間。
今日も教室内に東雲さんの声が響き渡る。
長くて綺麗な金髪。スラッと伸びた手足。耳にはピアスで爪はカラフル。多分化粧もしてる。派手な外見の彼女はこのクラスの中心人物である。
「顔なんて皮剥いだら全部一緒じゃん?」
その猟奇的な発言は母親の口癖だそうだ。これは僕だけが知っていることではない。多分、クラス全員が知っている。
彼女の声は、とても良く通る。
だから嫌でも耳に入ってしまうのだ。
素直に尊敬する。
僕は自分のことなんて話せない。恥ずかしいからだ。
「あたし人間の本質は声帯に現れると思うんだよね」
その言葉にこっそり頷いた。
彼女の声は、何事も恐れない人間性を体現している。
正直、憧れる。
もしも願いが叶うなら僕もあんな風になりたい。
……友達になれたりしたら、何か変わるのかな?
ありえない妄想に苦笑する。
彼女との共通点は、同じ高校に通っていることだけ。それ以外は何もかも違う。友達になるどころか、卒業まで一度も会話する機会が無いかもしれない。
ほんの少し前まで、そう思っていた。






