0-1 異世界へ
「……最後に休んだのいつだろう……」
半年近く、毎日出勤している。
15時に会社に来る。夕、夜、朝と働く。朝10時に家に帰る。そんな生活が続く。
定時は9時から18時。
しかし、まったく守られていない。夕方の処理でバグが見つかる。客の始業までに修正が必要になる。夜通し修正し、朝、間に合う。それをずっと繰り返している。
壁には、『リリースまで−80日!』とある。とっくにリリース日は過ぎているのだ。しかし、バグが収まらない。いつ最終リリースできるか皆目検討つかない。もう俺の精神は壊れかけ、吐き気がおさまらない。
今は夜21時。会社近くのコンビニへ、夜めしを買いに行く頃合いだ。
会社は駅前にある。コンビニの近くには居酒屋が並んでいる。その周辺は酔っ払いの会社員ばかりが目立つ。
「最後に飲みに行ったのはいつか? 周りは楽しそうだが、俺は寝る以外ほぼ仕事……どうしてこうも違うのか……俺の能力が無さすぎるのか……」
すでに精神がやられ、自己嫌悪に陥っていた。その時、後ろから酔っ払いがぶつかってきた。疲れていた俺は、前方に倒れる。マズイ、前に手が動かない。これは頭から行くぞ。
――グォン
鈍い音がした途端、俺の意識はなくなってしまった……
――第3女神室
「ねえ、いい魂見つからないかしら?」
第3女神という名札が置いてある机で、ネイルをいじっている女性が喋っている。
「最近は寿命伸びましたからね、あのユニバースは」
部下らしき男性が、そう答えながら、目まぐるしく変化する名簿を見ている。
「これなんてどうでしょう?」
その名簿には、若くして死んでしまった男性の経歴が載っていた。
「良さそうね。あらかわいそう、専門学校卒業して、ブラック企業に勤めて、身体を壊して、頭打って、ああ、25歳で死んじゃったのね。異性との縁は、ええと、人生でまったくないじゃない!
こんなプライベート充実してない人生、惨めねぇ。でも、こんな子、ほかに楽しみがなくて、よく頑張るから、いいのよねぇ。取られないように、謁見の間に早く連れてきて」
部下が早速その魂を連れてくるべく、部屋から急いで出て行く。最近、あるユニバースの神々が、なりふり構わず根こそぎ魂をかき集めていた。それに取られないように、この女神のチームも必死だった。
「今は、確か、えーと、9勇者月必要なのよね」
プロローグあと一話だけ続きます。