不穏
「脱走したと思われてないかな…?」
『いや、それは無いと思うけど。あ、森の前に明かり』
安楽の森から戻ってくると、森の前で光の魔道具を点けながら立つロイドを見つけた。
「幸福はどうだった?」
「ロイドさん!なんで幸福のところに行ったって…」
「飛んでいった方角的にな。集中出来てねえのには気づいてた、気になる事でもあったんだろ?ここはあの森に近いからな」
「まぁ、そうです。確認したい事も一応確認出来ましたし、戦闘にもならず無事戻れたんで結果としては最良かなと」
「生きて帰ってきたのは確かに重畳だ。生きてりゃ大抵の事はどうとでもなる」
にっ、と笑うロイドに微笑み返すが、ふとロイドがここにいた事が気になった。
「ところでロイドさんはなんでこんな所に?俺の行き先がわかってたなら探しに来た訳じゃないですよね?」
「わざわざ出向いてやったんだろ。夜に森のモンスターに襲われながら帰りてえなら構わねえけどよ」
「それはまぁ……それでもいいかなとも」
「馬鹿言ってねえでとっとと帰るぞ!」
ロイドに頭を殴られたショウは頭を押さえながらロイドの後を追って森へと入っていった。
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人類の好奇心は未知を求め、多くの未開の地が切り拓かれていった。それはダンジョンにも同じ事が言える。調べ尽くしたと思っていても尚、更なる可能性を求めた時、稀に新たな未開拓領域が見つかり、その先には更なる謎が待ち構えている事がある。それが良きものであるかは定かではないけれど。
「遺跡の壁が壊れたのには焦ったがまさか更に奥があるとはな」
「間違いなく誰も入ったことの無い場所っしょ!これは金銀財宝の予感〜♪」
「油断するでない。罠もあるかもしれんし、何が出てくるかも分からんのじゃ」
「死にさえしなければどうにか治癒しますから死ぬのだけは注意してくださいね」
ダンジョンと化した遺跡の奥、偶然壁を壊し道を見つけた冒険者一行は奥へと進んでいく。通路は一本道で罠も無く、肩透かしではあったが奥の開けた空間に出ると顔色が変わっていった。
「おぉ……!!」
「こりゃすげぇや!」
眩く光る宝石や何かモンスターを象った金の置物、装飾の散りばめられたアクセサリーなどが部屋中に転がっていた。
「なんだあれ……?」
特に目についたのは部屋の奥の台座に鎮座された宝であった。
「これ琥珀か?こんなでかくて整ったのは見た事ねえよ。しかも中に生き物みたいのが入ってる!これは高く売れそうだな〜♪」
「美しい……」
台座には人の頭を象った石像が乗っており、その首には琥珀のペンダントがぶら下がっていた。その宝石に皆が魅入る中、1人だけ様子が違った。
「おい、どうした?」
「いえ……何故か、そのペンダントが恐ろしく思えて……」
「なんだ?もしかして呪われてたりするのか?」
「いえ、呪われてるわけではないと思いますけど……」
「なら問題無いだろ。気にし過ぎだよ、ハッハッハッハ!」
顔を蒼白にして震えている女性冒険者を一行のリーダーは大袈裟と笑い飛ばす。
「宝は詰め込み終わったか?」
「終わりましたよ!これで俺達、大金持ちっすよ!人生勝ち組!」
「後は戻るだけじゃな。いくら宝を手に入れても無事戻れなければ意味がないぞ、浮かれてばかりもいれんぞ」
「わかってますよ〜」
こうして冒険者パーティは立ち去っていった。今回の仕事はきっと成功なのだろう。彼らの足取りは軽い。だが、良きことばかりとは限らない。遺跡の奥に閉じられていた通路の先にあった財宝、そこへと通ずる道が偶然にも開かれた。未知の先にある物が必ずしも良きものとは限らない、ならばそれが仮に悪しき物だったとして、それがいつ自らに牙を剥くかは、誰にもわからない。
(語り部)
「遺跡に何があるのか、ロマンではあるけれどインドア派な僕には縁遠い場所だね。───行けるなら行きたいかって?いや全然?ロマンを感じるからってやりたい事とやりたくない事はあるだろう?僕は遺跡探索より本を読む方が性に合ってるよ」




