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STORY ~白銀の物語~  作者: 黒羽カウンター
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失敗と気がかり

「はぁ〜〜、駄目だ」

『それはどっちに対して?』

「どっちもだ」


 両手に魔剣を握りながらその場に座り込むショウにイブが尋ねるとショウはため息混じりにそう答えた。

 腕試しの後も行われた模擬戦、結局一度も攻撃を防ぐ事も当てる事もできなかった。そして教えられた結合魔法を試していたが、これも成功出来ずにいた。


「上手くいかないもんだな……」

『そりゃそうでしょ、新しい魔法なんて直ぐ使える事なんてあまり無いって。私じゃあるまいし』


 何でも一目見ただけで出来てしまうイブに言われても嫌味でしかなかったが、ショウは気にも止めない。


『昔より魔力操作も上手くなって多少は使いやすくなったかもしれないけど、それでもその魔法は難しい。特にその魔剣達に使うのはね。初めは他の物を使った方がいい』


 イブが少し離れた所に生えてる木に指を向けると真空の刃が木を切り倒す。切り倒された木を宙に浮かせ、風で木をばらばらにしていき、整形された木の槍をいくつか造り出した。その内の1本を手に持ち、もう片方の手に炎を出す。


『最初は詠唱しながらやった方がやりやすいよ。詠唱には魔法名と同じ、言霊が宿る。魔法の発動を補助し、効果を増幅させる役割があるんだから』


 双方に魔力を込めていく。


【──既知を重ねて未知を見出だせ──異なる有から新たな有を──新たな有から更なる可能性を──紡ぐ為の名を示す】


 槍と炎を合わせると、強い光に包まれていく。


結合魔法ジョイント


 光が収まると、イブの手には赤みを帯びた木の槍が握られていた。


『これで他の物を突いたりすると……』


 別の木の槍を宙に投げ、結合魔法を施した木の槍で突くと、突いた部分が粉々に砕けて残った部分も燃えてしまった。


「おぉ…!」

『それと…』


 結合魔法を解いて炎を分離させ、分離させた木の槍を宙に放る。すると、再び木の槍が光り、今度は薄い緑の様な光を帯びる。


『それを突いてみ?』


 言われるままにその木の槍で宙を突くと槍の先から突風が吹き出す。


「今度は風か!それに今の、手にせずにやってたな」

『慣れれば手にしてなくても使う事が出来る。いずれは出来るようになるよ。コツは対象に万遍なく魔力を行き渡らせる事、2つが混ざり合い、混ざりあった先を明確に想像する事、そして結合させた後もその状態を維持させ続ける様魔力を途切れさせない事!』

「ふむ…なるほど」


 手にした木の槍から風が霧散し、元に戻る。手に火の玉を浮かせ、詠唱を口にする。


【──既知を重ねて未知を見出だせ──異なる有から新たな有を──新たな有から更なる可能性を──紡ぐ為の名を記す】


 光り輝く2つを合わせ、魔法名を呼ぶ。


結合魔法ジョイント!】




「これは……」


 ショウの手には燃え盛る木の槍が握られていた。


『失敗だね〜、木の方に魔力が上手く伝わってなかったかな。魔道具でも無い物に魔力は通しづらいからね。というか離そ!火傷するよ!?』

「やっぱり中々上手くはいかないな…」


 燃える槍に水をかけて鎮火し、新たな木の槍へと手を伸ばした。

_______________________


 夕食後もショウは結合魔法の練習をし続けた。炎と結合させて失敗すると燃えて使い物にならなくなると言う事で、途中から鉄片でやる様になった。イブ曰く、気体より液体、液体より固体の方がやりやすいとのこと。種類と結合させる物の相性にもよるらしいので一概にそうとは言えないが。


「はぁ…はぁ……また失敗か」

『初めよりかは遥かにましだよ。極々稀に一瞬だけ成功している事もあったし。すぐ戻ったけど。ショウにしては大分順調な方だよね』

「それはそうだけど……先は長いなぁ」


 縁側に座り込んで横たわる。外は完全に闇に染まり、明かりのない森の中に入れば一寸先も見えはしない。


『でも…上手くいってないのには他にも理由があると思うなぁ』

「………」


 無言ではあったが、反応があった事をイブは見逃さなかった。


『心当たりがあるみたいだね?今日魔法を練習している間、普段と比べてあまり集中できてなかった。朝から割と集中力が散漫としてたけど……なんか夢でも見た?』


 横になって上を眺めてるショウの顔を覗き込むイブ。暫くすると、唐突にショウが起き上がる。


『わっ!!もう、急に起き上がったらぶつかっちゃうよ!』

「イブ、今から行きたい場所があるんだ」

『…?こんな夜中にどこに?』

______________________


 ロイドの家を抜け出し、夜の空を飛行する。昼間に襲ってきたモンスター達も今は大人しい。ロイドが言うには近づいてきたモンスター達を皆殺しにし続けながら住み着いた結果、桜の香りはこの辺りのモンスターにとっては恐怖の対象らしく、桜の香りを纏わせておけば襲われる事はあまり無いらしい。桜の木の近くまで行った時、周りからモンスター達がいなくなったのはそういう理由らしい。

 空を飛び続けて1時間もせずに目的の場所が見えてきた。


『方角的にそんな気もしてたけどさ…、行く必要ある?行ったって殺されるだけだよ!何するつもりか知らないけど今のショウ一人じゃここに入ってくの本当に自殺行為だって!!』


 目的地、安楽の森の前に降り立ったショウをイブがどうにか引き返すよう説得している。


「多分……大丈夫だ」


 星明かりだけが照らす薄暗い森からは以前と変わらず生物の気配は無く、静寂に満ちていた。だが、ショウが森へ近づいていくと森の様子が変わり出した。


「森が……」


 森がざわめき始め、地面から無数の茨が生える。茨は幾重にも重なり、楕円形の球体を成した。次第に茨は解けていき、中から幸福が姿を現す。


『不味いって!?ほんとにやばいから!!逃げなきゃ!!』

「落ち着けって。幸福から敵意は感じないだろ」

『元から幸福に敵意も悪意も無いでしょ!』

「まぁそうだけど……」


 幸福の周りは夜の暗闇の中にも関わらず、仄かに光を帯び、姿がはっきりと見えた。幸福は無表情でショウを見つめる。


「また……貴方は眠らないのね」

「幸福、お前に聞きたいことがある。お前に会って以来見るようになった夢、あの夢の中の女の子は髪や目の色は違ったが間違いなくお前だった。あの女の子は昔の幸福……その宿主だよな。なんであんな夢を俺に見せる?」

「……?私は知らない……」


 首を少し傾け、不思議そうに眺める幸福。


「でも……()()()まだ……幸福を諦めていないのね……」


 突如地面から茨が生え、尖った先端がショウへ向けて伸びていく。


「ぐおっ……!!」


 咄嗟に刀を前面に出し、受け流そうとしたが、勢いに押されて吹き飛ばされた。刀を出すのが間に合わなければ間違いなくあの世行きだっただろう。


「貴方こそ……もしかしたら………」


 幸福は振り返ると花弁となって消えてしまった。


「消えた……」

『だから言ったじゃん!危ないって!!幸福があのまま暴れてたら死んじゃってたかもだよ!?この!』

(地味に痛い……)


 怒るイブにチョップされ、森から少し離れた場所で説教が始まる。暫くして落ち着いてきたイブがショウに尋ねる。


『はぁ…まぁショウが危険に飛び込むのはいつもの事だから今更なんだけどね。それで、気になる事は解決出来た?』

「幸福は夢について知らないと言った。幸福はあんなだから嘘をつくとは思えないし、多分本当に知らないんだろう。もし、あの夢が幸福の宿主の女の子が見せているもので、彼女が助けを求めているなら……俺は彼女を助けたい」


 初めて幸福と遭遇した日、幸福から逃げる最中木々の隙間から微かに見えた顔には、一粒の雫が頬を濡らしていた。見間違いでなければ彼女は間違いなく泣いていた。思えばあの時から心の片隅で彼女の事を考えていたのかもしれない。


「今はまだその宿主に声が届きそうに無い。幸福とまともにやり合えなきゃ語り掛ける事すら難しい」

『ならとりあえず』

「ああ、強くなるしかないな」

『じゃあ帰ろっか!私達がいなくなってロイドが気にしてるだろうし』

「そうだな、帰って鍛錬再開だ!」


 安楽の森を背に、ショウは飛び去って行った。

(語り部)

「詠唱って格好いいって誰かが言っていたんだけれど、誰だったかな……多すぎて思い出せないや。結合魔法って使い方によってはかなり危険な魔法なんだけど、君ならどんな使い方をするのかな?」


結合魔法

2つ以上の物質を合成する魔法。合成を維持している間魔力を消費する。合成後の見た目は固体>液体>気体の順で優先される。

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