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STORY ~白銀の物語~  作者: 黒羽カウンター
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魔境

「おじさん、このりんご2つ貰えるかな?」

「あいよ!300エラーだ」


 鞄の中から袋を、袋から銀貨3枚を取り出して果実店の店主に手渡す。


「毎度あり!坊主、見かけねえ顔だが旅行者か?」

「ああ、さっきついたばかりなんだ。といってもすぐ旅立つんだけどね。それじゃあ、りんごありがとう。機会があったらまた」


 そう言って銀髪の少年は路地裏へと消えていった。


「なんか大人びた坊主だったな。あれ、今りんごが浮いて何かに食べられたように欠けたような……」


 もう一度見ようとした時には既に少年の姿は見えなくなっていた。


『りんごうま〜♪それで、ほんとにすぐ出発するの?』


 りんごを噛りながらイブが顔を覗き込む。


「ああ。目的地まであと少し、ただこれからどれだけかかるかは分からないからな。なるべく早く向かおうと思う」


 現在、ショウ達は狼王森林よりさらに東に位置するリンドールという都市にいる。何故こんな所にいるのかといえば、王都の酒場でロイドから出された条件によるものである。


「ロイドさんの家ですか」

「おう!ここから東に向かった所にある霊峰、その麓の何処かに俺の家がある。それを探し出して訪ねて来い。あぁ、食料とか酒も持ってきてくれると助かるな!」


 酒を呷るロイドは愉快そうに笑っていた。


「──って言ってたけど、あそこはBランク帯のモンスターの徘徊する危険地帯、Aランクモンスターもいる魔境だ。普通に入って無事につけるかどうか、運が悪ければ死んじまうな!」

『笑い事じゃないんだけどね』


 街から飛んでいくと眼前には広大な森。この中から住処を探す事がどれ程困難な事か。


「空から探せば割と直ぐ見つかるかな?」

『そう甘くはなさそうだけどね』


 上空からの飛来物によって地面に叩きつけられる。


「っ痛〜、そりゃそうだよな。この魔境、天も地もモンスターの支配域。簡単に行けたら拍子抜けだしな」


 頭上には双頭の大鷲が飛んでおり、地に落ちたショウを見下ろしている。更には辺りに殺気が充満していた。森に入って間もないにも関わらず周りには殺気立ったモンスターが集まりだしている。


「楽しませてくれるよ、ほんと。いい休暇になりそうだ!」

『どこが……?』


 イブの呆れ声を聞き流しながら刀を抜き、モンスターと対峙しながら森の奥へと進んでいく。

_______________________


「方角は合ってる筈……そろそろ見えてくると思うけど……」

『──!どうやら着いたみたいだね』


 前方から飛んできたのは桃色の花弁。空から見えた目印となる物から散った物。いつの間にか先程までいたモンスター達の気配は消えていた。


「綺麗だ……」


 鬱蒼とした森を抜けた先には何本もの桜の木々が並び、桜の花弁が舞い上がる。


「今は夏の筈なんだけど……お陰で分かりやすかったけど」

常桃樹じょうとうじゅっつー桜でな、条件さえ揃えば一年中花を咲かすって品種だ」


 声の主はここまで呼び出した張本人、ロイドだった。


「よく来たな!随分やられたみてーだけどよ」


 ショウの服には返り血と自身の血が大量についており、顔からは血の気が引いている。


「いや〜、流石に……きつかったですね……」


 傷は癒せても流した血は元には戻らない。血を流し過ぎたせいか、足元がふらついている。


「取り敢えず上がれよ。まずは風呂入れ。そしたら夜飯にしよう」


 ロイドが指差す先には屋敷が一軒、桜に囲まれるように建っていた。


「はい!それじゃあ……これからお世話になります」

「おう!」

_______________________


「美味い……!ロイドさん、料理できたんですね」


 ロイドの料理を意外そうに口にするショウ。


「たりめーだ、戦場じゃあ時間のある時は飯作ってたからな。戦場で何年も傭兵やってると戦い以外のスキルも少しは身につくもんだ」

『私の分はー?』

「お前、飯食べるのか?」

『食べる必要はないけど娯楽的な?』

「ならいらないだろ」

『ケチ〜』


 食事を終え、食器を片付けている所にロイドが現れる。


「今日は早めに休んで稽古は明日からやるぞ。まだ貧血気味だろうしな。片付け終わったら中案内してやる」


 食器を片付け終え、連れていかれた先は道場だった。


「うちには客間なんてねーからな、寝るのはこの道場を使え。俺の弟子はここで雑魚寝してた」

「ここで父さん達が……」


 道場は掃除が行き届いており、新築と疑う程である。


『自動洗浄に強化、自動修復の魔法までかかってるね。道理で年季の入った外見とは打って変わって綺麗な訳だ』

「修復魔法かけてなきゃ何回建て直さなきゃならねえかわからねーよ。ばかすか魔法撃つわ斬撃飛ばすわで壊れない日はなかったな……」


 ロイドは壮絶な日々を思い出し、懐かしむような、どこか遠い目をしていた。


『なんか知らないけど、中々充実した日々だったみたいだね』

「ははは……」

(父さん達の鍛錬の日々、少し見てみたかった気もする)


 苦笑するショウだったが、父とその仲間達の日々を想像すると、少し微笑ましく思った。

ツインヘッドイーグル

A⁻ランクモンスター

二つの頭部を持ち、独立した視野を持つ。魔法への高い耐性を持ち、高い機動力で空を飛び回る。

(語り部)

「修繕費より魔法付与の金額の方が安いんだろうね、きっと。どんなに微笑ましく思っても、毎日壊される道場はちっとも笑えないや」

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