夏季休暇の始まり
「姫様、次はこちらのドレスを!」
綺羅びやかなドレスを持った侍女達に囲まれ、着せ替え人形のように着替えさせられるコレット。その表情には疲労が浮かぶ。
「まだ着なきゃいけないの?どれも素敵だし、どれでもいい気がするんだけど」
「ファッションとは日々変わっていくもの、新作は確認しておきたいところです。なにより、コレット様はどれを着てもお似合いになるので楽しくてつい」
「「「ねー?」」」
最早侍女達が楽しむ為にやっているようなものである。完全に着せ替え人形と化したコレットは思わずため息が漏れるが、いつものことであり、最早慣れた。
「はぁ……夏季休暇なんて学院が休みな分、城でのやる事が増えるばかりで全然休みなんかじゃないわ。早く再開しないかしら」
城での勉強、利用出来ないものかと顔色を伺ってくる貴族、特に出たい訳でもないパーティ。城での生活の方が余程疲れる。
「学院生活、楽しめているようで何よりです」
「そうね、結構楽しめてるわ。あ、これ涼しい」
「あぁ!そちらは新進気鋭のデザイナーの作品ですね。生地に魔法がかかっており……」
ドレスの説明をする侍女の話を聞きながら外の景色を眺める。
(今頃ショウ達は何をしているのかな……)
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「はぁぁっ!」
「ケェェェェェッッッ!?」
首を斬り落とされた鳥型モンスターが地へと落ちていく。辺りには同じモンスターの死体がいくつも落ちていた。
「流石だな。一人でこの数を全部落とすなんて」
「ロウダス、そっちも終わったみたいだな」
ロウダスの後ろにはロウダスの創り出した数体の幻想のモンスターがオークの死体を運んできた。
夏季休暇が始まり、里帰りするロウダスと向かう方向が同じな為、一緒に向かう事になったが、出発した直後にこの状況である。
「街から出てすぐこれか。気楽に旅するのは難しいな」
「モンスターの群れに同時に当たる事なんて滅多に無いさ。まぁいい手土産になったと思おう、空間収納に入れて行けば全部持っていける」
「それもそうだな」
それからの道中はモンスターと出くわす事もなく順調に進み、森近くの街まで辿り着いた。街で魔石とモンスターの肉をいくつか売り捌いたが魔石を売った際、盗んだ物なのではと疑われた。小さな子供がCランクモンスターの魔石を大量に持ってくれば疑いもする。オーク達の死体を取り出して見せたら納得と同時に怖がられていたが。
「王都じゃ顔馴染みになってたから気にされなかったけど当然と言えば当然なんだろうな」
「俺達の歳ならDランクモンスターを倒せるかどうかだろうからな」
『というか、普通はモンスター狩って小遣い稼ぎなんて他の子供達はしないよ。家事手伝いとかするもんなんだよ』
「換金もしたし、とっとと行こう」
街を出た2人はロウダスの幻想モンスターにショウ所有の馬車を引かせながら走る。
「ロウダスがいてくれて助かったよ。思ってたより楽に来れた」
「それは良かった。──ずっと思ってたんだが、なんで馬車なんか持ってたんだ?」
「何か運ぶ時に便利だろ」
「魔法があるだろうに」
「人を運ぶ時には役立つんだ。今なんか正に。それよりついたな、狼王森林」
数ヶ月ぶりの狼王森林の目の前で馬車を止める。
「次会う時にはどうなってるんだろうな」
「俺にもわからないけど、今より強くなるのは間違いないな」
「だろうな。俺も精進しないといけない」
『少しは遊ぶ事とか考えれば〜?』
『どうしてショウ達はこんな脳筋になっちゃったんだろうなー?』
子供らしくない二人を見守る2柱の女神を無視し、ロウダスは手土産のオーク達を魔法で運びながら森へ入っていった。
「それじゃあ行くか」
『遠出なんて安楽の森以来だね』
「そうだな。あの時は行こうとして行った訳じゃないけど。折角の旅だ、どうせなら楽しんでいこう!」
ショウ達は空を舞いながら目的地へと向かっていった。
(語り部)
「夏季休暇が始まり、それぞれの新たな生活が始まる。因みにライガ達の出番は当分ないよ。彼らも王都できっと色々と頑張ってるよ、多分」




