創世神話
「あ、ショウ君だ!一人でいるの珍しい〜」
「本を読む姿も良い……、あそこだけ違う世界のよう……」
ショウが図書館で一人物静かに本を読んでいると、遠目から密かに視線を向けられる。近寄り難いのか、周りには誰もいない。
「何を読んでるのかな?」
「あまり見るのも失礼よ、視線はさり気なく、バレないように送るものよ。さ、行きましょ」
女生徒達はチラチラと視線を向けながら立ち去っていった。
『いやさり気なくないって。めっちゃ見てるじゃんむしろ言った本人の方が見てたよ。……で、実際何読んでるのさ?』
イブが覗き込むと一人の女神の挿絵が描かれている。
『これ私じゃない?』
『そうだな。イブの神話が書いてある』
ショウが読んでいたのは神話の記された本だった。
『そんなの読まなくても本人が目の前にいるのに!』
『話で聴くのと本で読むのじゃ伝わり方も楽しみ方も変わるだろ。それに偶々読んでいた所がイブのページだっただけで他の話の方が興味がある』
『本人の前で興味無しって言ったー!』
イブが騒ぐも、大して気に留める事なく読み進めていく。ふと、置いてある本の内の一冊を魔法で浮かし、ページを開く。
『そもそもイブの話以外は本でしか知れないんだ。この話とかイブは出てこないだろ』
開いたページに記されているのは創世神話、世界の始まりの神話だった。
遥か昔、何も存在しない空間に突如現れた一柱の女神。世界を始める為に生まれた彼女はその権能を使用して宇宙を生み出し、多くの世界が生まれた。彼女は混沌とする世界を管理する神々を創り出し、彼らにそれぞれの世界を管理させた。神々は、それぞれの好きなように世界を創り変え、その過程で多くの生物、そして人間が生まれた。
『皆小さい頃から知ってる話だけど久々に読んでみたくなってな。……どうした?そんなじっと見て。なんかおかしな所でもあったか?』
開いたページをじっと見つめるイブが気になり声をかける。
『……いや別に?私も久々に聞いた話だから気になっただけ』
『……そっか。まぁ大昔の話だし、多少事実と違う所もあるかもしれないし、自分の神話を読んでみるのも面白いんじゃないか?』
『伝言ゲームの終着点を確認するような気分になるね』
「ショウ、そろそろ帰るぞ」
話しかけてきたのはサークルに顔を出しに行っていたロウダスだった。ライガとレイは買い出しで先に帰っており、ロウダスが来るまでの時間潰しで本を読んでいた。
「思ったよりも時間が経つのは早いな」
『私の神話は面白い事がいっぱいだからだね!』
『そうかもな』
多くの神話の中でも神々に悪戯をして問題を起こす話の多いイブの話は子供達に人気が高い。神々からしたらはた迷惑な話ばかりだが。
『当事者達は激おこだったけどね〜』
「なんだ、オネイロス目が覚めたのか。おはよう」
黒い箱騒動の時以来ずっと眠っていたオネイロスだったが、いつの間にか目を覚ましていたらしい。
『おはよう〜、そしておやすみ〜』
再び寝てしまった。
「いつもの睡眠だ、もう問題ないだろう」
「どっちにしろ寝るんだな……」
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「もうすぐ夏季休暇だけどお前らは予定決めてるのか?」
夕食時、ライガがパンを片手に問いかけてくる。ショウ達の通う学院はもうじき夏季休暇に入る。この時期に実家に里帰りする者も多い。
「俺は父に会いに行く予定だ」
ロウダスはそれだけ言うと肉にかじりついた。
「僕も実家に戻るかな。父様達も寂しがってるようだしね」
「俺も顔出すか〜、家王都だからいつでもいけるけど。レイの家も王都だし、夏季休暇は3人でダンジョンにでも行くか!あぁでも折角長期休暇なら遠出もしてーよな!」
「その前に試験だな。試験に落ちると夏季休暇中に補習がある」
「普段の授業を受けていれば問題ない筈だけどね」
「こんだけやって落ちたら凹むぜ……」
最近勉強に付き合わされ続けていたショウからしたらおそらく問題ないだろうとは思っている物の、ライガとしては不安はあるらしい。
「というかロウダスも少しは心配しろよ!お前編入試験酷かっただろ!」
ロウダスの場合、実技で学院長が許可を出したのとロイドの推薦もあって問題なく入れたが、当初の成績はかなり悪かった。
「………肉のおかわりはあるか?」
「あるよ!?そして聞け!!話を!!」
そう言いながら皿を受け取り、キッチンに歩いていった。
(語り部)
「ショウ達が図書館で本を読んでいる所を読むと親近感が湧くね…。でも僕はずっとここにいるから夏季休暇には実感が湧かないんだ。毎日が休みみたいなものだからかな?」




