引力
走っていった2人を追って試合場に行くと、アニーがストレッチをして待っていた。
「ハンデとして私は普段使ってる装備は使わない、素手でやるよ。それと、魔力量は半分でいいかな?」
アニーが取り出したのはリング状の魔道具。それを自身の右腕につける。
「これはこの試合場の結界内でだけ魔力を抑える魔道具。設定した魔力量しか使えなくなるんだよ。あ、なんならこれを外させた時点で君の勝ちでもいいよ!」
「随分ハンデつけてくれんだな」
「それだけ自信があるんだろうね、勝つ自信が。実際、彼女は去年の魔道大会で前生徒会長を倒して優勝した名実ともに最強の学生だ。同じ学年でもこの前のエミール先輩とは訳が違う」
忠告とばかりに語るレイにショウが振り向く。
「ハンデつけてもらって、負けそうだからやめるなんて流石に出来ないだろ。それに、別に殺し合いじゃなし、相手は強い方がいいだろ」
アニーの方へと向き直したショウが魔剣を取り出す。
「今更やめないよね?今やめると私が凄く困っちゃうけど」
「負けても困る事に変わりないじゃないですか。勝てると思ってるんですか?」
「当たり前じゃない!もう既に君が生徒会役員のつもりでいるもの!」
「それは気が早すぎです…。それと俺が勝ったら、次は賭けも手加減も無しに試合して下さい」
「ほんと好きだね〜。オッケーいいよ!それじゃ、どっからでもかかってこーい!」
腰に手を当て、ばっちこーい!と笑うアニー。
「それじゃあ遠慮なく」
強烈な踏み込みで近づいたショウが振り上げた刀をアニーの右肩に振り下ろす。
「いきなり右腕を落としに来るなんてね。リングが外れた時点で私の負けだもんね」
ショウの刀は軌道上に入ってきた右腕に防がれた。腕を斬り落とすどころか刃を受けた腕には切り傷1つついていない。
「な…なんて硬い皮膚…!」
「私の肌は硬くないよ!ぷにぷにだよ!」
驚愕しているライガに抗議の声が飛ぶ。
「彼女の魔法かな?」
『いや、あれはただの魔力障壁で受けているだけのようだ』
「ただの魔力障壁?それはきつくねえか?ショウの魔剣はそこら辺の剣とは訳が違う。並の魔力障壁くらいは切り裂いちまう。ましてや会長は今魔力を半減させてる状態だろ?その状態でショウの剣を止められるもんなのか?それに見てみろ」
試合場では目にも止まらぬ速さで飛び交う刀を素手で弾き、風で速度の増したショウを変わらぬ速度で動くアニーが殴り飛ばしていた。
「あれだけ身体強化もしてんのにそれだけの魔力障壁を使おうとしたらすぐ魔力がきれちまうんじゃねーか?」
『それはなさそうじゃぞ』
「あ?なんでだよ」
『あの少女の現魔力量は48万8000、お主らとそう変わらんわい』
「おい、それって半分にしてそれって事か!?」
『そうじゃ。ショウの魔力量は53万1500 、まぁ大体半分で同等といったところじゃな』
「なら元の魔力量は97万6000、現役学生でそれは歴代でも指折りの魔力量だね……」
『お主らの魔力量の方がいかれとるがな』
「あのー……さっきから誰と話してるの?」
「あいつらは独り言が多いんだ、あまり気にしないでやってくれ」
神霊の見えないコレットから不審な目で見られ、ロウダスにスルーするよう促される。その間も試合は進んでいく。
(まただ、体が引き寄せられる…!)
宙に浮き、距離をとるショウだったが、唐突に謎の力によって体が試合場の中心にいるアニーの方へと引き寄せられていく。
「岩削!」
複数の岩の棘を作り出し、アニーめがけて高速で飛ばしていく。だが全ての岩を跡形も無く砕いていく。
「はぁっ!!」
上空から勢い良く降下してきたショウの剣を指の先で止める。
「君の攻撃は私に届かないよ。これじゃいつまで経っても勝てないよ!」
「それがアニー会長の魔法ですか」
先程から幾ら離れようと引っ張られる感覚、何も無い方へと飛ばした岩すらアニーに向かって飛んでいくのを確認した。
「周りの物質を引き寄せる能力」
「そう!それが私の魔法、引力!もう私からは逃げられないからね!」
(語り部)
「因みにライガの魔力が48万9300、レイが50万5000、ロウダスが46万7500、そして引き合いに出されたエミールの魔力は16万、大分魔力量に差があるんだ。エミールの量を基準にして半分にしたら上手くやりくりしてもショウの攻撃を受けきるのは中々難しいね。ライガはエミールより少し上くらいと思ってたら思ったより、というより自分より魔力量が多いと思ってなかったから結構ビビってたよ」




