勝負しようぜ!
「お前は確かライガ・グラスだったな。腕試しって……なんで俺なんだ?」
「そりゃあお前が1番強そうだからだ!魔力量はお前が1番多かったし、実技試験の時、お前本気じゃなかったろ。あんな人形壊そうと思えば壊せたんだろ。俺も壊したし」
「いやぁ……あの時はあれで本気だったぞ」
(全力ではなかったかもしれないけど)
「……まぁ手札を隠しているってことはわかってんだ。それにお前にもついてんだろ、こいつみたいなのが」
ライガの後ろから光が溢れ、そこには一人の老人が立っていた。
「ッ!ライガにも神霊がついているのか」
「神霊?」
「幽霊みたいな神だから神霊。他の人には見えないからな」
「なるほどな。まあこのジジイは確かにその神霊って奴だ」
『儂は天空を統べる神が1柱、ゼウス。流石に知っとるじゃろ?お主にイブがついているのは知っとるぞ。前に見た』
ゼウスは別の世界で天空を司る最高神。雷霆を振り下ろし、敵対する全てを屠り、地上の全てを見通すという。
(ゼウス!最高神の1柱じゃないか。ただ立っているだけで威圧されるような存在感、厳かな雰囲気、これが1つの神話を統べる神か)
『おじいちゃん久しぶりだねー。女の子追い回すのが趣味のおじいちゃんが男の子についてるなんて笑っちゃうね♪』
『いや本当にそこ凄い不満なんじゃが!?女に手を出そうとすると止めてくるし、マジで誰かチェンジして欲しいんじゃが!?つくなら美少女につきたかった……』
厳かな雰囲気はどこかへ消え失せ、そこにはただの女好きの老人が立っているだけだった。
「まぁこのジジイはどうでもいい。とにかく俺は1番強い奴と戦ってみてー訳だ。ということで、勝負しようぜ!」
「その話、聞き捨てならねえな!」
声の聞こえた方向を見てみると、アッシュが立っており、他にも周りには多くの生徒が集まっていた。
「1番強い奴と戦いたいなら、何故俺じゃなくそこの銀髪なんだ!魔力量は確かにそいつの方が上だったがそいつの魔法は風魔法、俺の方が実戦向きだろう。結果を見ても明らかだ!」
「そうだぞ!アッシュ様は最強なんだぞ!」
「1番ならアッシュさんだろう!」
「あんな人形壊すのに魔力使い切ってる奴に用はねえよ」
「なんだと!」
「何ならお前ともやってもいいけどよ、正直相手にならねえと思うぜ?」
「上等だ!ぶっ飛ばしてやるよ!!」
「というか試合場は先生の許可がいるんじゃないのか?入学初日でそんな事認められる訳が」
「いいですよ」
「無いって……学院長!いいんですか?」
いつの間にかその場に居合わせていた学院長によって許可は直ぐに出された。
「別に良いですよ。他の生徒ならまだ魔法を上手く扱えないこともあり得るので認められませんが、貴方達は実技でも優秀な成績を出している。問題ないでしょう。それに新入生の上位者の実力を見れば新入生も在学生も何か思う事があるかもしれませんし」
学院長は微笑み、
「そして何より、私が見たい」
もはや拒否権はないようだった。
「別に用事は無いですから構わないよ。もう断れる雰囲気でもないし、勝負は俺も好きだ」
「よし、早速行こうぜ~!」
「俺を置いていこうとするな貴様ら!!」
『こりゃ見物じゃのぅ。ライガは強いぞ』
『正直同年代でショウに勝てる子がいるとは思えないけどね~』
『まあお前さんが育てたとか結構不安じゃがな。おかしな育成してそうじゃもの』
『私はおかしなことしてないよ。ショウがおかしいだけ』
『おかしいことを否定されないとはのう』
ゼウスは苦笑しながら試合場へと向かった。
ライガの実力はいかほど何でしょうかね。