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STORY ~白銀の物語~  作者: 黒羽カウンター
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vsエミール3

(凄い……!力が漲ってくるぞ!今ならなんでも捻り潰せそうだ!!)


 エミールは今、全能感に浸っていた。今や鎧の全長は5mを越え、剣の長さも4m程はある。大剣を振り回して発生するエネルギーは凄まじい、ここが魔道具内で無ければ巻き起こる風で辺りが大惨事に成りかねない。


「はぁーはっはっはっはっはぁ!!!素晴らしい……今尚戦闘力は上がり続ける、このまま行けば僕は最強になれる!!」


 剣の勢いは増すばかり、掠りでもすれば間違いなく重傷を負う。


(なのに……)


 だが、ショウには掠りもしていない。白銀の鎧を解き、それどころか風の魔剣のみを残し、他の魔剣を仕舞い、風圧を自身の風と魔力障壁で耐えながら全ての剣撃を躱し続けた。


「何故貴様に当たらんのだ、ショウ・シュヴァルツゥゥゥ!!!」

「いくら力が増しても、力任せに振るだけの剣ならいくらでも躱しますよ」


 ショウが縦横無尽に宙を飛び回り、狙いが上手く定まらない。


「チィッ、ちょこまかと……!」

「先輩の剣の腕はいまいちのようですね、当分は当たらなそうです」

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!腹立たしい!!小蠅のように飛び回りやがってぇぇ……」


 躍起になって剣を振り回す。だがそこである情報が流れ込んでくる。


「何!?他の鍵が全部取られただと!?チィッ、他の連中め、存外役に立たんな。所詮どこぞの馬の骨だったか」

「言ったじゃないですか、負けないって。後は貴方の鍵だけですね」

「ふん、私が負けなければいいだけの話だ。そして今の私を倒す事など誰にもできん!」


 大剣の大振りを躱すと、鎧の巨大な足が迫り、ショウに直撃する。


「ぐぁ……!?」


 蹴り飛ばされて壁に激突し、その場にうずくまる。


「力に思わず高揚してしまったが冷静になればこんなものよ。このまま貴様を殺してもいいが……その前に王女様を殺してやろう!貴様の目の前で!貴様には何も守れないと嘲笑ってやろう!!そして絶望している貴様を八つ裂きにしてやる!!!」

「や…めろ……」


 部屋の隅にへたり込んでいるコレットへと歩み寄るエミール。コレットは恐怖で顔を歪ませる。


「腰でも抜かしたか?恐怖で声も出せないようですね王女殿下!貴方がここで死ぬのも、他の者達が死ぬのも、全てはあの平民が悪い。恨むなら、あの騎士気取りの剣士を恨んで下さい。……それでは、さらばです王女殿下!!」


 振り下ろされた大剣がコレットを両断する。だが、そこにコレットの遺体はない。


「何!?どうなってる、一体どこに!?」

「映清水、水で造った身代わりですよ。さっき鍵を取られた情報に気をとられてる間にすり替わったんですよ」

「貴様の仕業か!!」


 振り向くと、8つの魔剣がエミールに向けて円状に並び、ぐるぐると回転している。


「風穴を開けろ、円穿八景えんせんはっけい!!」


 高速で同時に撃ち出された8本の魔剣が螺旋の虹を描き、エミールの鎧に衝突する。


「グオオオオォォ…!この程度で、この鎧がぁ……」


 ビキビキッというひび割れる音が聞こえると同時に鎧に巨大な穴が空き、勢いに押されてエミールは壁に激突した。


「ぐぅ……だが、核を外したな!核さえ無事幾らでも再生出来る。チャンスを棒に振ったな!!」


 核が無事であった為に余裕を取り戻すエミールだったが、眼前にショウの姿が見えない。


「奴は一体どこへ……」

『ここですよ、先輩』


 声は鎧の中から聞こえてくる。


「まさか貴様、さっきの穴から中へ……!?」

『鎧着てないとこの鎧の魔力に汚染されそうになるなこれ。でもこれで終わりだ。聖浄せいじょう!」


 光の魔剣から放たれる光が鎧の内部を埋め尽くし、核となっていたエミールからデモニックメイルの力が取り除かれる。核としての機能が失われた為に、鎧は形を保てず崩れていった。


「コレットが言ってましたよ。攻撃を避け続ければ必ず気を取られるタイミングが来る。その時に身代わりと代わり、その後の蹴りを受ければ必ず隙を見せるって」


 エミールからの反応は無い。


「先輩、今後はあんなのに頼らない方がいいですよ」


 崩れた鎧を見ながらエミールに声をかけるとエミールが騒ぎ出す。


「うるさいっ!!貴様のような天才がいるのが悪いだろう!?僕のこれまでの努力を嘲笑うような才能が現れて、妬んでお前にハンデまでつけて勝負して、それでも勝てなくて!周りからは見下され、家でも毎日のように叱られた!貴様を叩きのめさねば気がおかしくなりそうだった!それでも正攻法で勝てない僕が別の力に頼って何が悪い!!」


 泣きながら駄々をこねる子供のように叫んでいた。


「先輩……」

「うるさい黙れ!貴様などこれで死んでしまえ!!」


 エミールが懐から出した物体を地面に叩きつけた。


「なっ……!!」

『これは……勝てない!ショウ、逃げて!!』


 叩き割った物体から姿を現したのは黒い巨体。巨大な翼と太く長い尾を持ち、剣も魔法も通さない鱗を全身に纏い、トップレベルの冒険者の鎧を容易く切り裂く牙と爪を持つ最上級モンスター、ドラゴンが目の前に現れた。


「は、はは、見ろ!これが僕の力だ!追い詰められたら使えと言われたがまさかドラゴンとは!よし、いけドラゴンよ!あの平民を食い殺せ!!」


 そう叫ぶエミールだったが、ドラゴンは口に火を含み、吐き出した。エミールに向けて。


「え?」


 直撃する寸前にエミールと炎の間に割り込んで防ぐショウ。


「お、おい何やってんだよ!?なんで…私を助けた!」

「先輩を見捨てる訳に行かないでしょう!!」

(でもどうする、これは流石に不味い……)


 遠くから見ていたコレットは絶望していた。


(あんなの知らない……私の見た未来にあんなのいなかった。あんな化け物、一体どうしたら……)


『流石にこれは見過ごせない。オリエンテーリングはここまでですね』


 そんな言葉が聞こえると同時に周りを覆っていた魔道具の壁が砕け、消滅した。

クルーエルドラゴン

Sランクモンスター

地面に叩きつけた物体から出てきたドラゴン。目についた生物を手当り次第に襲う。自身より強い敵でも構わず襲う。現状人間が手懐けられたことは無い。山羊のように丸まった角が特徴。

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